東急電鉄は、3月17日より「12カ月定期券」を発売するという。有効期間が12カ月の定期券で、東急線内だけの定期券しか発行されない。東急線内のみ、という欠点があるものの、長期の定期券が発売されることになった。一般に、定期券は1カ月、3カ月、6カ月といった、一定の期間に合わせて発売される。会社からの定期券代支給も、こういった月ごとに分かれている。では、どの期間の定期を買うべきか。

会社から支給される金額だけ

ふつうは、会社から支給される月の金額で、定期券を購入すればいい、という考えがあるだろう。これは、そのとおりである。とくに、1カ月ごとに定期券代が支給される会社の場合、3カ月や6カ月の定期を先走って買うのは、あまりにも負担が大きい。 逆に、3カ月や6カ月の定期代をまとめて払ってくれる会社の場合、その期間どおりの定期券を買うのがよい。1カ月ごとの定期だと、割高だからだ。

今回の東急の「12カ月定期」の場合、渋谷駅周辺や東急線沿線の会社が東急の制度変更に合わせて会社の交通費支給規定を変えるかどうかが焦点になる。とくに東急系列の会社などは、これに合わせて規定を変更してもおかしくはない。一般の会社員が会社の規定変更を待たずに東急に「協力」して12カ月定期を買う、ということは考えにくい。

割安なのは?

定期券を買う場合、一般には短期間の定期券よりも長期間の定期券のほうが割安になる。たとえば東急東横線で日吉の自宅から渋谷の会社まで通勤するとしよう。1カ月定期は8,130円、3カ月定期は23,180円、6カ月定期は43,910円である。なお、12カ月定期は87,810円。3カ月定期を月にならすと、7,727円(四捨五入、以下同じ)、6カ月では7,318円、12カ月では7,318円である。6カ月定期と12カ月定期は変わらないので、この場合は6カ月定期がお得でかつ期間が短いということになる。

東急電鉄は、定期券売り場の混雑緩和や、利便性の向上を目的として12カ月定期を導入したという。利用者がどこまで協力するかが注目される。

企業の側の論理は?

定期券代を支給する会社の側の論理を考えると、長期間の定期代を支給して交通費総額を下げるという論理もあれば、毎月ごとに支給して会社の現金の流れを月ごとに安定させるという論理もある。また、厳しい会社によっては、長期間の定期代を支払うと会社の負担が厳しいということもあるだろう。定期券代の支給の仕方によって、会社の考えも見えてくる。

また、短期間でやめる人が多い会社の場合には、長期間の定期代を支給すると払い戻しなどで面倒、いうこともある。実際に定期券を買うことになる働く人の側も、「はたして6カ月後私はこの会社にいるのだろうか」とも考えてしまうだろう。

長期間の定期券を買う場合の注意

1カ月の定期券を買う場合は、「払い戻し」のことは考えなくてよい。しかし、3カ月、6カ月の定期券を買う場合は、「払い戻し」のことを考えておかなくてはならない。こういった長期間の定期券代を支給する会社の場合には、退職したり転勤したりする場合、お金を会社に戻さなくてはいけないことも多いからだ。

「払い戻し」に関しては、やり方が各社ごとに違うため、駅で聞いたり、ホームページを見たりしよう。定期券代は、会社が支給するもの。しかも、会社の実情に合わせて支給される。そのとおりに買えばいい。しかし、払い戻しの規定などは、調べておくのもいいかもしれない。

著者プロフィール: 小林拓矢


1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道、時事社会その他についてウェブや雑誌・ムックに執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に共著者として参加。

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