横浜名物でありながら、いまでは東京、神奈川、埼玉、千葉、静岡と広範囲に展開する崎陽軒が弁当類の値上げを発表した。定番で根強いファンが多い「シウマイ弁当」は830円から860円になる。

  • 鉄道の旅のお楽しみ。あの定番駅弁が値上げ(画像はイメージ)

崎陽軒が8月17日に公式サイトで発表した資料によると、9月1日から16種類の弁当類が値上げになるという。値上げ幅は10~50円。最も値上げ幅が小さい商品は「いなり寿司」と神奈川地区限定販売の「ハマの朝ごはん弁当」で、「いなり寿司」は510円から520円へ、「ハマの朝ごはん弁当」は630円から640円へ、それぞれ10円の値上げとなる。値上げ幅の最も大きな商品は「松花堂弁当」で、1,200円から1,250円に変更となる。

値上げの理由は「原材料である干帆立貝柱、豚肉、米や包装資材等、諸経費の高騰」とのこと。価格改定の一覧表を見ると、ホタテ貝柱と豚肉で作られるシウマイを入れた商品や、箱の大きな商品の値上げ幅が大きい。きめの細かい改訂内容になっているようだ。

購入頻度の高いシウマイファンにとって、お財布に厳しい値上げだけど、良心的な施策といえるかもしれない。ちなみに、前回の値上げはちょうど2年前の2016年9月1日で、「シウマイ弁当」は800円から830円になった。このときは弁当だけではなく、シウマイ関連商品、レトルトカレー、焼豚、ギフトセットなども対象になっていた。

「シウマイ弁当」が値下げした年もあった

「シウマイ弁当」の近年の価格の推移を追ってみた。2007年に710円から740円へ、2008年には780円になった。2010年9月1日の価格改定では、なんと値上げではなく値下げ。30円下がって750円になった。しかも内容に変更なし。値下げの理由は「シウマイの主要原材料価格が安定傾向にある」とのこと。なんて良心的なんだ。やるじゃん崎陽軒。

しかし、2014年4月に消費税の改定を反映させて770円になり、同年8月に豚肉の高騰と電気ガス料金の高騰傾向を反映して800円になった。2016年9月に現在の830円へ値上げ。このときは値上げの理由に「筍」も含まれていた。そして今年9月から860円になる。良心的な崎陽軒に、もう一度だけ値下げを期待したいところだけど、燃料費は上がる一方、干帆立貝柱は中国の需要が膨らみ、奪い合いになりつつあるというから難しそうだ。

政府は2019年10月に消費税を8%から10%に上げる方針としている。崎陽軒は2014年に消費税が5%から8%になったときも価格改定を実施しており、おそらく来年も価格改定を実施するだろう。いま値上げしておかないと、来年は原材料費の転嫁と消費税の転嫁によって大きな価格改定になる。今年中にいったん値上げしたほうがインパクトは小さいと考えたのかもしれない。

  • 「シューマイ」ではなく、「焼売」でもなく、「シウマイ」なのです(画像はイメージ)

ところで、崎陽軒が「しゅうまい(焼売)」ではなく「シウマイ」と表記するようになった理由は、初代社長・野並茂吉が栃木県出身で、「シューマイ」を訛って「シウマイ」と発音したからといわれている。中国人から「シウマイのほうが本国の発音に近い」と言われ、「シウマイ」と表記するようになった。

崎陽軒の公式サイトによると、「シウマイ」の誕生は関東大震災の復興半ばの1928(昭和3)年だという。野並茂吉は名物のない横浜に名物を作ろうと考え、中華街を探し回ってシューマイに注目。このときのシューマイは冷めるとおいしくなかったため、弁当には不向きだった。そこで、点心職人の呉遇孫(ご・ぐうそん)を招聘し、豚肉と干帆立貝柱を混ぜて、冷めてもおいしい「シウマイ」を開発した。

いまはスーパーの惣菜売り場でも焼売に帆立エキスやオイスターソースが使われるけれど、そのルーツは崎陽軒の「シウマイ」だった。「シューマイ」は崎陽軒によって「シウマイ」という新しい料理になったともいえそうだ。

さて、「シウマイ弁当」は値上げといっても860円。駅弁といえば1,000円超えが当たり前になりつつある情勢で、900円以下とはありがたい。むしろ値上げのニュースでさえ食欲をそそる。シウマイの魅力、恐るべし。

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