健康を維持するには何を食べ、どんな運動をすれば良いのか。根拠の不確かな情報に翻弄されるよりも、健康長寿の人たちの生活習慣をマネするほうが賢明なはず。

本連載では、『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)から、イタリア南部の長寿村、ピオッピ村の人々の生活習慣にならい、毎日多忙な社会人でも効率良くヘルシーになれる方法を紹介する。

  • 断食は健康に良い?

ファスティングはいいことだらけ

過去3回の記事では、何を食べれば健康的にやせることができるのか、平均寿命が87歳というピオッピ村の人々の食生活をヒントに探ってきた。

魚や野菜、乳製品など、栄養豊富な食料が地元で手に入りやすいピオッピ村だが、いつでも好きなだけ食べられるというわけではない。著者によれば、ピオッピ村では食物が不足することもしばしばあり、村の人々は必然的に"ファスティング(断食)"せざるを得ないこともあるそうだ。

しかしながら、最近の研究によって、ときどき食事を抜いたり、制限時間内のみに食事を取ったりすることが、さまざまな健康効果をもたらすことが分かってきたのだ。

著者によると、ファスティングには主に以下のような効用が期待できるとのこと。

・引き締まった筋肉の量を増やし、脂肪の量を減らす
・脂肪肝の改善
・血圧を下げる
・脂肪燃焼をうながす
・インスリン感受性を高める
・炎症を抑える
・認知機能を高める

つまり"食べない時間"を作るだけで、ダイエットだけでなく、筋力アップや生活習慣病の予防・改善などの作用も期待できるのだ。

  • 『世界一長寿で幸せな村 イタリア ピオッピ式 最高の長生き術』(わかさ出版)

ファスティングで成長ホルモンが急増?

ではなぜ、食べないことが私たちの体にいい影響を与えるのか。著者によれば、ファスティングを行うと、HGH(ヒト成長ホルモン)の生成が急増するのだそう。HGHは拮抗ホルモンという重要なホルモンのひとつで、コルチゾールやアドレナリンなどもこれに含まれる。

ファスティングを臨床に取り入れているジェイソン・ファン博士が行った試験によれば、HGHを6カ月にわたって投与された年配者が、引き締まった筋肉の量を4キロ近く増やし、一方で体脂肪を2.4キロも減らしたとのこと。

またHGHには、ブドウ糖を増やす役割があり、物を食べているときには分泌が抑制される。つまり、物を食べ続けると自然なHGHの分泌を大幅に阻害することになるのだ。ファスティングを臨床に取り入れているジェイソン・ファン博士によれば、過食することで、HGH分泌は最大80%も抑制されることがあるそうだ。

このような近年の研究から、絶えず食べ続けることの健康への悪影響は、体重増だけにはとどまらないことが分かる。"何を食べるか"だけでなく、"いつ食べないか"を考えることも、効率よくヘルシーになるためには不可欠なのだ。

お勧めは週1回の24時間ファスティング

とはいえ、友人とのランチや仕事が終わった後のディナーが日々の楽しみ、という人も多いだろう。

著者がファスティングの手始めに勧めるのは、週に1回の24時間ファスティングだ。つまり、週に1回、夕飯を食べたら翌日の(朝食と昼食を抜いて)夕飯まで飲み物だけで過ごすという方法。ファスティング中は、コーヒーでもお茶でも、好きな飲み物を飲んでいい。

とても簡単な方法だし、著者いわく、体調がとても良くなってびっくりするかもしれないとのこと。ちなみに著者は、ファスティング中はココナッツクリームを入れたコーヒーを飲んでいるそうだ。


4回にわたって指南してきた「効率よくヘルシーになる方法」も、次回がいよいよ最終回。次回は、これまで触れてこなかった「運動」をテーマに、ピオッピ村の人々の日常の動きと最新のスポーツ科学を研究して分かった、アンチエイジングに最適な運動法を紹介したい。