複数の調査会社が公表した2022年第1四半期の世界スマートフォンの出荷台数シェアによると、アップルとサムスンが比較的堅調である一方、ここ最近急速な伸びを見せていたシャオミやオッポなどの中国メーカーが一転して苦戦しているようだ。一体なぜだろうか。

中国メーカーの不調はコロナ禍が影響か

スマートフォン出荷台数の世界シェアは、市場の成熟と国際情勢の変化によってここ最近大きく変動してきている。韓国サムスン電子と米アップルが上位に君臨するという構図は長らく変わっていないが、ここ数年で大きな変化を見せているのが中国メーカーである。

実際、一時はファーウェイ・テクノロジーズがシェアトップに上り詰めたものの、米中対立の影響を受けてスマートフォン事業が危機的状況に陥り、市場での存在感を急速に失っている。その一方でここ最近急速に伸びてきたのが新興のメーカーで、日本にも進出しているシャオミやオッポ、そしてビボ(vivo)などの企業が新興国を主体に低価格モデルで販売を伸ばし、急速にシェアを拡大して上位2社を脅かす存在となっていたのだ。

だがここ最近、調査会社が発表した2022年第1四半期のスマートフォン出荷台数シェアを見ると、その新興メーカーに変調の兆しが出てきたようにも感じる。実際、IDCやCanalysといった主要な調査会社の発表内容を見ると、サムスン電子とアップルのシェアは微増減しているものの比較的好調に推移している一方で、中国の新興メーカーのシェアは軒並み低下しており不調が鮮明になっているのだ。

  • オッポやシャオミの世界シェアが急低下、中国新興メーカーの今後を左右するのは

    IDCのプレスリリースより。スマートフォンの世界出荷台数上位5社の出荷量とシェアの推移。アップルが伸びておりサムスン電子は微減だが、シャオミやオッポなどは軒並み大きく落ち込んでいるのが分かる

そこにはロシアのウクライナ進行による不安定な政情と経済の混乱も影響している部分もあるだろうが、より大きいのはやはり中国のいくつかの地域で、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うロックダウンが発生していることだろう。中国市場は中国メーカーのシェアが高いだけに、ロックダウンなどによる混乱がスマートフォンの販売に影響すれば中国メーカーが最も影響を受けやすいからだ。

そしてもう1つ、そうした不安定な状況に半導体不足などが重なってスマートフォンのサプライチェーンにも混乱も出ていることの影響も小さくないだろう。半導体は単価の高い部材を購入する量が多いアップルなどの方が回復が早いとされているだけに、とりわけ低価格モデルが主体の中国メーカーには不利に働いている可能性が考えられる。

新興国にも迫るスマホの市場飽和

一連の混乱には政治も大きく影響しているだけに、いつまで続くか分からない部分も多分にある。ただ半導体不足などは正常化に向けた動きも進められており、混乱の一部は今後解消に向かっていくと考えられよう。

ただそうした混乱が回復した後、中国メーカーのスマートフォン出荷台数が回復して再び急成長するのかというと、必ずしもそうとは言い切れない部分がある。そこに影響してくるのがスマートフォンの市場飽和と進化の停滞だ。

ここ最近スマートフォンは新機種の新鮮さに乏しいと言われ、IT業界での存在感低下が叫ばれるようになってきた。実際、2022年に実施された携帯電話の総合見本市「MWC Barcelona 2022」では、ソニーやLGエレクトロニクスなどがブース出展せず、サムスン電子やファーウェイ・テクノロジーズもスマートフォン新機種を発表しないなど、スマートフォンの勢いが弱まっている印象を与えていた。

しかも現在普及が進められている5Gの性能はスマートフォンにとってオーバースペックであり、それを生かすことができるのはVRやARなどの新しいデバイスや、自動運転やIoTなど産業向け用途になるとも言われている。それゆえ特に先進国を主体として、スマートフォンの進化停滞による買い換えサイクルの長期化は確実に進行しているのだが、問題はそれが新興国にも広まった場合だ。

なぜなら中国の新興メーカーの多くは、先に触れた通りビジネスの主体が新興国で、新興国でスマートフォンの販売が伸びていることが躍進の契機となっている。それが中国を主体として、新興国でもスマートフォンの“飽き”を迎え買い換えサイクルが長期化するようであれば、中国新興メーカーの躍進に水を差すことになりかねない。

それゆえアップルやサムスン電子は低価格モデルだけでなく、高額ながらも高付加価値で高い利益を出せるハイエンドモデルにも力を入れているし、ファーウェイ・テクノロジーズも米国から規制を受ける以前は、先進国に向けたハイエンドモデルに力を入れて新興国に依存しない体制を整えようとしていた。それだけに市場飽和が見えつつある今後、中国の新興メーカーが現在のシェアを維持拡大していく上では、新興国向けのコストパフォーマンス重視の路線だけでは限界が出てくる可能性が高い。

  • ファーウェイ・テクノロジーズが「P」シリーズなどのフラッグシップモデルに力を入れていたのは、新興国に依存せず先進国でもシェアを獲得する狙いが大きかった

そうした将来を見越してか、オッポが自社独自の画像処理プロセッサ「MariSilicon X」を開発を発表、2022年2月にはそれを搭載した新しいフラッグシップモデル「Find X5」シリーズを打ち出すなど、中国の新興メーカーからも高付加価値のハイエンドモデルに力を入れる動きが見られるようになってきた。低価格だけでアップルやサムスン電子に対抗するのは難しいだけに、新興メーカーにも独自技術と安さによらない戦略が求められるようになってきたことは確かだだろう。

  • オッポはAI技術を活用した画像処理プロセッサ「MariSilicon X」を2021年12月に発表、それを搭載した「Find X5」シリーズは海外では2022年3月より販売されている