電通、CCI、凸版印刷は、eスポーツを用いたビジネス交流イベント「第2回 eSPORTS TRINITY」を1月20日に開催しました。イベント内容は、有識者によるeスポーツビジネスセミナーとeスポーツ企業対抗戦の2部構成。参加企業同士のビジネスマッチング促進やeスポーツを通じたコミュニティの形成が目的です。

eスポーツビジネスの事例を学ぶ

第1部では、「RAGE」の冠で多くのeスポーツイベントを運営しているCyberZの大友真吾氏と、eスポーツのチーム運営やeスポーツリーグのスポンサーを行っているサッポロビールの福吉敬氏が登壇。eスポーツの現在と未来を考えるビジネスセミナーを行いました。

  • CyberZ 取締役社長の大友真吾氏

  • サッポロビール マーケティング部 メディア総括グループ シニアメディアプランニングマネージャーの福吉敬氏

大友氏は、RAGEブランドで開催したeスポーツイベントの遍歴を紹介するとともに、ビジネスモデルについて丁寧に説明してくれました。RAGEでは、興行に必要なファンを増やすために、複合イベントやプロリーグを定期的に開催。それらを通じて、観戦文化の定着を目指していると話します。

また、今後はeスポーツ大会のプラットフォーム「PLAYHERA」の正式ローンチにより、誰でも手軽に大会を作成できようにして、より一層の競技プレイヤーの拡大を目指していくとのことでした。

  • CyberZ のビジネスモデル。メーカーからの支援金や、メディアからの放映権、スポンサーからのスポンサー料、ファンからの観戦料、グッズ購入代金などが主な収入です

  • CyberZ が運営するeスポーツブランドRAGEでは、3年半で18タイトルの大会やイベントを運営

  • eスポーツイベントをマネタイズするには、視聴者や来場者の多さが重要な指標

続いて登壇したのは、サッポロビールの福吉氏。スポンサーとしてのeスポーツへの取り組みを紹介しました。

サッポロビールはもともと、バスケットボールのプロリーグ「Bリーグ」の「レバンガ北海道」をスポンサードしていましたが、レバンガが『Shadowverse』のチーム「レバンガ☆SAPPORO」を発足させることになり、eスポーツ事業へ参入。ちょうどサッポロがeスポーツ事業の展開を考えていたタイミングでもあったため、即決したと話します。

チームへのスポンサーは、選手を経由して商品のエンゲージメントができているとのこと。たとえば、レバンガ☆SAPPOROのさわさき選手は、「さわさき会」と称するファンミーティングを実施する際に、サッポロ黒ラベルを飲みながら『Shadowverse』を楽しんでいるそうです。

プロリーグのスポンサーとして参加した「PUBG JAPAN SERIES(PJS)」では、コラボ企画などにより、PJSファンとの距離を縮めていました。マス広告とは違うエンゲージメントの高さがeスポーツへの協賛にはあるわけです。

最後に、「eスポーツが話題となり、注目度が高くなっていても、ファンが好きなものはゲームであり、eスポーツという事象ではない」と警鐘を鳴らします。ゲームへのリスペクトなしに、流行りに飛び込むことへの懸念と危険を説いていました。

  • テレビや新聞、雑誌などのマス広告は、1人あたりにかかる広告料の低さが魅力であるため、デジタルコミュニケーションに力を入れるとしても、やめることはないとのこと

  • サッポロビールはeスポーツへの参入だけでなく、ニコニコ超会議などのイベントやアニメ『ゴールデンカムイ』とのコラボ缶なども展開。アニメとビールのコラボは業界初

  • レバンガ☆SAPPOROでは、北海道出身、在住のさわさき選手と、お酒を酌み交わし、食事をしながらeスポーツの話やゲーム対戦ができるイベントを開催

  • PJSでは、試合を視聴した多くのファンが、サッポロビールをSNSに投稿してくれたそうです

  • eスポーツはゲームありき。ゲームそのものに興味が持てないとeスポーツでの成功を収めるのは難しい

企業のプライドをかけて? ストVでバトル!

さて、いよいよお待ちかねの第2部、企業対抗戦です。第2回ですが、参加希望企業が殺到したため、抽選のうえ8チームの出場を決定しました。さらに急遽、特別枠の参加があり、全9社で企業対抗戦をスタート。出場した企業は、朝日新聞、日立システムズ、ブックオフコーポレーション、PwCコンサルティング、トライゼット、ファングラー、CyberE、ビーウィズ、そして特別枠のアプリィです。

  • 所属企業を代表して出場する選手たち。なかには、ゲームセンターあらしのインベーダーキャップをかぶって参加する選手も

  • 実況のなない氏(左)と、ゲストの倉持由香さん(右)。なない氏は、『ストリートファイターVアーケードエディション』の公式大会でも実況を務めるeスポーツキャスター。倉持由香さんは、プロゲーマーふ~ど選手と2019年結婚し、自身もeスポーツチームG-STAR Gamingのプロデューサーを務めています

まず、企業対抗戦が始まる前に、倉持さんが会場から対戦相手を募集してエキシビジョンマッチを行うことになりました。せっかくなので、筆者も参加を希望。すると、みごとご指名いただき、ステージに上がらせてもらいました。

倉持さんはLP5500(オンラインランキングでのポイント数)のゴールド帯(オンラインランキングのランク帯のひとつ)で、使用キャラクターはレインボー・ミカ。筆者はLP7500のプラチナ帯で、使用キャラクターはザンギエフです。倉持さんの操るミカは手強かったですが、試合では、うまいこと噛み合い、勝利を収めることができました。

  • 開始前、倉持さんに「ストVはけっこうプレイしていますか?」と聞かれたので、とっさに「あ、そんなにやっていないです」と答えました。しかし、1R終了した時点で「これはやっている!」と倉持由香さんに指摘されます。まあ、やっているんですけど

エキシビジョンマッチのあとは、企業対抗トーナメントの開始です。初戦は朝日新聞と日立システムズ。どちらもLP0という、オンラインランキング未経験の初心者。しかし、初心者ながらVトリガー(一定条件で発動できるパワーアップ機能)やクリティカルアーツ(一定条件で使用できる大ダメージの必殺技)を繰り出すなど、見応えのある展開が続きます。

その後も、LP1000やLP20000など、初中級者から上級者まで実力差の大きい選手が出場しますが、試合は勝ち負け以上の楽しさがありました。決勝戦はバルログを使用するトライゼットの西川善司氏(ダイヤモンド帯)と、特別枠で出場したアプリィのエルシャール氏。エルシャール氏はLP65000のグランドマスターで、静岡県を代表する、ほぼプロといってもいいプレイヤーです。これまでの西川氏のプレイからしっかりと対策をたてており、危なげなく優勝を決めました。

  • 企業対抗戦ではおなじみの「試合前の名刺交換」

  • 第2部になっても、ほとんどの人が会場に残り、大会の行く末を見守っていました

  • 選手それぞれのモニターでプレイ。大会としてはいい環境です

  • 倉持由香さんがプロデューサーを務める「G-STAR Gaming」のメンバーが試合を盛り上げます

  • 優勝したエルシャール選手。ランク的にも負けられないプレッシャーのなか、みごと勝利しました

次回の「eSPORTS TRINITY」は5月開催予定。eスポーツ事業を始めてみたい企業、会社内でeスポーツ部を作ってみたい人は、ぜひ、参加してみてください。