挿絵

今回のテーマは「EV」だ。

いくら私でも今さらエヴァンゲリオンの話はしない、舐めるな。

「EV」とは電気自動車のことだ。もう大分前から、これからは電気自動車の時代と言っているような気がするが、一向に来ていない。漫画界に私の時代が来ないのと同様、「一生来ない」感が漂い始めている。

ただ私と違うのは、「何かの間違いで時代の方から来やしないか」と思っておらず、時代が来るように今も努力と進化を続けている、と言う点だ。

では、何故、今まで時代が来なかったのか。まず走行距離に問題があったようだ、1回の充電に対して走れる距離がそんなに長くない。よって、長距離移動するなら途中での充電が必要となるが、その充電をする施設自体が少ないのだ。

誰しも、1回ぐらいはガス欠寸前なのにガソスタが見つからないというピンチに遭遇したことがあるかもしれないが、EV車ではそのピンチが電車に乗った途端の便意ぐらい頻発する恐れがある、ということである。これでは怖くて遠出ができない。

だからEV車は、まず走行出来る距離を伸ばした。EV車の先駆者である日産は1回の充電で400km走れる新型リーフを発表した。400kmと言ったら、大体、大阪~東京間である。さすがにその間には充電スポットがあるだろう、という話だ。

だがそうは言っても、まだまだ充電スポットの数も少ないだろう。都会ならまだしも、我が県など2件ぐらいしかないに違いないと思って調べてみたら、なんと300件ぐらいあった。すくなくとも400km圏内には余裕である。知らない内に、電気自動車時代への道はかなり開拓されていたようだ。

そして、今気づいたのだが、例え県内に2件しか充電スポットがなかったとしても、充電できる場所があった。「自分んち」だ。我が家にはEV車充電コンセントがあった、灯台下暗しである。

家を建てるとき言われるがままにつけたが、当然一度も使っていないので忘れていた。このように充電設備つき住宅や、マンション、アパートなどもこれから増えてくるであろうから、充電問題はよほど毎日遠出するというのでなければ、解決に向かっていると言っていい。

私も車は通勤ぐらいにしか使わないし、会社までそんなに距離があるわけでもない。むしろ往復400km以上ある会社なら、さすがの私も辞めている。よって毎日自宅で充電すれば、スタンドに行くことさえなくなる、ということである。

もう次の車は電気自動車で良いのではないか。

そう思えてくるが、当たり前だが車本体の価格、という問題がある。調べて見たところ、日産リーフは一番グレードが低くても300万円はするようだ。

燃料代がガソリン車に比べてかからないことが売りのEVではあるが、本体価格を考えると、100万円の軽を買うより本当に得なのかは微妙なところである。

ほかにも、今までEVの時代がこなかった理由として、電池寿命や劣化の問題もあったようだ。つまり長持ちする車、というわけではないということだろう。

私のように車にこだわりがない人間はまず、経済的か否かで車を見るし、特に私は目先の数字しか見ないので、明らかにこちらの方が経済的というぐらいの差がなければ、やはり100万円の軽を買ってしまうのである。

他にEVの長所と言えば、ガソリンを使わないから「地球に優しい」という点だ。しかし、これは相当心に余裕がある人以外は、このテーマで車を買わないと思う。

トイレットペーパーぐらいなら、地球に優しいやつを買って悦に入るぐらいのことはするかもしれないが、それもかなり気分が良い時だろう。そうでなければ「世界が俺に優しくないのに地球に優しくしてる場合か」と、むしろ地球に厳しい便所紙を探してしまう。

数百円の買い物ですらこうなのだから、車となれば「(まず自分の財布)に優しい」のが第一で「ついでに地球に優しいならなおよし」ぐらいのものだろう。

どれだけ地球に優しかろうが、人に厳しい車の時代はさすがに来ないだろう。だがそれを見越してか、「地球に優しくするとお前らにも優しくするよ」ということで、EVを買うと補助金が出て、車の価格が若干安くなるようだ。

まず、自分が優しくされてないと、他人に優しくするのは無理。車を買うときもそれは同じである。

<作者プロフィール>

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カレー沢薫
漫画家・コラムニスト。1982年生まれ。会社員として働きながら二足のわらじで執筆活動を行う。デビュー作「クレムリン」(2009年)以降、「国家の猫ムラヤマ」、「バイトのコーメイくん」、「アンモラル・カスタマイズZ」(いずれも2012年)、「ニコニコはんしょくアクマ」(2013年)、「やわらかい。課長起田総司」(2015年)、「ねこもくわない」(2016年)。コラム集「負ける技術」(2014年、文庫版2015年)、Web連載漫画「ヤリへん」(2015年~)、コラム集、「ブス図鑑」(2016年)、「やらない理由」(2017年)など切れ味鋭い作品を次々と生み出す。本連載を文庫化した「もっと負ける技術 カレー沢薫の日常と退廃」は、講談社文庫より絶賛発売中。

「兼業まんがクリエイター・カレー沢薫の日常と退廃」、次回は2018年2月27日(火)掲載予定です。