「正しく伝わるだろうか」と、メールに対して、多くの方が同じ悩みを抱えています。

相手が読みやすいようにレイアウトを整えたり、記号(●■◎など)や罫線を使って重要な箇所を目立たせたりと、さまざまな工夫をされている方もいらっしゃることでしょう。

そんな中、工夫の一環として文字に色を付けたり、書体やサイズを変えるなど、装飾を施しているメールも目にすることがあります。この装飾の機能、なんとなく使っている方もいるようですが、思わぬトラブルを引き起こす可能性があるので注意が必要です。

「テキスト形式」と「HTML形式」の特徴

メールには「テキスト形式」と「HTML形式」、二つの形式があります。自身がどちらの形式を使用しているか把握していますか。分からない、特に意識をしていないという方も意外と多いようです。セキュリティや、その他の観点から形式を選択している方もいますが、ここではコミュニケーションに影響を及ぼす観点から、二つの違いを確認しておきましょう。

「テキスト形式」は、その名の通り文字だけで構成されたメールです。文字に色を付ける、書体やサイズを変えるといった装飾もできません。一方「HTML形式」は、こうした文字の装飾が可能。画像や動画を埋め込むことができるのも特徴です。自由なレイアウトができるので、デザイン性の高いメールを書くことができます。自身のメールが文字に色を付けられる、書体やサイズを変えられるということであれば、それは「HTML形式」です。

自身の形式は容易に確認ができます。それではメールを送る相手の形式はいかがでしょう。社内の方を除けば、相手の形式まで正しく把握できているケースは少ないのではないでしょうか。ここにトラブルの種が潜んでいるのです。

色では用件が正しく伝わらない!?

「HTML形式」の機能を用いて文字に色を付けてメールを送ったとしても、相手が「テキスト形式」であれば、文字はすべて黒で表示されてしまいます。例えば「A」「B」二つの商品の特徴を説明する際、「赤文字が商品Aの特徴、青文字が商品Bの特徴です」と書いても、相手が「テキスト形式」であればすべて黒文字で表示されるため、まったく伝わらないメールになってしまうのです。

一般社団法人日本ビジネスメール協会が2021年6月に発表した「ビジネスメール実態調査2021」の結果では、64.48%の人が「テキスト形式」を利用していることが分かりました。つまり伝えたい内容を色で表現したとしても、6割を超える人にはその意図が伝わらない可能性があるということなのです。

色によって心理的な誤解も

問題は機能面だけではなく、情緒的な側面にもあります。何らかの対応を求める業務連絡や仕事の依頼をする際、その期限を赤文字で記したメールを目にすることがあります。送信者としては、文字に色を付けることによって分かりやすくしようと考えただけかもしれません。ところが受信者にとっては、それを強い要請だと感じることもあります。

届いたメールに対する感じ方は人それぞれです。「なぜ、こんなに強く言われなければならないのだろう」と不快感を覚えたり、「期限を守らないと思われているのだろうか」と不安や不信感を抱いたりする可能性も考えられます。色で伝えようとすることで、心理的にも誤解を生む可能性があるのです。

メールに華やかさは不要

見た目の印象が悪影響をもたらすこともあります。例えば、社内で手渡された伝言メモがカラフルに彩られていたらいかがでしょう。多くの方が「軽い」という印象を抱くのではないでしょうか。メールでも同様の感覚を持たれることは十分に考えられます。

過度な装飾は「広告メール」と見誤られてしまうリスクもあります。「HTML形式」はデザイン性の高さから、販促を中心としたプロモーションに広く活用されています。画像や動画も入れられることから、届けた情報を相手にイメージしてもらいやすいのです。

一方、「受信したメールを開いたが、広告のようなので読まずに閉じてしまった」こうした経験はありませんか。人はメールを開封しても、自分にとって必要のないメールだと判断すれば、優先順位を下げたり、読まずに削除したりすることがあります。

その判断は、メールを開いてからわずか数秒のうち。パッと見たときの印象だけで不要なメールと判断されるのであれば、正しく伝えるどころではありません。

仕事上、相手との個別のやり取りであれば「テキスト形式」がおすすめ。華やかな装飾は不要です。装飾を施したメールは、手紙に例えるならばサインペンや蛍光ペンを駆使したようなもの。安易な装飾によって相手との信頼関係にひびが入ったり、コミュニケーションが遮断されたりすることのないよう、節度あるメールを心がけましょう。