持続可能な開発を目標に、国連で採択されたのがSDGsです。近年、SDGsをテーマとした社会性と経済性を追求する、SDGsビジネスが多く展開され、大きな注目を集めています。

今回はSDGsビジネスの概要、取り組むメリット、具体的な事例について解説します。SDGsは大企業だけでなく中小企業にも徐々に影響を及ぼしており、多くの人が自分事として考える必要があります。

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ビジネスでSDGsが注目される背景や理由

SDGsは国連で採択された、持続可能な開発目標のことで、17のゴールと169のターゲットがあります。環境、貧困、ジェンダーなど、幅広い分野にまたがっています。

近年マスコミでの報道も多く、多くの方は聞いたことのある言葉でしょう。このSDGsがビジネスでも注目されており、その背景は主に下記の2つです。

・ESG投資が盛んになりつつある
・企業評価にSDGsの観点も加えられている

ESGとは環境・社会・ガバナンスのことで、これらの分野に積極的に取り組む企業に投資をするがESG投資です。欧米を中心に広まっている投資で、日本でも徐々に増えつつあります。

よって企業への投資を検討する判断材料として、ESGやSDGsに取り組んでいるかも重要になってきているのです。SDGsなんて一部の大企業だけと思う方もいるかもしれませんが、影響はそれ以外の企業にも及んでいます。

たとえばアップルは2030年までにカーボンニュートラルを実現すると発表しましたが、その中にはサプライチェーンも含まれています。 つまりサプライヤーがアップルと取引を続けるには、カーボンニュートラルに取り組まなくてはならないということです。

SDGsの市場規模

デロイトトーマツの試算によると、SDGsの主な領域の市場規模(2017年)は下記のとおりです。

・貧困をなくす:183兆円
・質の高い教育:71兆円
・ジェンダー平等の実現:237兆円
・クリーンエネルギーの推進;803兆円
・住み続けられるまちづくり(防災・環境インフラ等):338兆円
・気候変動対策:334兆円
・海洋資源の保護:119兆円

小さいものでも数十兆円、大きいものだと数百兆円にもなる巨大な市場です。企業にとってSDGsビジネスを始める大きなメリットと言えます。

企業経営にSDGsを導入するメリット

SDSsビジネスに取り組むメリットとして、主に下記の4点が挙げられます。

1.ビジネスチャンスの創出

前述のとおり、SDGsビジネスには大きな市場規模があると推定されています。新たなビジネスを創出することで、企業の成長にもつながるチャンスがあるのです。

ただ単に環境にやさしい、平和への貢献といっただけでなく、企業の売上や利益にもプラスになるのがSDGsビジネスです。

2.企業イメージの良化

SDGsで定められた目標はグローバルレベルで、社会全体で解決すべき課題です。それに真摯に取り組むことで、「社会貢献に積極的な企業」「人や地球に配慮するやさしい企業」と評価され、人々の抱く企業イメージが向上します。

企業イメージは「企業ブランド」の一部を形成するものでもあり、消費者からの信頼にもつながる大事なマーケティング要素です。SDGsビジネスで企業イメージを向上させると、顧客ロイヤルティを高め、売上や利益にもつながります。

3.コストの削減

環境への負荷を減らすため、商品を生み出すための資源やエネルギーの節約・省略をすることにより、同時にコスト削減にもつながります。

日本のSDGsビジネスの実例

ここから、日本企業によるSDGsビジネスの取り組み事例をいくつか見ていきましょう。

ユニクロの「RE.UNIQLO」プロジェクト

「RE.UNIQLO」プロジェクトとは、ユニクロの全商品を対象に、リサイクル・リユースを推進する取り組みです。ユニクロ店内に回収ボックスがあり、来店客はその中に使用済みのユニクロ製品を入れることができます。

回収した衣料の中でそのまま引き続き使えるものは、リユース品として服を必要とする世界中の人に届けられます。具体的には難民キャンプや災害の被災地です。

破損などが大きくリユースできない服は、燃料や防音素材に加工してリサイクルをします。また服から服へのリサイクルも進めています。

2021年10月15日から11月30日まで、「RE.UNIQLO」をさらに推進するための特別キャンペーンも開催。ヒートテックのインナーやダウンウェアなどを店頭に持ち込むと、ユニクロでのショッピングに使えるデジタルクーポンが配布されました。

冬に備えてヒートテックなどを新調しようかと検討している人をターゲットとしており、SDGsの推進に加えて、買い替えを促すマーケティング効果も狙ったものです。

味の素ファンデーションの「KOKO Plus」

味の素が設立した一般財団法人で、食事による栄養改善への社会貢献を目指しています。2017年には公益財団法人として認定されました。

味の素ファンデーションの事業内容は主に4つあり、その1つが低所得国における栄養改善事業です。アフリカのガーナでは「KOKOプラス」という、栄養面を強化した離乳食の普及に取り組んでいます。

ガーナは2歳の子供の低身長が目立ち、伝統食の「KOKO」が原因ではないかと考えられていました。KOKOはコーンの粉と砂糖で作られるおかゆのような料理ですが、栄養素が炭水化物に偏り、タンパク質や鉄・亜鉛などが不足しているのが問題でした。

そこで大豆たんぱくやミネラルを強化した栄養補助食品として「KOKO Plus」を開発しました。KOKOにふりかけるだけで、美味しく栄養を補強できる食品です。

現地の人にいかに継続的に食べてもらえるかを課題とし、官民の連携で現在もプロジェクトが進行しています。

SDGsビジネスを成功に導くためのポイント

SDGsビジネスの成功要因として、下記の3つが挙げられます。

1.長期的な戦略・方針

SDGsの課題や目標は、短期で解決・達成できないものがほとんどです。よって通常の中期経営計画などよりも、もっと長期的なプランを策定する必要があります。

10年単位を基本として、長期的に取り組む姿勢が求められます。

2.柔軟なマーケティング施策

開発途上国は、先進国とは事情が大きく異なります。食・衛生・治安・気候など、さまざまな点で違いがあるため、先進国の常識でマーケティング施策を考えても通用しないことがあります。

当然、国民性にも違いがありますので、ターゲッティングなどの際には、現地の人々の生活習慣や価値観、宗教なども考慮しないとうまくいきません。

実際にスタートしてからわかることも多いので、事前に立てたマーケティングプランに固執するのではなく、施策はその都度柔軟に変更することが必要です。

3.継続的な収益の確保

SDGsビジネスは長期的な取り組みとなるので、継続的な収益モデルの構築も重要になってきます。立ち上げ期には別の事業の利益を充てることができますが、いつまでもその構造を継続させるわけにはいきません。

成長期になると、SDGs事業自体で収益を確保しながら、さらに事業を拡大する必要があります。また安定的な資金を確保するためには、クラウドファンディングなどを活用するのも1つの手です。


SDGsビジネスを持続可能なビジネスモデルへと成功させるには、長期的に社会的課題解決に取り組むとともに利潤を追求することが大切なのです。