「折衷案」はビジネスシーンで使われる機会の多い言葉ですが、聞いただけでは意味がピンとこない、あるいは実際にどのような案を用意すればいいのかわからない、という方もいるでしょう。

この記事では折衷案の基本的な意味や類語、ビジネスシーンでの活用方法についてもまとめました。ぜひ参考にしてみてください。

  • 折衷案の基本的な意味

    折衷案とはどういう意味?

折衷案とは

折衷案の意味や読み方、対義語などの基本的な情報をまとめました。

折衷案の読み方

折衷案は「せっちゅうあん」と読みます。

「せつ」と読む「折」の字は、「斧で木を切る=折」となった漢字です。「衷」は「ちゅう」と読み、「衣」と「中」が合わさって「はだぎ」の意、転じて「うち」の意味になり、「真ん中、偏らない」という意味を持ちます。「案」は「あん」と読み、「木」と「安」からなる「つくえ」の意味、そこから「考える」という意味が生まれました。

折衷案の意味

折衷案の意味は「それぞれのいい意見をまとめた案」です。この折衷は「和洋折衷」の折衷と同じ意味です。「折れる」を意味する「折」と「真ん中・偏らない」を意味する「衷」で「真ん中で折る=どちらにも偏らない」を意味します。

そこに「案」を加え、「どちらにも偏らない案=それぞれのいい意見をまとめた案」という意味で使われています。

  • 折衷案の基本的な意味

    折衷案は意見のいいところをまとめた案です

折衷案の例文

折衷案の意味を理解できたところで、実際に会話の中でどのように使うのか、例文を見ながら覚えていきましょう。

  • 一向に話がまとまらないので折衷案を出す

意見が対立して話が進まないときなどに、その場を収めるためだけでも双方が納得できる案を提案しようとしていることがわかる一文です。

意見が対立している様子を見ている第三者が折衷案を思い付き、「このままでは話がまとまらないので折衷案を出します」と宣言すると、その場をうまく収めることができるかもしれません。

  • これは折衷案とは言えない

互いのいいところをあわせた案が折衷案のはずですが、「折衷案とは言えない」ということはどちらかの案に偏った案が生まれてしまったのかもしれません。意見が対立している場を折衷案で収めるには、客観的な視点が重要になるでしょう。

  • 互いの意見を取り入れた折衷案づくりに奔走する

互いのいいところをまとめ、かつ納得できる内容の折衷案を考えるのは、意見が対立しているときほど厳しくなるでしょう。意見が対立する状況を折衷案で何とか収めようとする様子がうかがえます。

  • 法案の修正協議は与野党の折衷案で決着がついた

折衷案はビジネスの現場ではもちろん、政治の世界でも大いに使われます。基本的に与野党は対立する立場にあるため、議会ではこれまでも多くの折衷案が提示され、可決されています。

  • 折衷案の例文

    折衷案で意見が対立する現場をまとめましょう

折衷案の特徴

折衷案は、あくまでも「それぞれのいい意見をまとめた案」「どちらにも偏らない案」です。決して最善の案ではありませんが、特定のシチュエーションにおいて非常に有用なプランとなりえます。

折衷案の利点は玉虫色

折衷案は前提として複数の意見や案があったとき、すべてのいいところだけを取って新しく生み出される案です。このようないいとこ取りのプランが最善策となるケースは稀ですが、すべてのいいとこ取りである以上、全員の当事者が「この案には自分の●●という意見が採用されている」と感じることができます。

このような玉虫色の様相を呈している折衷案を採用すれば、当事者は完全に満足できなくとも、他者との対立リスクが低減できる可能性が高くなるでしょう。

折衷案は落としどころとして活躍

折衷案は複数の意見や案が出て、なかなか考えがまとまらないときに活躍します。複数の候補の中からいい点をうまく組み合わせていくことで落としどころを決め、多少強引にでもその場を収められる力を持っているからです。

ただし、その場しのぎの案になる可能性もあり、必ずしも理想的な解決策になるとは言いきれません。折衷案を出してその場は収まったとしても、後日問題がぶり返すリスクもあることは考慮しておきましょう。

  • 折衷案は「もっともいい案」ではない

    折衷案は、その場を収めることはできても、問題の解決に至らない場合も

折衷案の類語

折衷案と同じ意味を持つ類語を紹介します。折衷案という言葉を思い出せなかったときや使い方に自信がない場合は、類語で言い換えてみるといいでしょう。

妥協案

妥協案とは「利益が相反する者が互いに一部の主張を取り下げ、納得できる一致点を見いだせる案」を意味します。

「当事者のいい部分をすべてひっくるめた」折衷案は、いろいろと要素をプラスしていくのに対し、「一部の主張を取り下げる」妥協案は少しずつ要素をマイナスさせてそぎ落としていくというイメージを持つとわかりやすいかもしれません。

譲歩案

譲歩案とは「一部の主張を片側が取り下げて合意する案」という意味で使われます。妥協案とよく似ていますが、妥協案は対立している当事者の双方が意見を一部取り下げるのに対し、譲歩案はどちらか一方が取り下げるという違いがあります。

代替案

代替案は「別のものに変える」意味を持つ「代替」の案であり、もともとあった案とは別の案となります。複数の案からつくる折衷案や妥協案とは異なり、すでに決まっている案とは全く異なる案となるので注意しましょう。

  • 折衷案の類語

    互いが何とか納得できる点を見つけるのが折衷案です

折衷案の英語表現

折衷案を英語で表現するときは「compromise」あるいは「compromise plan」と表現します。「compromise」は「折衷」の意味で、単独でも「plan」を加えても折衷案の意味になります。

また、「どっちつかずの立場」という意味で「the middle ground」と表現することもあります。とっさに「compromise」が出てこなかったときは「the middle ground」のほうが、意味はわかりやすくていいかもしれません。

  • 折衷案は英語で「compromise」

    どっちつかずの「the middle ground」は折衷案と同じ意味

折衷案の意味は「互いのいいところをまとめた案」

折衷案の意味や使い方についてまとめました。折衷案はビジネスシーンで意見が対立してしまった場合に仕事を円滑に進めていくうえで非常に重要な手法といえます。

意見が対立して収拾がつかなくなったときは、互いの意見のいいところをまとめて折衷案を提案するようにしてみてください。