東京大学、九州大学、NTTの3者からなる共同研究グループは11月24日、量子コンピュータでも解読できない新たなデジタル署名技術を開発し、既存の方式と比較して約3分の1まで公開鍵のデータサイズを削減することに成功したと発表した。

量子コンピュータはさまざまな分野での実用化が期待されており、あらゆる企業が研究開発にしのぎを削っている。その一方で、大規模な量子コンピュータが実現した場合、その計算能力の高さから現在利用されている主要な暗号技術が解読され、安全性が損なわれる可能性がある。

そのため、将来的に量子コンピュータが大規模化した時代でも安全に利用できる暗号技術として、多変数多項式問題の難しさを安全性の根拠とした「Rainbow署名」が注目されている。Rainbow署名はデータの不正な書き換えを検出できるデジタル署名技術だが、検証の際に使用する公開鍵のデータサイズが大きくなることが問題となっている。

そして今回、3者が共同開発したデジタル署名技術「QR-UOV署名」は、Rainbow署名と同様に多変数多項式問題の難しさを安全性の根拠としており、かつ、公開鍵および署名のデータサイズが小さいという特徴を持っている。これにより、量子コンピュータの時代においても安全かつ効率的な暗号技術として、個人認証やデータ保護などへの利活用が可能になるとしている。

  • 提案方式の剰余環による公開鍵データサイズの削減

Rainbow署名と比較したところ、公開鍵のデータサイズを約66%削減することに成功したという。具体的には、Rainbow署名では252.3キロバイトであった公開鍵のデータサイズを、QR-UOV署名では約3分の1となる85.8キロバイトまで削減することに成功したとのことだ。

  • 提案方式と既存方式の公開鍵データサイズの比較

NIST(米国標準技術研究所)は量子コンピュータに対して安全な暗号方式の標準化プロジェクトを進めており、デジタル署名技術に関しては2022年に再公募を行う計画を発表している。今後、同研究グループはQR-UOV署名を、NISTの暗号標準化プロジェクトに応募し標準規格への採択を目指す。