東京メトロは今年、有楽町線・副都心線に17000系、半蔵門線に18000系と、相次いで新型車両を投入した。ラインカラーや前面ライト等の違いがあるものの、基本的に両者とも似通った外観・内装で、まさしく「兄弟車」ともいえる形式だろう。両方の形式に乗車できたので、走行の様子なども含め、紹介したい。

  • 東京メトロ有楽町線・副都心線の新型車両17000系。副都心線から東急東横線・みなとみらい線などへ乗り入れ、「Fライナー」として運転されることも

■横浜市内から17000系「Fライナー」に乗車

まずは有楽町線・副都心線の新型車両17000系。筆者は2月21日のデビュー当日、新木場駅で17000系の運行開始を取材したが、実際に乗車する機会は今回が初となる。17000系は東京メトロ副都心線から東急東横線・みなとみらい線にも乗り入れるため、筆者の地元である横浜市内から、元町・中華街駅始発の「Fライナー」特急(飯能行)に乗車した。

東京メトロ有楽町線・副都心線の新型車両17000系は、既存の7000系・10000系から続く特徴を受け継ぎ、車体前面のライトが丸目の形状となる一方で、顔立ちが既存車両と比べて大きく変わっている。車体側面の窓下と上部にブラウンとゴールドのラインカラーをあしらい、フリースペースに近いドアの横では、側面上部のゴールドの帯にピクトグラムを掲示することでわかりやすさにも貢献。フリースペースは全号車に配置されている。

  • 有楽町線・副都心線の新型車両17000系の車内(2020年8月の報道公開にて、編集部撮影)

内装に関しても、腰掛や床面、ドア部分がモノトーンの色調となり、既存車両にはなかった雰囲気を演出している。吊り革にはブラウン、背もたれにはゴールドの水玉模様(優先席はブルーの水玉模様)をあしらい、モノトーンの空間の中で有楽町線・副都心線のラインカラーが良いアクセントに。貫通扉と袖仕切りに強化ガラスを用いることで、車内の開放感も向上している。

床面の高さは既存車両よりやや下げられ、7000系の床面高さ1,200mmに対し、17000系は1,140mmとなった。乗降しやすさを考慮し、ドア下部にホームへ向かって10度の傾斜を付け、ホームと電車の段差を軽減。フリースペース付近のドアは車いす・ベビーカー利用者らが乗降しやすいように、ドアレールに切欠き加工を施した。

  • 横浜市内の東横線を走り、踏切を通過する17000系

さて、元町・中華街駅を発車した17000系の「Fライナー」特急は、全線地下区間のみなとみらい線を走行し、横浜駅から東急東横線へ。東白楽駅の手前でトンネルを抜け、同駅通過直後に高架から地上へ降りてくる。このあたりは住宅地になっている上に、踏切やカーブもそれなりに多い。地下鉄の車両が地上に出て、住宅地を縫って走る光景はなかなか印象深い。

日吉駅から田園調布駅まで、東急東横線・目黒線が並行する区間となる。目黒線には東急電鉄の車両だけでなく、相互直通運転を行う東京メトロ南北線と埼玉高速鉄道、都営三田線の車両も乗り入れるため、運が良ければそれらの車両と並んで多摩川を渡る車窓風景を体験できる。別の日に訪れた際、ともに東京メトロの車両である9000系と17000系が並走する姿を見られた。

  • 東急東横線・目黒線が並走する区間。多彩な顔ぶれに17000系が加わった

2022年度下期に相鉄・東急直通線の開業が予定されており、いずれは20000系・21000系といった相鉄の車両もこの区間を走ることになる。都営三田線では新型車両6500形を投入する予定となっており、17000系がこれらの車両と顔を合わせる日も遠くないだろう。

17000系の「Fライナー」特急は自由が丘駅を発車した後、アップダウンの激しい区間を越えつつ、高架区間を高速で駆け抜け、中目黒駅へ。東京メトロ日比谷線と接続するこの駅で、今回は東京メトロの車両13000系を見かけた。代官山駅を通過して再び地下に入り、渋谷駅に到着。ここから先は小竹向原駅まで副都心線を走行する。

  • 夕方、東横線の駅を通過し、副都心線方面へ向かう17000系

渋谷駅まで「Fライナー」特急として運転された17000系は、東京メトロ副都心線で種別が「Fライナー」急行に変わり、明治神宮前駅、新宿三丁目駅、池袋駅、小竹向原駅の順に停車する。筆者が乗車した「Fライナー」は午前の時間帯に運転されたこともあり、東横線の駅から乗車した利用者の約半数が渋谷駅で降り、その後は比較的空いていた。

ちなみに、筆者はこのとき主電動機のある7号車に乗っていた。主電動機には永久磁石同期電動機(PMSM)、制御装置にはシリコンカーバイド(SiC)素子が採用されており、その音は比較的静かだった。10両編成の17000系に関して、編成形態は4M6T(電動車4両・付随車6両)とされ、2・4・7・9号車が電動車とのことで、それ以外の号車はより静かな車内になっていると思われる。もっとも、感染症対策として窓を開けての換気を行う関係上、トンネル内の反響は車内にも響くが、これは致し方ないことだろう。

池袋駅を発車し、要町駅、千川駅を通過すると、やがて有楽町線の線路が見え、小竹向原駅に到着した。筆者はここで下車したが、17000系は小竹向原駅から種別を「Fライナー」快速急行に変え、西武有楽町線・池袋線を走行して飯能駅まで運転される。横浜市内から渋谷・新宿・池袋を経て埼玉県西部までを結ぶネットワークに、17000系も無事仲間入りを果たしているようだった。

余談だが、筆者が乗ってきた「Fライナー」の17000系を見送った後、有楽町線から来たと思われる各駅停車の石神井公園行も17000系だった。現在、17000系は10両編成のみ投入が進められているため、10両編成で運転される有楽町線のほうが17000系に乗車できる機会は多いかもしれない。副都心線から東急東横線・みなとみらい線に乗り入れる17000系は、いまのところ「Fライナー」を含む速達列車に限定されるが、2022年度から8両編成の17000系が投入される予定となっており、その後は筆者の住む横浜市内でも17000系を見る機会が増えるのではないかと思われる。

■半蔵門線18000系、色味の違う紫色が印象的

続いて、デビュー間もない東京メトロ半蔵門線の新型車両18000系にも乗った。小竹向原駅から渋谷駅に戻り、東急田園都市線・東京メトロ半蔵門線のホームで列車を待つと、しばらくして18000系の急行久喜行がホームに入ってきた。

  • 東京メトロ半蔵門線の新型車両18000系。相互直通運転を行う東急田園都市線と東武スカイツリーラインにも乗り入れる

東京メトロ半蔵門線の新型車両18000系は、17000系と似た外観ながら、車体前面のライトが丸目の形状だった17000系に対し、18000系は直線的な形状で、表情に変化をつけている。車体前面および車体側面の窓下と上部には、半蔵門線のラインカラーである紫色の濃淡2色があしらわれ、車端部のうちフリースペースがある部分では、濃い紫のラインにピクトグラムが掲示されている。

内装に関して、全号車にフリースペースを配置し、ドア下部の傾斜やフリースペース付近のドアレールの切欠き加工など、17000系と共通する特徴も見られるが、座席や吊り革、床面には色味の異なる紫色がふんだんに取り入れられ、17000系とは異なる空間になっている。17000系はモノトーンの空間にラインカラーをアクセントに添えた印象だったが、18000系はラインカラーを徹底的に取り入れることで、優しくも個性的な空間に仕上がっているように感じられた。なお、優先席は背もたれが赤色となっている。

  • 半蔵門線の新型車両18000系の車内(2021年6月の報道公開にて、編集部撮影)

18000系の急行久喜行は、渋谷駅まで東急田園都市線を走ってきたこともあり、渋谷駅に到着した時点で立席が出るほどの乗車率。渋谷駅で乗客が入れ替わっても混雑状況はあまり変わらなかったが、半蔵門線の表参道駅、九段下駅、大手町駅と停車するにつれ、次第に車内は空いていった。

18000系も17000系と同様、編成形態が4M6Tで主電動機に永久磁石同期電動機(PMSM)、制御装置にシリコンカーバイド(SiC)素子を採用し、加減速の音は静か。ただし、清澄白河駅・住吉駅付近などで待ち受ける急カーブでは、車輪のきしむ音がトンネル内に反響し、換気のため窓を開けている車内にも音が響く。

住吉駅から錦糸町駅を経て押上駅まで、半蔵門線は四ツ目通りの地下を通り、押上駅に着く。筆者はここで下車したが、18000系の急行久喜行は押上駅から東武スカイツリーラインを走行する。2021年9月の時点で、18000系は本数が少ない上に、中央林間駅から久喜駅・南栗橋駅までの広い範囲で運行されるため、見つけるまでに時間がかかる。運良く発見または乗車できたなら、紫色の色調の違いに着目してほしい。

東京メトロ半蔵門線は全線地下区間のため、別の日に乗入れ先の東急田園都市線で18000系の走行する姿も見てきた。田園都市線は横浜市北部や川崎市中部の丘陵地帯に開発された多摩田園都市を通り、地形のアップダウンに合わせて急勾配にさしかかったり、切り通しを通過したりと変化が多いが、18000系はこうした起伏のある区間も難なく走行。新型車両ならではの軽やかさが感じられた。

  • 東急田園都市線を走る18000系。濃淡の紫色がよくわかる

  • 田園都市線では起伏の多い住宅地を走行

  • 急勾配の区間もあるが、18000系は軽やかに駆け上がる

有楽町線・副都心線の新型車両17000系、半蔵門線の新型車両18000系は、ラインカラーやライトの形状に違いが見られるものの、個性的な顔立ちで目立っている。どちらもバリアフリーを考慮した車内設備と環境に配慮した機器等を備えて運行開始しており、これからの活躍に期待したい。

一方、新型車両の投入にともない既存の7000系・8000系は置換えとなるため、いまのうちに乗車・記録しておきたいところ。毎度のことだが、感染症対策を行いつつ、自身の安全と周囲への配慮を意識した上で行動するよう心がけたい。