JSRは9月17日、EUVリソグラフィ用金属酸化物フォトレジストの設計・開発・製造会社である米Inpriaの全株式を取得し完全子会社化することで同社と合意したことを発表した。

これまでJSRは2017年および2020年に行われたInpriaの資金調達ラウンドに参加し、同社の株式の21%を所有していた。両社はInpriaの事業価値について5億1400万ドル(約565億4000万円)で合意しており、残り79%に相当する株式の取得は、現金で支払う予定だが、その手続きは、規制当局の承認などのプロセスを経て2021年10月末には完了する予定となっている。

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    InpriaのEUV露光用金属酸化物フォトレジスト (出所:Inpria Webサイト)

Inpriaは、2007年の設立以来、メタル系EUVフォトレジストの開発に取り組んでおり、EUV露光における世界最高クラスの限界解像度を達成している。現在は開発費がかさみ赤字経営が続いているが、JSRでは、2022年には単独で黒字転換させるとしている。

JSRは、InpriaのEUVレジストを用いることにより、EUV工程でのパターニングコストの削減をはかることができるようになるとしているほか、自社のフォトレジスト製品群に、Inpriaのメタル系レジストを加えることで、半導体材料サプライヤとしてシームレスに価値を提供できるようになるとしている。

なおJSRは5月、従来の本業ともいえるエラストマー(合成ゴム)事業をENEOSへの売却することを発表しており、今後はリソースを半導体材料やライフサイエンス分野に投入し注力する方針だとしている。同社のエラストマー事業は、中国や韓国勢との競争激化や取引価格の下落などで、設備投資に見合った利益を上げられなくなっており、ほかの事業の足を引っ張る存在になっていたという。今後は、急成長分野への投資を加速させていくと見られるが、中でもEUVレジスト事業の強化は、当該分野で先行するトップ企業の東京応化に追い付き追い越すためとみられる。Inpria CEOのAndrew Grenville氏は、「JSRとともに歩むことで、高NA(開口率)EUV時代の顧客ニーズに応えることができると確信している」とのコメントを発表しており、現在、高NA EUVレジストの開発を進めており、数年後には実用化することを目指していることを明らかにしている。

2021年9月22日訂正:記事初出時、タイトルにてInpriaの社名をImperiaと誤って記載しておりましたので当該部分を訂正させていただきました。ご迷惑をお掛けした読者の皆様、ならびに関係各位に深くお詫び申し上げます。