中国最大のファウンドリである中芯国際集成電路製造(SMIC)が、約88億7000万ドル(約9800億円)を投じて上海市に新たな300mmウェハ対応の半導体工場を建設することを計画していることが同社が上海証券取引所へ提出した届出書類より判明した。

それによると、上海市政府傘下の貿易・投資の改革を進める中国(上海)自由貿易試験区臨海新片区管理委員会などと共同出資で新工場を建設、運営する新会社を資本金55億ドルで設立することで合意したという。

新会社への出資比率は、SMICが51%以上、上海市および関係組織が25%以下、残りは一般投資家から出資を募るとしている。

新工場では28nmプロセス以上のいわゆるレガシー半導体製品を中心に製造するという。現在、不足が目立つ自動車用やディスプレイ、家電などといったレガシープロセスで製造される半導体(イメージセンサ、Wi-Fiチップ、各種ドライバIC、車載マイコンなど)を集中的に製造する模様である。提出書類によると、生産能力は月産10万枚(300mmウェハ)としているが、実際の建設開始時期や稼働開始時期などの詳細については公表されていない。

米国商務省は2020年12月、同社が中国人民解放軍と結びつきがあるとして「エンティティ・リスト」に加え、10nmプロセス以下の先端半導体の生産に必要となる製造装置の同社への販売を事実上禁止する措置を取った(正確には装置の販売には商務省のライセンス取得が必要だが、原則許可を出さない方針)。しかし28nmプロセス以上の半導体の製造についての制約は設けず、許可申請によって米国製半導体製造装置を輸入することはかのうとなっている。

中国政府は、中国内の半導体自給率を2025年をめどに70%まで引き上げる目標を中国政府の産業ロードマップ「中国製造2025」に掲げているものの、米国との経済戦争が続いており、その達成は絶望的と見られるが、目標に近づくために一気に月産10万枚という巨大工場を建てることにした模様である。

  • SMIC

    中国上海にあるSMIC本社工場 (出所:SMIC Webサイト)