米国の国防総省(DoD)ならびにIntelは、米国における半導体製造能力の強化に向けた米国政府の取り組みの一環として、重要軍事システムで必要とされるコンピュータチップを米国内の商用ファウンドリで機密を守りながら設計、製造するための契約を締結したと発表した。

同契約は、国防総省傘下のNational Security Technology Accelerator(NSTXL:国家安全保障技術加速組織)が立ち上げた「RAMP-C(Rapid Assured Microelectronics Prototypes - Commercial)」プログラムの第1段階で、米国内に軍事チップも機密を守って製造できる商用の半導体製造施設(ファウンドリ)のエコシステムを構築するこを目的としている。

RAMP-Cは、DoDが重要な半導体技術に確実にアクセスできるようにするとともに、サプライチェーン全体のセキュリティを強化することで、チップの設計と製造、パッケージ化の最先端技術で米国の優位性を維持できるようにしていくプロフラムである。Intelによると、このプログラムは国防総省の軍事防衛システムに必要なカスタムLSIと商用製品を同時に製造するために計画されたという。

Intel Foundry Service(IFS)の総責任者(部門プレジデント)に指名されたRandhir Thaku氏は、「RAMP-Cプログラムにより、商用ファウンドリの顧客と国防総省の両方が、最先端のプロセス技術に対するIntelのリソースを活用できるようになる。RAMP-Cにしたがって、IntelはIBM、Cadence Design Systems、Synopsysなどと提携して、米国内の商用ファウンドリエコシステムを確立する。エコシステムパートナーとともに、米国内の半導体サプライチェーンを強化し、米国が研究開発と高度な製造の両方でリーダーシップを維持できるよう支援する」と述べている。

また、IntelのPat Gelsinger CEOは、「Intelはロジック半導体の設計と製造の両方をテクノロジーの最先端で行っている唯一の米国企業である。我々が2021年にIntel Foundry Servicesを立ち上げて、その能力を、米国政府を含む広範なパートナーに提供できる機会があることを光栄に思う。RAMP-Cのようなプログラムを通して、そのような可能性を発揮できることは素晴らしい」とコメントしているほか、「過去1年間に得たもっとも重要な教訓は、半導体が戦略的にきわめて重要だということと、強力な国内半導体産業を持つことが米国にとっての価値のあることだということである」とも説明している。

Intelは2020年、DoDと最先端の異種統合プロトタイプ(SHIP)プログラムの第2段階の契約を締結。このSHIPプログラムにより、米国政府は、Intelの高度なパッケージング技術にアクセスできるようになった。この結果、DoDは、Intelの高度な商用実装技術を使用して、RAMP-Cで製造された集積回路をパッケージ化およびテストするエコシステムを構築できたという。

  • Intel Fab42

    米国アリゾナ州チャンドラにあるIntel Fab42の外観 (C)Intel