「サイン・コサイン・タンジェント? こんなの、社会に出て何に役立つの?」

高校時代、多くの人が一度はそう疑問に思ったことでしょう。実際、社会に出てからサイン・コサイン・タンジェントを使ったことがないという人も少なくないはず。しかし、大事なことだからこそ授業で習うわけで、実際、私たちの身の回りにはサインやコサインが溢れています。

生物学者でハーバード大学博士研究員の佐々木浩さん(ツイッターアカウント@popeetheclown)がツイートしたサイン・コサインに関するお話は、まさにそれを象徴する出来事として、「感慨深い」と話題になっています。

高校時代、電車内で数学の勉強をしていたら、隣のおじさんに話しかけられた。「三角比はやっとけ。俺は大工だから、サインコサインは毎日使うんだ。エジプト人もピラミッド建てるのに使ったんだぞ」。降りぎわに「兄ちゃん勉強がんばれよ」と言って去っていった。おじさん、僕も今、毎日使ってますよ(@popeetheclownより引用)

何やら深イイ話を伺わせるお話ですが、このエピソードに反響が続出。ツイートは3.9万件のリツイート、24.4万件のいいねを記録(5月27日時点)し、「私も三角関数を使っている」という報告も溢れました。

「測量会社でアルバイト中、傾斜地の断面計るときに使いました」「ぼくは漫画を描いてたので、宇宙から見た地球の大きさを知りたかったんですけど、読んでた本に、運良く星の半径÷星の中心からの距離=sin星の視半径という式が載ってた後は、自分でも計算出来るようになりました」「服飾専門学校に行ったので、サーキュラースカートの計算をするのに円周率は必須でした」「デザイナー時代、バイヤステープのマーキングでルートの計算を使いました」「sinθcosθtanθは測量でもCG製作でも使います。両方経験してる文系な自分はやっぱ子供の頃になんでも経験するもんだと実感してます」

一方、「こういう大人に出会いたかった……数学を勉強することの意味が解らず、苦手だな~としか思わなかった」と、使い道を理解した上で習いたかったというコメントも目立ちました。

実際、佐々木さんはサイン・コサインを何に使っているのか、ご本人に少しお話を伺ってみると、「私はいま、新しい顕微鏡技術を開発して、細胞の謎を解き明かす研究をしているのですが、三角関数は顕微鏡データの解析に欠かせないものになっています」とのことです。

ツイートで反響が寄せられたことについては、次のようにコメントしてくださいました。

「ファッションデザイナーから船乗り、漫画家の方まで、様々な職業の方から、サイン・コサインを日常的に使っている、いまになって急に必要になったという反響がありました。学校で学ぶことのすべてを大人になってから使うわけではないとしても、いつ何が役に立つかはわからないということを改めて実感しました。そして、この話題でみんなが盛り上がれるのも、多くの人がサイン・コサインを学んだことがあるからこそだと思います」

多くの人にとって謎に包まれていたサイン・コサインですが、細胞の研究やファッション、果ては漫画まで、私たちの身近な生活になくてはならない存在だったんですね。改めて、義務教育や高等教育の偉大さにハッとさせられるような話題でした。