昨年8月に現役を引退したサッカー元日本代表の内田篤人氏。引退後は、日本サッカー協会が新設したロールモデルコーチに就任し、U-19日本代表のコーチを担当、指導者の道を歩み始めている。また、昨年10月よりスポーツチャンネル「DAZN」でスタートした初冠番組『Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME』では、自身の経験を生かした選手目線の解説が好評だ。

  • 初冠番組『Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME』に出演中の内田篤人氏

    内田篤人 撮影:蔦野裕

この番組では、世界で活躍する日本人選手のプレーを独自の視点で解説。現役選手をゲストに迎えた対談も実施している。番組スタート時に「日本サッカー界への恩返しができれば」と抱負を語っていた内田氏にインタビューし、改めて番組への思い、そして解説や選手とのトークにおいて意識していることなど、話を聞いた。

――『Atsuto Uchida’s FOOTBALL TIME』がスタートしてから半年以上経ち、配信回数は30回を超えました。

楽しいですね。現役の時はサッカーの話をあまりしなかったので、毎回が本当に新鮮というか、あまり仕事という感じがしないぐらい楽しいです。例えばゲストで出演していただいた中村憲剛さんとは、ちゃんとサッカーの話をしたのはその時がほぼ初めてだったんです。サッカーを本当によく知っている、頭のいい方だなと改めて思いました。

――冠番組をスタートさせる、と決まった時の率直な心境は?

週1回の配信で大丈夫か、みたいな感じでしたけど、アナウンサーの野村明弘さんがMCとして一緒に入ってもらえたので。しっかりした方がいれば、僕でもいいかなと。僕がすべてを回したりするのはできないけど、野村さんの存在はやはり心強いですね。サッカーの試合の実況経験も豊富だし、知識も多いし、番組を回すのも上手いので、もう身を預けて好きなことをしゃべっています。

――フリーアナウンサーとして長く活躍されている野村さんから何を感じていますか?

仕事のひとつひとつに対する準備がすごいですから。選手の名前やポジションを含めた知識の部分もそうですし、とにかくサッカーをよく知っている。事前にすごく勉強して準備されていると感じますし、話していても倍になって返ってくるというか、僕がびっくりするような情報をたくさん持っている。見習わなきゃいけないと感じています。

――番組のスタート時に「日本サッカー界への恩返しができれば」と抱負を語っていましたが、改めてその思いをお聞かせください。

僕が子どもの頃は地上波のサッカー番組が数多くあって、例えば『やべっちF.C.』や『スーパーサッカー』を見て、カズさん(三浦知良/横浜FC)に憧れてずっとボールを追いかけているうちにサッカー選手になることを夢見ましたし、プロになるためにはこういう練習をすればいいのかと思えたんですね。今は両番組とも地上波での放送は終わってしまいましたけど、僕の番組でサッカーの魅力であるとか、選手たちが必死に頑張っている姿や試合中に何を考えているのかを僕目線で伝えたいなと。これがあったからこういうミスが起こったとか、子供たちにはこういうところを真似してほしい、といったことを次の世代に繋げていくのが僕の使命なのかな、と思っています。

――名前が出た現役最年長のカズさんをゲストで呼ぶことは?

もちろん出演していただければびっくりするぐらい嬉しいけど、カズさんを前にしてしゃべるだけでめちゃくちゃ緊張すると思います。ちょっと考えさせてください(笑)。

――ゲストで言えば、初回に出演されたサッカー好きのアイドル・日向坂46の影山優佳さんが、その後も不定期の形で数多く出演しています。

僕自身は最初、カゲのことを知らなかったんですよ。サッカーにすごく詳しいアイドルの女の子をゲストで呼ぶと聞いた時も、失礼を承知で言うと、大丈夫なのかなと思ったんです。それがいざ会うと僕よりもサッカーに詳しいし、国内外の試合を本当によく観ているし、すごく気が利くし、野村さんと話をしていても上手い場面で上手くコメントもしてくれる。サッカーだけじゃない部分を含めて、めちゃくちゃ助けられています。

――サッカーだけじゃない部分とは?

普段はサッカーを見ない人が彼女を見てサッカーに入って来てくれるというか、踏み込んで来てくれることがあると思うので。ゲストとして一番多く来てもらっていますけど、僕とか野村さんにできない部分を、すごくやってくれていると思います。なので、カゲを通してサッカーをもっと多くの方に知ってほしいし、だから僕の番組だけでなく他のサッカー番組にも出てほしいし、アイドルとしての活動を含めた他の仕事もたくさんあるからすごく忙しいと思うので、身体に気をつけながら頑張ってほしいですね。

――先ほど言われた「僕目線」のひとつに、特製のサッカーボードを使った盤面解説があるかと思います。ボードの上に置かれた選手の人形を使いながら、小型カメラで選手目線で映していく解説は非常に興味深いです。

平面で解説できればサッカーの難しさが伝わるのかな、と思って作ってもらいました。番組スタートにあたって、僕から「ぜひやりたい」とお願いした企画です。ピッチを上から見たら、実はサッカーは楽なんですよ。平面と奥行きと時間とを同時に判断しながらプレーするのがサッカーの難しいところであり、選手たちはみんなそれをやっているんだよ、ということを、平面での視点越しなら上手く理解してもらえるかなと思ったんですね。配信を重ねてきた中である程度伝えられていると思っているので、今後も使っていこうと考えています。