日本放送協会(NHK)は1月13日、2021〜2023年の次期3カ年経営計画が経営委員会で議決されたと発表。3年間で550億円規模の支出削減を進めつつ、経営資源をコンテンツの取材・製作に集中させ、「スリムで強靱な『新しいNHK』」へと変わることをめざす。衛星波(BS)・ラジオ放送の整理・削減や、受信料の値下げの方針も示した。

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受信料の値下げについては、新型コロナウイルス感染症の影響や放送法改正の動き、新たな営業施策の進捗などを見極めたうえで、衛星波の削減を行う2023年度に実施すると明記。具体的な値下げ幅などは明らかにしていない。

さらに、衛星付加受信料の見直しを含めた総合的な受信料のあり方について、導入に向けた検討を進める。視聴者に対しては、引き続き受信料制度について説明し理解を求めつつ、受信料の支払率8割の維持に努め、衛星契約の割合を向上させることで運営に必要な受信料収入を確保するという。

なお、NHKの前田晃伸会長は2020年8月に今回の経営計画案を発表した際、「受信料は安くなる方がいいに決まっている。サービスを落とさずに受信料をいかにして下げていくかというのは経営の課題」とコメントしており、日本民間放送連盟(民放連)はこの計画案を受けて受信料の見直しを明記するよう求めていた

スリムで強靱な「新しいNHK」をめざす構造改革として、保有するメディアの整理・削減を実施。具体的には衛星波のうち、右旋の3波(BS1/BSP/BS4K)の見直しを行い、2023年度中に2K(BS1/BSP)のうち1波を削減。番組の一部を他の放送波に移すなど編成上の工夫を行う。

将来的には4Kの普及状況を見極め、衛星波を1波に整理・削減することも視野に入れて検討を進める。また、BS8Kについては、効率的な番組制作や設備投資の抑制を徹底し、東京オリンピック・パラリンピック後に、在り方に関する検討を進める。

ラジオは、現在のAM放送2波(R1・R2)、FM放送1波という3波体制を見直し、AM・FM各1波へ整理・削減する方向で検討を進める。

インターネット活用業務のうち、地方向け放送番組の提供については必要な設備を整備して段階的に進める。また、ネット活用業務実施費用の抑制的な管理に向けた体制も整備する。

このほか、番組経費などの見直しや、設備投資など“固定的経費への斬り込み”を行い、トータルで700億円程度の経費削減を実施。一方で「取材に基づく信頼できるコンテンツを、放送とインターネットを連動させて届ける」ことをめざすほか、訪問によらない営業活動として「ネットを活用した契約・収納活動の推進」など、150億円程度の重点投資を行う方針も示した。

前田会長は次期3カ年経営計画について、「これまで取り組んできたNHKの業務・受信料・ガバナンスの『三位一体の改革』を強力に推進するため、NHKがただちに取り組まなくてはならないことを全て盛り込み、NHKを本気で変えるという強い覚悟を示したもの」と述べている。