2020年12月21日から、横須賀線・総武快速線で新型車両E235系1000番代が営業運転を開始した。今後、745両が製造され、現行のE217系をすべて置き換える。これまでのJR東日本の新製車両投入のペースを考えると、2~3年のうちに投入が完了するであろう。

  • 横須賀線・総武快速線で営業運転を開始したE235系1000番代(筆者撮影)

このE235系1000番代は、山手線で使われているE235系0番代とは基本的に共通の設計で、一部に改良を加えた電車。外部塗色の変更とグリーン車の連結以外、普段利用している限りにおいては、大きな差はわからないだろう。しかし、山手線と横須賀線・総武快速線とでは、利用客の動向や路線を取り巻く環境が異なる。実際に乗車し、検分してみた。

年末の1日を活用し、乗車した列車は逗子発千葉行。逗子駅から東京駅まで普通車、東京駅から千葉駅までグリーン車を利用し、乗り比べた。

車体の帯は、横須賀線の伝統色である青色・クリーム色の2色だが、前後を走るE217系と比べて、青色の鮮やかさが印象に残った。まだ真新しいせいもあるだろうが、彩度が上がった感じがする。E217系のリニューアル前、あるいは国鉄型の113系の頃はダークブルーに近かったから、かなり変わった。

  • 山手線で活躍するE235系0番代(筆者撮影)

前面のデザインも山手線用と同じ。グラデーションのパターンも同じだが、色は青だ。それだけでも新鮮に思うが、今後、両数が増え、見慣れてくるにつれて、どのように沿線の風景に馴染んでいくだろうか。

■インテリアは山手線と比べておとなしめ?

逗子駅から乗車し、車内に入ってみると、インテリアに関して「おとなしい」と感じた。比較の対象が、派手な山手線の0番代だからだ。

  • 普通車の車内(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

吊り手をウグイス色(車体帯と同じ淡緑色)としている山手線とは違って、こちらは一般的な黒とグレー。その分、うるさい感じが和らげられている。数駅で降りる利用客も多い山手線に対し、横須賀線・総武快速線は1時間以上乗り続けるケースも多いので、にぎやかすぎないのはありがたい。

座席の背ずりの部分は、横須賀線・総武快速線をイメージさせる青色として、アイデンティティを主張している。同時に利用客への案内の一助、あるいは誤乗防止としているのは、ここをウグイス色にしている山手線用と同じだ。

ロングシート自体はホールド感があり、長く座っていられる。普通車のボックスシートがなくなった点が一部で問題視されていたが、E217系とて11両または15両編成のうち、横須賀線上で東京側の3両の、さらに一部だけであった。そこをわざわざ狙って乗らない限り、ロングシートに座ることになるので、大差はないと思う。

日常的な利用客にしてみれば、E217系がE235系1000番代へ置き換えられたところで、大きな違和感や戸惑いはあるまい。むしろ、ラッシュアワーに奥へ入りやすくなった分、通勤客にとってはありがたいかもしれない。

  • ロングシート脇の仕切りも大型化された(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

ロングシート脇の仕切りが大きくなった点も、長時間乗っている分にはありがたい。ここに立ち客がもたれかかると、座っているほうは圧迫感があるため、最近の電車では大きくなる傾向がある。このあたりも、山手線と横須賀線・総武快速線における使用条件の違いのひとつと言えよう。

■車内は明るく、走行音は静か

客室内の照明はLED化され、昔ながらの蛍光灯であるE217系と比べて、やはり明るく感じる。壁の化粧板は、どちらも同じ白色系ではあるものの、光の反射率が異なるのではなかろうか。

  • ドア上部のデジタルサイネージは21インチの大型画面に(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

  • 荷棚の上部にもデジタルサイネージを3画面設置している(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

山手線に登場したときに話題となったデジタルサイネージは同様に踏襲され、各乗降扉の鴨居部分のほか、扉間の荷物棚の上や隣の車両への貫通路上にもずらりと取り付けられている。山手線では廃止が取り沙汰され、結局は存続した紙の吊り広告も引き続き掲出。ディスプレイだけより、むしろ紙のあるほうが落ち着く。

新型コロナウイルス感染症対策として、換気のために一部の窓が開いているせいか、走行音が車内に響いてくる。しかし、E217系と乗り比べてみると、かなり静かになっており、とくに品川~錦糸町間の地下線において顕著だ。大きな騒音源となる主電動機が密閉式で、ファンによって冷却を行う、最近の主流となっている「全閉式」のモーターとなっていることが大きい。四半世紀前の設計である、E217系の開放型の主電動機と比べて、防音の面で進歩が感じられる。

大船~戸塚間や横浜~新川崎間のようなスピードの出る区間でも、走りはスムーズで安定しているように思えた。そこはさすがに新型車両と言えるだろう。

■グリーン車の設備は充実

東京駅から利用したグリーン車は、紅色とグレーのツートンのリクライニングシートなど、これまでとは客室のイメージが変わった。以前は赤や青の座席が並ぶ室内であったが、ダークブラウンの木目調化粧板も相まって落ち着いた雰囲気がある。

  • グリーン車の車内(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

主電動機を搭載しておらず、窓も固定式であるため、E235系のグリーン車の客室内はなおさら静か。E217系と混用されている時期は、運用を調べて、こちらを選んで乗りたいほどだ。

妻面に設置されたフルカラー液晶式の車内案内装置も便利だ。既存車ではLED式だったので、一覧性が高くなり、提供される情報量も大きく増えた。液晶式車内案内装置自体、山手線に限らず大手私鉄や地下鉄の車両に普及しているだけあって、特別料金を必要とするグリーン車において、「物足らない」と感じていた部分が改善された。ただ反対に、すぐ目の前に画面がくる座席だと、かえって目障りで落ち着かないかもしれない。座る位置には注意したい。

  • グリーン車の車内案内装置もフルカラー液晶式に(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

  • グリーン車の肘掛に設置されたコンセント(2020年12月の報道公開にて、編集部撮影)

グリーン車の全座席に設置された電源コンセントやフリーWi-Fiも話題となったが、むしろワンランク上の車両として、当たり前の設備ではないかと感じる。逆にE217系などのグリーン車に付いていなかったことが不思議に思えるほど、一般的な設備になっている。電源コンセントは肘掛けの先端に取り付けられている。前の座席の下や壁面にあるより、ここのほうがコードの取回しが良い。

座席そのものは、既存の首都圏の普通列車グリーン車より硬めの座り心地だ。これは好みもあるだろうが、筆者の体にはフィットした。

最新型車両だけに、もちろん今日における基本的な仕様はすべて、E235系1000番代に盛り込まれている。ただ細かい点においては、長時間乗車する利用者や、とくにグリーン車の常連客が多い路線ならではの、細かい配慮が行き届いていると思った。「山手線用と同じ電車を横須賀線・総武快速線へ入れた」点はネガティブにとらえられがちだが、どのような路線であっても通用する、標準的な電車として仕上がっていると言える。