JR東日本が近年、取組みを続けている鉄道を活用した生鮮品の輸送。これまで新幹線を使用して行われていたものが、在来線特急列車でも行われるようになった。

  • 特急「踊り子」で南伊豆産の伊勢海老を直送。東京駅で荷下ろしを行う様子が報道関係者らに公開された

9月26~28日の3日間、JR東日本横浜支社と伊豆の地元企業が連携し、伊豆エリアの食品などをそろえた「伊豆美味いもん市」が東京駅地下の「スクエア ゼロ」で開催されている。このイベントの特別企画として、伊豆急行と共同で、特急「踊り子」を使用し、伊豆エリアの伊勢海老や金目鯛などが直送されることになった。

■E257系の車販準備室を活用、伊勢海老を運ぶ

初日となった9月26日、伊豆急下田駅9時51分発の上り「踊り子4号」の車内に伊勢海老が積まれ、東京駅にやって来た。この列車はリニューアルしたE257系で運転され、12時32分、東京駅9番線ホームに到着。車販準備室を備えた5号車(サハE257-2010)に伊勢海老が載せられている。計2箱あり、1箱あたり伊勢海老30匹が入っている。

乗客の降車が終わると、台車が5号車に横付けされた。伊勢海老の入った箱が1箱ずつ車内から取り出され、手際よく台車に載せられる。この伊勢海老2箱のうち、1箱は「羽田市場食堂」へ、もう1箱は「伊豆美味いもん市」へ運ばれる。

  • リニューアルしたE257系の「踊り子4号」が東京駅に到着。車販準備室のある5号車に台車が横付けされる

今回の企画では、伊豆の金目鯛もやって来る予定だったが、台風の影響により、前日に金目鯛の漁に出ることができず、当日の出荷がなかったとのこと。この日は南伊豆産の伊勢海老のみ運ばれ、販売されることになった。

ちなみに、特急「踊り子」では車内販売が行われていない。E257系に設置された車販準備室は、リニューアル前の中央本線特急「あずさ」「かいじ」時代に使用されていた。当時の設備がリニューアル後も役に立ったという形だ。

■伊勢海老は即完売! 「伊豆を盛り上げたい」

「伊豆美味いもん市」の会場では、多くの来場者が伊勢海老の到着を待っていた様子だった。会場に設置された「渡辺水産」のブースに伊勢海老を入れた箱がやって来て、開梱される。中には生きた伊勢海老が入っており、保存のためのおがくずをかき分けると、動きが良い。13時の販売開始前から列ができ、すぐに完売した。1匹1,000円というサービス価格になっている。

  • 伊勢海老2箱が台車で運ばれる

  • 「伊豆美味いもん市」の会場

  • 会場に運ばれた伊勢海老の箱

  • 箱を空けると、活きのいい伊勢海老が入っていた

  • 多くの人が伊勢海老を買い求め、即完売に

  • 修善寺で採れた「原木しいたけ」も販売された

JR東日本横浜支社小田原地区センター助役(湘南伊豆サプラいずプロジェクト担当)の矢島泰行氏は、「現場の社員が集まって伊豆を盛り上げたい」との思いが企画の動機となったと話す。「新幹線物流を見て、『踊り子』で運ぶことを考えた」とのことで、「この『伊豆美味いもん市』で伊豆の魅力を知ってもらい、多くの人に電車で伊豆に来てほしい」と語った。

当日は他にも、修善寺駅から特急「踊り子」で運んだ「原木しいたけ」などが「伊豆美味いもん市」で販売された。鉄道はダイヤが厳密に決まっているだけに、今後、地域の新鮮な魚介類や野菜の輸送に役立っていくかもしれないと感じさせた。