「ミニマリスト」や「断捨離」という言葉をよく耳にするようになりました。今まで、お金持ちというと"モノをたくさん持ち、セレブ"というイメージでしたが、ミニマリストのような言葉が登場し、認知されていくにしたがって、どうもそれとは真逆の"豊かさ"の存在に気づき始めたのではないでしょうか。

また、断捨離するとお金か貯まるとも聞きます。モノ持ち・セレブなお金持ちとは真逆の豊かさを実践するお金持ちの存在があるとしたら、私たちは参考にしたいところです。では、そういった人たちはどのような生き方をしているのでしょうか。

  • 「ミニマリスト」になると何が変わるのか

なぜ私たちは「ミニマリスト」「断捨離」という言葉に惹かれるのか

「ミニマリスト」「断捨離」という言葉からイメージされる豊かさとはどのようなものなのかを、もう少し考えてみましょう。世の中には様々なモノがあふれ、100円グッズなど、量産に伴い価格もさほど高くないモノは少なくありません。低成長時代、格差社会と言われつつも、それなりに裕福になった日本人にとって、深く考えずに商品を手に入れることが可能になりました。

たとえば、今では当たり前になりましたが、日本の若い女性が有名ブランドのバッグなどを持って海外旅行するのを外国から奇異の目で見られていた時代もありました。ヨーロッパでは本来、そうしたブランドものを身に着けられるのは、名を成し、功を遂げた熟年世代でした。

また、ヨーロッパの女性に比べ、日本人の女性はモノが多く、洋服など6倍のワードローブスペースだと聞いたことがあります。仕立ての良いものを長く大切に着て、いろいろ組み合わせを変えたり、スカーフやアクセサリーなどで変化を持たせて着こなしたりするヨーロッパの文化とは大きな違いです。

しかし、多くの人は、こうしたモノに支配されているかのような現状に息苦しさを感じたのではないでしょうか。その結果、すっきり、シンプルに暮らしたい気持ちを的確に表している、「ミニマリスト」「断捨離」という言葉が共感を得られたのかと思います。

さらに、モノによって暮らしを作るのではなく、自分自身の工夫によって生活スタイルを作り上げたい気持ちも潜在的にあるのではないでしょうか。今までのモノを持つことでの自己表現から、何かを創造することによる自己表現へと欲求が変わってきているのかもしれません。

何を残して何を捨てるかは、人生設計そのもの

当たり前ですが、単純に無駄なモノを買わなければお金が貯まります。思い切った投資も最初の一歩は地道な節約による貯蓄です。無駄な買い物を徹底的になくせば、お金は自然と貯まります。つまり、お金持ちは無駄を減らすことができているということになります。

とはいえ現実は、無駄をなくすことはなかなか難しいものです。無駄をなくしてモノを捨てられる人とそうじゃない人の違いは、一体どこにあるのでしょうか。

モノを処分した経験が一度でもある人は、処分するに際して、今後の生活に必要かどうかを真剣に判断したことでしょう。つまり、将来の生活設計を漠然とでも思い浮かべて、捨てるモノを選別していたということになります。

アメリカのビックビジネスで成功した人の50%は目標を自室の壁に掲げていたそうです。つまり人生設計がしっかりしていて、目標が定まっていることが成功への道ということになります。無駄なモノは持たないことは、それだけ人生設計がしっかりしていると言えるでしょう。人生設計がしっかりしていれば、おのずと節度ある生活スタイルになるはずです。

計画的な人生について納戸の経済学から考える

それでは、お金を生む「節約」「人生設計」「節度ある生活」とは具体的にどのようなものなのか、私が実感している住まいの事例でご紹介しましょう。住まいづくりに関する無駄は身近なのでイメージしやすく、日々の生活にも応用できると思います。

住まいは日本人にとって最大の資産であり、莫大なローンを組んで手に入れるものです。それだけに住まいづくりにはしっかりした人生設計は欠かせません。人生設計がしっかりしている人ほど、その家庭に最適の素晴らしい住まいを手に入れています。

また住まいを手に入れるために必要な頭金や諸費用の資金は、日々節約してコツコツ貯めなければなりません。堅実な生活スタイルは住まいの取得という夢には欠かせないのです。

私は住宅メーカーに勤務していたことがあり、戸建住宅を多く設計したのですが、当時はほとんどの人が納戸を希望しました。「使わないものをしまっておきたい」、「部屋にモノがあふれるのが嫌」、「片付けるのが面倒なので、とりあえず納戸へ入れておきたい」などが要望の主な理由です。

納戸はおおむね3畳程度のスペースとなるのですが、取り出しやすいよう1列収納にするため、実際の収納量はその半分程度です。しかし納戸にしまってしまうような"たまに使うモノ"は果たしてどれだけあるでしょうか。

不用品をしまっておくほど不経済なことはありません。納戸を作るにも工事費はかかりますし、高い土地の有効活用の面でも問題です。そもそも住宅ローンという借金やコツコツためた資金の一部が、不用品をため込むために使われていることくらい、むなしいものはありません。

そこで思い切って不用品を処分して、ワーキングスペースなどにしたらどうなるでしょうか。3畳を使って、デスクと本棚、小さな打ち合わせテーブルくらいは設置可能です。不用品の収納で建設費を無駄遣いしていた納戸を、お金を生むワーキングスペースに変身させる方がよっぽど賢い選択と言えるでしょう。

自分のライフスタイルにあったモノを持とう

人生設計はまだまだ難しいという人は、当面の目標や希望に向けて無駄を見直してみてください。例えば、まだ独身でワンルームのアパートに住んでいるのであれば、不用品を処分して自宅でも仕事ができるコーナーを作るという目標でもよいでしょう。

海外のサイトにはベッドルームを一瞬にしてワークスペースに変えるような家具などが多く紹介されています。在宅ワークもいよいよ身近になってきた昨今、たとえワンルームであっても、どう使うかを真剣に考える時代です。

モノに支配されるのではなく、少ないモノの中で自分にあった生活スタイルを作り上げるよう工夫することが、心の豊かさや経済的な余裕を生み出すことでしょう。