フジテレビ系で放送される“ソーシャルディスタンスドラマ”『世界は3で出来ている』(11日23:00~23:40)で1人3役を演じる俳優の林遣都が、今作への思いを語った。

『世界は3で出来ている』に出演する林遣都=フジテレビ提供

■水橋文美江&中江功との出会い

脚本は朝ドラ『スカーレット』(NHK)の水橋文美江氏、監督は今年の正月にスペシャルドラマ『教場』を演出した中江功氏の今作。林は「昨年から今年にかけて、脚本の水橋さんと演出の中江さん、このお2人との出会いは自分の中での大きな出来事でした。もっと水橋さんの描く人間を演じたいと思いましたし、中江組をもっと経験したい、またいつか参加したいという気持ちがあったので、まさかそのお2人で、しかも出演者が自分だけという形で、声をかけていただけたというのは、とてもうれしかったです」と心境を語る。

また、「今、いろいろなところで新しい試みでの撮影が行われている中で、映像作品を作る人たちにも、きっといろいろな変化があったと思います。そんな中で、自分が1人の俳優として何をやっていくのか…。脚本があって、監督さんやスタッフの方々がいて、普通に演じられる喜びを(今回のお話で)改めて感じました」と感謝。

「撮影はソーシャルディスタンスを守ったり、スタッフさんの人数を減らしたりと変わってきていますし、いろいろ守るべきことはありますが、やっていることは今までと変わらず、スタジオにセットを組んでいただいて。改めて、役者って1人じゃ何もできないんだなと思いましたし、実際にこうして撮影に入ってみても、皆さん(スタッフ・キャスト)が集まってはじめて、ひとつの映像作品が生まれるんだということを感じました。これからも撮影環境は変わっていくとは思いますが、今自分ができることをやっていきたいなと思いました」と、思いを新たにしたようだ。

■かなりハードルの高い台本で難解

あらためて、水橋氏の脚本について聞くと、「大好きなんです。昨年から今年にかけて1年弱、『スカーレット』で1人の人間を作っていただいて、それを演じていて、ずっと感動しっぱなしでした。水橋さんの見てきたものや、人生観や世界観、笑いのセンス、すべて本当にとても好きで、演じがいがありました。また、水橋さんが生み出す人間を演じたいと思っていたんですけれど、まさかこんなに早く、しかも3人も書いていただいて演じることができるというのは自分にとっては大きな喜びでした」と回答。

その上で、今回の台本を読んで、「改めて感じたことは、水橋さんの台本は、セリフが自分の(お芝居の)準備や努力とは別のところで勝手にしみこんでいくというか…。それが何でなのだろう、と思ったときに、水橋さんの台本ってすごく“余白”があるんだなと感じました。今回だと、3人が子供のころにお世話になった近所のラーメン屋さんの若社長の話とか、お母さんのこととか、いろいろな背景がどの登場人物でも、役の上で登場しない人でもしっかり描かれていて。演じる側がそれを想像してイメージを膨らませて、水橋さんが与えてくださった設定を作り上げていかないとすごく薄っぺらいものになってしまうと思うんです。かなりハードルの高い台本で、難解なのですが、その作業を自分でやっていくことによって、ひとつひとつのセリフが、本当に自分がこの役をずっと生きて経験してきたかのようにその手助けをしてくれるんです。だからやっぱりすごい台本だなって今回、より強く感じました」と受けとめた。

■3役を入れ替わりながら演じるのは「混乱した」

今回は、一卵性三つ子役を演じているが、「設定には最初驚きましたけれど…とても難しいだろうし、かなり挑戦的な企画だなと思いましたが、やりがいを感じました。演じ方によって、できあがるものがまったく変わってくるなって感じたので、ひとつひとつ台本を読みながら膨らませていきました。でも、自分が三つ子を、3人分を演じるので、同じ顔はどうしようもない。撮影期間も短く、入れ替わりながら撮っていく中で、とにかく1人1人気持ちを込めて演じていくことを軸におきました。見てくださっている人に、掛け合いや空気感で、だんだんそこにいる3人が何となく、気がついたら別人に見えていたらいいなと。精いっぱい自分の心を込めて演じることでどこまでできるかなって」と意識したそう。

実際に演じて、「(3役を)入れ替わりながら演じていくのは、僕自身も混乱しました。台本ができてから撮影までの限られた時間で自分がどこまで膨らませられるかということが勝負だと思っていました。今回の企画で、映像作品のスペシャリストの方たちと一緒にお仕事できたということの喜びの方が大きく、とにかく楽しかったです」と振り返りながら、「あとは自分がどこまで突き詰めていけたか?というところです」と気を引き締めた。

■自分の財産になる大きな作品

また、中江監督の現場は「『教場』ではじめてご一緒して、感銘を受けたというか…。当時も話していたのですが、中江組の雰囲気、演出…映像作品の現場ってこうでないと、と思うことが多々ありました。今回もそれをより強く感じました。ものすごい分量と大変な撮影を短い時間で皆さんされていて。そんな現場が自分にとってすごくプラスで、こういう監督の元でもっと演じるべきだなと改めて思い知らされました」と回想しながら、「今回、自分なりに準備はしましたが、中江監督が『さあ、どう演じるの?』っていう感じで、どれだけ大変な状況でも俳優力が試されているというか、撮影中にセリフや芝居で失敗しそうになった時に、『中江監督の元で育った役者さんは、たぶんこんなの当たり前にやるんだろうな』っていうのがすごく自分の中にはあったんです。それがあるので、自分もどこまででもがんばれるというか、やればやるほど結果やできあがりが変わってくるんだなっていうのは感じています。今までなかなか出会えなかったタイプの監督さんなんです」と表現。

その上で、「『教場』の時に印象的だったのは、大勢のキャストやスタッフの方々がいたのですが、誰に対しても分け隔てなく愛情をもって接してくださる…とにかく人柄がすてきな方なので、今回出演者が1人で、これだけマンツーマンで演出していただけるというのは今後の自分の財産になると思いますし、大きな作品になりました」と、役者人生において良い経験になったようだ。

その中江監督は、今回は林以外のキャスティングは考えていなかったとコメントしているが、「あんなにうれしい言葉はないです。でも、プレッシャーでもあります」と本音を吐露。

そして、視聴者に向けて、「今回のドラマは、ソーシャルディタンスドラマという、なかなか挑戦的な試みをしているドラマだと思います。現場も試行錯誤で苦労しながらやっていましたし、僕自身も(放送を見るまでは)どんな映像作品に仕上がっているのか想像ができません。今の段階でのこの作品の見どころは難しいですけれど、改めて“テレビドラマっていいな”と感じていただけたら。いくらでも想像が膨らむ作品になっているので、僕自身演じさせていただいて、こんなに幸せなことはありませんでした。“またドラマを見たいな”という気持ちになっていただけたらうれしいです」と呼びかけた。

(C)フジテレビ