JR東日本は東北・上越新幹線において、従来より設備点数の少ない新型電車線設備「高速シンプル架線」を設備の老朽取替に合わせ、2020年度から順次導入する。

  • 新型電車線設備(提供 : JR東日本)

  • 現行の電車線設備(提供 : JR東日本)

「高速シンプル架線」は鉄道総合技術研究所とJR東日本が共同開発した設備で、導入によって輸送の安定性向上、高速化対応、省メンテナンス化を図ることができる。

東北・上越新幹線では、コンパウンド架線という3本の電線で構成された電車線設備をおもに使用している。新型電車線設備では、これを2本の電線で構成されるシンプル架線に変更するとともに、ちょう架線とトロリ線に新たな材料を採用することで機能向上を図った。今回開発した「高速シンプル架線」は、現在の新幹線の営業最高速度320km/hの線区にて使用可能で、さらなる高速化を図る場合は高強度で軽量なトロリ線を採用することにより、最高速度360km/hにも対応可能となる。

導入の効果としては、従来のコンパウンド架線に比べて設備点数が少なくなるため、設備に起因する故障リスクが低減し、輸送の安定性が向上するほか、高強度と高導電性を兼ね備えたPHCトロリ線などのトロリ線を採用することで張力を高め(トロリ線とちょう架線の総張力53.9kN)、高速化対応により速度向上を可能とし、架線を構成する電線を3本から2本とすることで省メンテナンス化も図られる。

耐腐食性に優れた「硬銅より線」をちょう架線に採用することで、従来の「亜鉛めっき鋼より線」と比べて取替周期が延伸され、高強度のトロリ線は耐摩耗性に優れることから、従来のトロリ線と比較して取替周期の延伸も期待できる。

導入は東北・上越新幹線のコンパウンド架線を対象とし、2020年度以降に東北新幹線上野~大宮間(架線延長45km)、東北新幹線古川~盛岡間(架線延長160km)、上越新幹線大宮~本庄早稲田間(架線延長125km)に順次導入する。それ以外の区間についても、設備の老朽度や今後の走行実績などを勘案しながら導入を検討していく。