韓国経済産業資源部(日本の経済産業省に相当)は1月15日、半導体製造に用いられるKrF、ArFなどのフォトレジストメーカーである韓Dongjin Semichem(東進セミケム)が京畿道華城市に有するレジストの量産工場の増設工事に2020年第1四半期中に着工する計画であることを明らかにした。

すでに工場の設計は完了しており、2021年初めには新工場での生産を開始する予定で、これにより韓国内でのフォトレジストの生産量は現在の2倍以上に拡大するという。

部産業通商資源部No.2の鄭升一(チョン・スンイル)次官は、同日、工場の視察を行い、「フォトレジストは、これまで日本からの輸入に依存してきたが、日本の輸出管理の厳格化後、日本からの輸入依存度を下げつつも供給の安定性を確保することを目指した対策を韓国政府は行ってきた。今回の東進セミケムのレジスト工場の増設により、フォトレジストの国内供給量が増加し、供給に対する安定性が強化されるものと期待している」と述べている。

東進セミケムは1989年、韓国メーカーとして初めてフォトレジストの製造を開始。現在は液浸ArF、ドライArF、KrF、i線レジストのほか、BARC(反射防止膜)、スピンオンカーボンハードマスク、CMPスラリーなど様々な素材を製造している。

ベルギー製EUVレジストの輸入量が11倍に増加

韓国は半導体製造用フォトレジストをほとんど日本に依存してきたが、2019年7月、日本の経済産業省が韓国への半導体レジストの輸出管理を厳格化して以降、フォトレジストの日本からの輸入を減らし、他国からの輸入や国内での生産に切り替えを図っている。

韓国貿易協会の調べによると、2019年1~6月の日本からのフォトレジスト輸入割合は全体の92%を占めていたが、7~11月ではベルギー・米国・ドイツなど、輸入国を多様化させることで日本依存度は85%まで下がったという。

その結果、2019年7~11月のフォトレジスト輸入額の前年同期比増加率は、米国(Dupont)が15.8%増、ドイツ(Merck)が66.7%増、ベルギー(RMQC)が11.3倍であったとしている。経済産業省が輸出管理を厳格化したEUVレジストの専業メーカーであるベルギーRMQCからのEUVレジスト輸入額が文字通り桁違いに増加したことは注目されるべきことであろう。サプライチェーンのグローバル化で、実際にSamsungはEUVレジストを日本から輸入できない場合はベルギーから輸入することで日本政府の規制をかわせるとしていた。

また、2020年1月9日付けで、米DuPontが韓国天安市にEUVフォトレジストの開発・生産工場を建設することを発表している。韓国政府は2021年までにフォトレジストの研究・開発に230億ウォン(23億円)の予算を投入し、国内の技術開発を支援するという。

韓国政府は、100品種の核心素材・部品・装備(装置・設備)の国産化に産業界と一体になって取り組んでおり、日本政府か輸出管理の厳格化を行っていない分野についても素材・部品・装備の国産化や海外企業誘致を推進している。

なお、1月15日発行の中国誌「新民週刊」は、今回の日韓経済摩擦によって日韓両国のどちらが大きなダメージを受けたかについて比較する記事を掲載。「韓国政府は慢性化していた対日貿易の赤字を改善する契機と捉えて国産化を推進しているのに対し、逆に対韓貿易黒字を保ってきた日本企業は輸出管理の厳格化により韓国という重要な輸出市場を失う可能性がある」と指摘している。