NHKの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』(毎週日曜20:00~)で、上白石萌歌演じる前畑秀子が、平泳ぎにて日本人女性初の銀メダル獲得という快挙! 18日に放送された第31回では、ロスオリンピックでの日本水泳チームの大躍進が描かれたが、とりわけこの回のヒロイン、前畑のデッドビートにはしびれた!

役作りで小麦色に肌を焼き、7kg増量して体を鍛え上げた上白石の勇姿はもちろん、内面の葛藤や奮闘には大いに心を揺さぶられた。ゴールした直後、「夢遊病者のようにあっけにとられた」と放心状態ながらも安堵の笑みを浮かべた前畑。上白石にインタビューし、本作にかける思いを聞いた。

  • 上白石萌歌

    『いだてん~東京オリムピック噺~』で前畑秀子を演じている上白石萌歌

――外見の作り込みや、水泳の猛練習を徹底してされたようですが、前畑秀子さんの内面についてはどんなふうに捉えて演じましたか?

前畑さんは、周りの方からすれば、その時代の星であり、特別な女の子とされていたようですが、彼女自身は本当に普通の心をもった女の子だったようです。大会直前に「勝てへん」と控室を走り回ったり、「男子選手ならこの人がかっこいいよね」と部屋で女子トークを繰り広げたりもしていて、そういう普通の一面を持っている部分にすごく共感しました。

こんなにすごい選手でも1人の人間だし、すごくプレッシャーを感じて、期待も不安もずっと胸の中に秘めながら闘っていたんだなと思うと、役への思いはどんどん膨れ上がっていきました。

――上白石さんと前畑さんとの共通点はありましたか?

私ももともと水泳が好きで、なかでも平泳ぎが一番好きだったので、水泳にかける思いや、飛び込む前の目つきの変わり方がリンクすればといいなと思って演じました。また、私も水泳を誰よりも愛そうという気持ちで練習に取り組みました。

――ロスオリンピックは、実況ではなく、いかにも目の前で見ているような“実感放送”となりました、そのやりとりがとても面白かったです。

アナウンサーの河西三省役のトータス松本さんとは、実感放送のシーンでご一緒しました。私と阿部さん、トータスさんの3人で実感放送をするんですが、トータスさんの前で、私と阿部さんが一緒に平泳ぎの真似をするシーンがあり、水をかけられたんです。実感放送なので、目の前で臨場感を出すという演出だったと思いますが、すごく面白かったです。

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――『いだてん』では、女子スポーツの黎明期が描かれますが、前畑さん自身もアスリートをずっと続けていくのか、結婚して引退するのかと悩んだりされますね。

たぶん1930年代だと、まだ女性の地位がそんなに高くないので、女学校を出たらすぐに嫁ぐというのが、普通の女性の生き方だったと思います。でも、秀子は普通じゃない扱いを受けていたし、“男女”と言われたりしてすごく胸が痛くなりました。だからこそ、日本人初のメダリストになることが、当時の女性の社会進出において大きな影響を与えたんだろうなと。また、彼女は早くに両親を亡くしているので、そういう強さや信念を持っている方だったんだろうなと思いながら演じました。

――現代の平泳ぎとはフォームが違いますが、どんな点に苦労されましたか?

本当に無我夢中でやりました。泳いでいる時、どうか自分の体力が向こうまで持ってくれ!と思ったこともあります。平泳ぎは思っていた以上に奥深くて、練習でできていたフォームが突然できなくなったりもしたし、すごく難しい泳ぎでした。手のかき方で異なる水しぶきの臨場感など、技術的なことで頭がパンパンになっていました。

――オリンピックのシーンのエキストラには、海外の元代表選手の方々なども参加されていたそうですね。

そうです。周りは海外のスイマーの方なので、体格が全然違いましたし、ひとかきの伸びやパワーも全く違いました。きっと前畑さんもそう感じてらっしゃったと思いましたし、異国の人たちへの恐怖心みたいなものを、私自身も撮影で感じていたので、本当に当時のオリンピックに参加しているような気持ちになれました。

――日本の水泳チームはすごく結束力が強かったそうですが、現場の雰囲気はいかがでしたか?

オリンピックのシーンは、ずっと水の中にいなくてはいけなかったので、体力的にも精神的にも大変でしたが、水泳選手のみなさん全員と仲良くなれたので、撮影はずっと楽しかったです。たぶんこのチームじゃなければ、泳ぎきれていなかったかもしれないと思えるくらい、日に日に絆が深まっていきました。お休みの日でも時間があれば集まったりしているし、撮影が終わってもずっと続く仲でいられたらいいなと思っています。

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■プロフィール
上白石萌歌(かみしらいし・もか)
2000年2月28日生まれ、鹿児島県出身。2011年に第7回「東宝シンデレラ」オーディションでグランプリを受賞。雑誌「ピチレモン」の専属モデルを経て、2012年に女優デビュー。主な映画出演作に『ハルチカ』(17)、『未来のミライ』(声の出演)(18)、『3D彼女 リアルガール』(18)などがあり、『羊と鋼の森』(18)では第42回日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞。ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(19)でも水泳の選手役を演じた。

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