本格的な夏の到来を目前に控えた7月11日、ダイソンジャパン本社オフィスにて「睡眠のプロに学ぶ 真夏の快眠塾」と銘打たれたトークイベントが開催された。

イベントには、講演や執筆などで幅広く活躍している快眠セラピストの三橋美穂氏と、北京オリンピック男子100mリレー銀メダリストの末續慎吾選手が登壇。今年4月に発売された同社の空気洗浄機「ダイソン ピュアクールミー」にちなみ、睡眠時における空気の重要性などについてトークセッションが実施された。

  • (左から)快眠セラピスト・三橋美穂氏と北京オリンピック陸上銀メダリスト・末續慎吾選手が登壇

夏の快眠のポイントは寝床内の温熱環境にあり

イベント前半では、三橋氏が様々なデータをもとに夏の睡眠について解説。

寝始めに深い睡眠に入り、適度な睡眠時間が取れている“良い睡眠”に対し、「寝つきが悪いと深睡眠が短くなり、眠りが浅くなって結果的に睡眠不足状態になります。夏は暑さで寝つきが悪く、何度も目が覚めやすい。ドコモ・ヘルスケア調べでは、季節別の睡眠時間は夏が一番短く、寝つきも悪くなっています」と、夏の睡眠の問題を洗い出していく。

  • 「良い睡眠」と「悪い睡眠」を比較

  • 季節別の「睡眠時間」と「入眠時間」。夏は睡眠時間が最も短く、寝つくまで時間がかかる

  • 夏は特に睡眠不足に気を付けるべし。睡眠不足時の注意力は、酒酔い状態と同じ程度まで散漫になるのだとか

三橋氏は続けて、快眠の基本ルールとして「体内時計が整っていること」「日中は活動的に過ごして疲れが溜まっていること」「体温のメリハリがあること」「就寝前はリラックスすること」「寝室が快適なこと」を挙げた。

  • 三橋氏が挙げる、ぐっすり眠るための5つの基本ルール

「中でも5番目の『寝室の環境』が夏の睡眠の一番のポイントになります。寝床内の環境は温度33℃±1℃、湿度50%±5%が理想です。33℃と聞くと暑そうですが、これは体温より少し低いくらいで、お布団に入ってぬくぬくして気持ち良く感じる時はだいたいこのくらいの温度と湿度になっているんです。温度は寝具や着衣で比較的簡単に調整できますが、湿度は季節によってばらつきがあります。夏は体温を下げるため汗をかき、汗がこもって湿度が90%近くなることも珍しくないです。特に背中が蒸れると眠りが浅くなります」

そのため、部屋の温度・湿度、気流、寝具・着衣の量、暑がり・寒がりといった体質など、寝床内の温熱環境を左右する要素を意識することが、夏の快眠のポイントだと解説する。

  • 寝床内の温熱環境はさまざまな要素に左右される

「夏の熱中症の約4割が夜間熱中症とも報告されていますので、熱帯夜は朝まで冷房をつけておきましょう。コンクリートは蓄熱しやすく、特に集合住宅はなかなか部屋が冷えないので、冷房は朝までつけておいたほうがいいです。体温は1日で1℃程の高低差があり、体温が高い寝始めは室温が低いと寝つきが良く、体温が下がる頃に冷えすぎないように少し室温を上げると、快適に一晩中眠れます。就寝1時間前から寝室を25℃前後で冷やし、就寝時に26〜28℃くらいにエアコンを設定するのがおすすめです」

また、家族と一緒に寝ている場合などは、熱放散が大きい足元もしくは頭部に微風を当てると寝床内に湿気や熱がこもらず、暑がりの人もより深い睡眠につながりやすいという。

「横向きに寝ると背中の通気性が上がります。横に向くと腕や肩の重みで胸などが圧迫されますが、抱き枕を活用したり、腕の下にクッションを置いたり、足にバスタオルを挟んだりすると、腕や足の重みが分散され脱力しやすくなって、寝つきも良くなります」

  • 微風があると汗が蒸発しやすいため、背中の湿度が上昇しない。それゆえに寝床内に湿気や熱がこもらず、深い眠りが得られるというわけだ

  • 冷房は2段階で設定しよう

選手村はなぜかベッドが小さい!?

イベントの後半には末續慎吾選手が登壇し、三橋氏とのトークセッションが行われた。

39歳となった現在も現役で「アスリートとして、体のケアに関してはサプリメントや食事など色んなことやってきたなかで、近年は睡眠にもきちんと投資するようになりました」という末續慎吾選手。神奈川県在住のため都内で仕事がある際は近場のホテルを利用することも多いらしく、「特にベッドの大きさにはこだわります。トレーニングが激しくなってくると肩やお尻に筋肉がつき、寝る時に腰だけ浮いた状態になるから仰向けになるのがつらい。ベッドが悪いと余計眠れなくなるので、ホテルに『いいベッドありますか』って聞く時もありますね」と明かし、「仰向けやうつ伏せだと呼吸が苦しいので横向きで寝るんですが、腰回りが安定しないので抱き枕も買いました。寂しがり屋というわけじゃないんですけど……」と笑顔を見せた。

  • 家にあるクッションやバスタオルなどを使い、横向きに寝て背中の通気性をアップ

さらに、「20歳から3大会連続でオリンピックに出させてもらいましたが、3大会で共通していたのは、どの国もベッドが小さい(笑)。選手村って選手にはけっこう過酷な環境で、足がはみ出てしまうところもあった」「試合前に眠れないということはなかったですけど、緊張もあって何回も起きちゃうし、夢の中でも走っちゃったりして大変でしたね(笑)。浅い睡眠だと潜在的なストレスとかも表面化しちゃうんで、深い眠りはストレス軽減にもつながるかなと思います」と、様々なプレッシャーの中で競技を行うプロ選手ならではの経験を振り返った。

  • これまで出場してきたオリンピックについて語る末續選手

この話を受け、三橋氏は「寝つきが悪い時に簡単で効果的な方法が『呼吸法』や『カウントダウン法』です。息を長く吐くことを意識しながら深呼吸を繰り返すだけでも寝やすくなります。カウントダウン法は100から順にカウントダウンしていく方法。カウントアップしていくと数えるほうに意識がいきがちですが、ゆっくりとしたテンポでカウントダウンしていくと単調で、いつの間にか眠ってしまいます」「ウエストがくびれている人はハンドタオルなどを丸めたものをウエストのところに入れて安定させると、寝やすくなります」など、具体的なアドバイスを提示。

末續選手は最後に「睡眠について普段見過ごしていたことが多かったので、今後の競技生活に活かそうかなと思います。来年40歳ですがオリンピック目指して頑張りますので、応援よろしくお願いします」と、メッセージを送った。

寝苦しい夜も増えてくるこれからの季節、こうしたポイントを参考に、少しでも快適な睡眠を実現できるよう心がけてみてはいかがだろうか。