JR東日本は9日、新幹線試験車両E956形「ALFA-X(アルファエックス)」の報道公開を新幹線総合車両センター(宮城県利府町)で実施し、10両編成の車両外観と先頭車の運転席内部を公開した。翌10日深夜から東北新幹線での走行試験を開始したという。

  • 新幹線試験車両E956形「ALFA-X」の1号車(写真:マイナビニュース)

    新幹線試験車両E956形「ALFA-X」。1号車から見た車両外観

走行試験は2022年3月までの実施が発表されている。報道公開ではJR東日本研究開発センター所長の小川一路氏がインタビューに応じ、「ALFA-X」について「2030年度に予定される札幌延伸を目標に、360km/hの営業運転をめざし、試験車両として開発を進めてきました」と説明。開発コンセプトとして「さらなる安全性・安定性の追求」「快適性の向上」「環境性能の向上」「メンテナンスの革新」を掲げ、「この4要素をもとに新技術を取り込み、最先端の車両をめざしたものとなります」と述べた。

5月から始まる走行試験に関して、「最初の3年間で基本的な性能を見極め、その後で耐久試験に入る予定」「長期間の試験となりますが、沿線地域の皆様のご理解、ご協力をいただきながら進めたい」と小川氏。質疑応答の中で、昼間の走行や東京駅へ乗入れの予定に関する質問もあったが、当面は仙台~新青森間を中心に週2回程度、営業列車の走らない深夜に走行試験を行うとのことだった。

■「ALFA-X」のデザインにSNS等でも反響

「ALFA-X」は両先頭車の形状が異なり、いずれも既存のE5系・E6系・E7系などと異なる外観デザインに。報道公開が行われた後、SNS等での反響も大きかった。「かっこいい」の声が多数を占める中、1号車の前照灯の位置に驚く人も多く、「そこにヘッドライトが付いたか」「ハンマーヘッドシャークみたい」「夜間やトンネル内でちゃんと見えるものなのかな」「雪被ったらどうするの」といった意見も見られた。

また、「次世代シンカリオン降臨」「シンカリオンに出てきそうなデザイン」「これは絶対に変形するやつだ!」「1号車が上半身に10号車が下半身に変形合体して巨大ロボになるんですよね」「すごいグランクロス発射しそう」「最近新幹線を見るたびに『この新幹線がシンカリオンになったら…』と考えます」など、現在放送中のアニメ『新幹線変形ロボ シンカリオン』にちなんだコメントも多かった。

  • JR東日本研究開発センター所長の小川一路氏。10号車の前でインタビューが行われた

一方、10号車の外観デザインに対し、「こっちはタイムボカンみある」との声も。ロングノーズのインパクトも大きかった様子で、「ノーズ部分と運転席だけで一つの車両にしてもいいくらい」「最終的に運転席とノーズだけで乗客のいない車両が走りそうな予感」といったコメントが寄せられていた。

■トンネル突入時の圧力波の抑制をめざした先頭形状に

今回公開された試験車両、E956形式新幹線電車「ALFA-X」は、JR東日本が次世代新幹線の開発を進めるための「試験プラットフォーム」として製作された。次世代新幹線では安全かつ高速な移動手段の提供に加え、新たな価値の提供もめざし、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)などを活用しながら開発を進めるという。

  • 1号車の運転室内部

  • 10号車の運転室内部

1~6号車は川崎重工、7~10号車は日立製作所が製造。1号車から「E956-1(M1c)」「E956-2(M2)」「E956-3(M1)」「E956-4(M2)」「E956-5(M1)」「E956-6(M2)」「E956-7(M1)」「E956-8(M2s)」「E956-9(M2s)」「E956-10(M1c)」となる。車体はアルミ合金製の気密構体で、車体長は先頭車26,250mm・中間車24,500mm、車体幅は3,350mm、車体高は3,700mm。重量は「平均軸重12.4tf、最大13.1tf」とされた。

外観は明るいメタリックのボディに爽快感のあるグリーンの帯を組み合わせ、清々しさを感じる色彩とし、クロス状の側帯で人々や情報が行き交う様子を表した。「ALFA-X」のロゴマークはクロス状の側帯の角度に合わせて字体を整え、文字色にグラデーションを用い、新幹線らしいスピード感などを表現している。

1・10号車で異なる2種類の先頭形状は、おもにトンネル突入時の圧力波の抑制をめざして製作された。空気力学的な最適形状のコンピュータシミュレーションによって先頭形状を決定し、走行試験では方向転換を行いながら比較検証を進めるという。

  • 1号車の前照灯は前面下部に配置

1号車は「走る姿が周りの環境と一体となって美しいと感じられるよう、自然の作りだす造形美を取り込むこと」をコンセプトにデザインされ、「削ぎ」「畝り」「拡がり」といった風の流れによって作られる要素を取り込んだ。先頭長は約16mとし、E5系と同等の室内空間を確保している。前照灯は前面下部に配置した。

10号車は環境性能を追求した約22mのロングノーズが特徴。「台車部を覆うせり出した造形」「運転士を包み込む造形」「後方に向けて滑らかにつなぐ造形」の3つの造形で構成される。前照灯は運転席の窓付近に配置した。

  • 10号車から見た「ALFA-X」の車両外観

  • 10号車は約22mのロングノーズが特徴

中間車の3号車・7号車は小型の窓を採用し、窓の形状も各号車で異なる。5号車は客室の窓がなく、クロス状の側帯と「ALFA-X」のロゴマークが際立つデザインに。8号車は客室を2つに分けた。側窓ピッチも異なり、先頭車の1・10号車と中間車の3・4・6・7号車は1,040mm、2号車は980mm、「グランクラス」のロゴマークを掲出した8号車は1,300mm、グリーン車のマークを掲げた9号車は1,160mmとされた。

今回、客室の内部は非公開だったが、当日配布された資料に一部の車内設備について説明があり、腰掛は「快適性とメンテナンス性、高速化のための軽量化の並立」をめざしたとのこと。リクライニング連動座面チルト構造の採用、脚台構造変更による足元スペースの拡大、振動抑制機能の追加などによって座り心地を向上させる一方、可能な限りシンプルな構造とすることで、軽量化と現場作業の負担軽減も図る。

  • 窓なしの車両となった5号車。クロス状の側帯と「ALFA-X」のロゴマークが目立つ

2・3号車はシートピッチを変えられる仕様に。トイレ・洗面所は1・5・9号車に設置し、5号車のトイレは真空式で車いす対応、1・9号車のトイレは清水空圧式とする。5号車に多目的室とミーティング室も設置する。なお、走行試験では各車両に測定器等を搭載。窓の大きさや有無による車両構造および客室内環境などの評価を行う。