今年3月16日に全線開業したおおさか東線。新大阪~久宝寺間を結び、大阪東部地域を走る路線というだけでなく、新大阪駅から奈良方面へ直結する新ルートとしても話題になった。今回はおおさか東線を走る直通快速についてレポートする。

  • おおさか東線の全線開業にともない、直通快速は新大阪~奈良間で1日4往復の運転に

全線開業後のおおさか東線では、新大阪~久宝寺間の普通列車(201系6両編成)を基本としつつ、大和路線(関西本線)へ乗り入れ、新大阪~奈良間を結ぶ直通快速(321系・207系7両編成)を1日4往復設定。新たな需要が期待されていた。

直通快速は平日と土休日で運転時間帯が異なる。平日は通勤・通学あるいはビジネス利用を意識し、朝は奈良発新大阪行をおおむね30分おき、夕方以降は新大阪発奈良行を1時間おきに運行。土休日は奈良発新大阪行と新大阪発奈良行をそれぞれ午前・午後に2往復ずつ運行し、奈良方面の観光利用にも対応した設定となっている。

  • 直通快速は321系の他に207系も使用される

新大阪~奈良間の所要時間は52~60分。新大阪駅、放出駅、高井田中央駅、JR河内永和駅、久宝寺駅と王寺~奈良間の各駅に停車する。なお、ダイヤ改正前まで運行された尼崎~奈良間の直通快速は、おおさか東線の全線開業にともない廃止された。

■土曜日の奈良行に外国人観光客の姿も

筆者は4月の土曜日、新大阪駅を11時17分に発車する奈良行の直通快速に乗車した。新大阪駅のおおさか東線発着ホームは1・2番のりば。同駅11時17分発の直通快速は1番のりばから発車する。関西空港駅からの特急「はるか」なども1番のりばを使用しており、11時すぎにホームへ行くと、ちょうど「はるか14号」が停車中だった。

戸惑い気味に次の列車を待つ人も見かけつつ、「はるか14号」の発車を見送ると、すぐに奈良行の直通快速が1番のりばに入ってきた。使用車両は321系7両編成。筆者は6号車に乗車する。発車までにほとんどの座席が埋まったが、立客はいない様子だった。

車内を見ると、乗客の約半数が観光客とみられ、スマートフォンで熱心に調べる外国人観光客の姿もあった。おそらく、スマートフォンの乗換案内アプリで奈良行を検索した際、この直通快速が候補として表示されたのだろう。

11時17分に直通快速は新大阪駅を発車し、しばらくJR京都線(東海道本線)と並走。JR京都線東淀川駅の横を通過し、神崎川を渡ると新設の高架線に入り、右に大きくカーブする。おおさか東線の途中駅に待避設備を持った駅がないため、「ノロノロ運転」になるかもしれないと予想したが、列車は80km/h程度のスピードで次々と新駅を通過して行った。車窓からの見晴らしも良く、じつに気持ちいい。

  • 321系の車内はロングシート(2019年2月の試乗会にて撮影)

直通快速は321系の他に207系も使用されるが、どちらも片側4ドアで車内はロングシート。トイレもない。今回は昼前の列車に乗ったためか、車内で申し訳なさそうに軽食を取る人も見かけた。この直通快速は新大阪駅11時17分発・奈良駅12時11分着で運行されるため、車内で昼食を済ますことで、効率よく奈良観光を楽しめるのだろう。

ただ、所要時間が50分以上かかることを考えると、直通快速にトイレなしの車両は少々厳しいかもしれない。諸問題あることを承知の上で言うなら、やはり221系・223系・225系といったクロスシート車(トイレあり)が向いているように感じる。

11時29分、学研都市線(片町線)の接続駅である放出駅に到着。京橋方面から同一ホームで乗り換えられることもあり、多くの乗換え客が車内に入ってきた。この放出駅に続き、高井田中央駅、JR河内永和駅と連続して停車。高井田中央駅は地下鉄(Osaka Metro)中央線の高井田駅と接続しており、予想した以上に乗降客が多かった。

続くJR河内永和駅では、片側4ドアの車両に対応したホーム柵が設置されている。この駅は近鉄奈良線の河内永和駅と接続しているのだが、乗降客は少なめだった。なお、JR俊徳道駅も近鉄大阪線との接続駅だが、直通快速は停車しない。

11時43分、久宝寺駅に到着。直通快速はここから大和路線に乗り入れ、終点の奈良駅をめざす。普通列車は201系、大和路快速など快速列車は221系を中心に運用される大和路線において、321系から見る車窓風景は少し新鮮に感じる。

その後、先行列車の影響もあり、王寺駅の手前で徐行運転を余儀なくされる。和歌山線と接続する王寺駅には11時57分に到着したが、停車時間はわずかだった。王寺駅から奈良駅までは大和路快速と同様、各駅に停車する。法隆寺駅で多数の観光客が下車した。同駅から法隆寺へはバス接続となる。

  • 直通快速の終点、奈良駅。現在は高架駅に

  • 旧駅舎は奈良市の総合観光案内所に

大和路線を快走していた直通快速だったが、奈良駅の手前で再び徐行運転を強いられる。結局、奈良駅には3分遅れの12時14分に到着した。

■直通快速のさらなる増発を望みたいが…

おおさか東線全線開業、新大阪~奈良間の直通快速の新設に合わせ、新幹線の拠点駅である新大阪駅から奈良方面のアクセス向上が盛んにPRされてきた。しかし実際のところ、東京から奈良方面はこれまで通り、東海道新幹線に乗って京都駅で近鉄京都線、あるいはJR奈良線に乗り換えるルートがわかりやすく、便利だろう。

山陽新幹線から奈良方面は複数のルートが想定される。新大阪駅で乗り換える場合、これまで大阪市内の駅でもう一度乗り換える必要があった。その点を考慮すると、新大阪~奈良間乗換えなしの直通快速は利便性を高める列車かもしれない。

とはいえ、1日4往復という運転本数はやはり少なく感じられる。新大阪駅から奈良方面の新ルートとして確立するのであれば、直通快速のさらなる増発を望みたいところ。その一方で、全線開業後のおおさか東線では、通勤時間帯を中心に列車の混雑という課題も抱え始めているようだ。待避設備に乏しい同線において、普通列車と直通快速の両方を増発することは困難に思える。今後の列車増発や使用車両のことなども含め、おおさか東線がどのような路線に成長していくのか、引き続き注目したい。