紙を折るだけのシンプルな飛行機、紙飛行機。その世界一を決定する「レッドブル・ペーパーウィングス2019」の日本代表を決定する決勝戦が、4月7日に愛知県の中部国際空港(セントレア)で開催された。

  • レッドブル・ペーパーウィングス2019

    (撮影:大貫剛)

出場する紙飛行機のルールは、大会側が用意した紙を折った飛行機であること。折るだけで、切ったり接着したりすることは許されない。用紙は、コピー用紙よりは厚くて固いが、画用紙よりは薄くて滑らかな感じの丈夫な上質紙。逆に言えばそれだけで、何の変哲もないいわゆる「紙飛行機」だ。

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  • レッドブル公式の紙飛行機用紙で、筆者も紙飛行機を折ってみた。ごく一般的な折り方だと思うが、軽く投げれば5、6mぐらいは飛ぶ (撮影:大貫剛)

部門は3つある。飛行距離を競う「ロンゲスト・ディスタンス部門」、飛行時間を競う「ロンゲスト・エアタイム部門」、そして飛行の面白さを競う「アクロバット部門」だ。このうちアクロバット部門は飛行機の用紙や作り方に制限はなく、出場方法も「インスタグラムに動画を投稿する」というもので、4月7日に投稿が締め切られた。セントレアでの日本決勝戦は前の2部門だ。

すでに全国11か所で地区大会が行われており、各地区から2部門それぞれの優勝者が決勝戦に進出。それぞれ11名の選手が日本一を競った。出場できるのは18歳以上とされているが、22名のうち20名が学生、2名が社会人で、全員が男性だった。

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  • 会場はセントレアの貨物地区にある倉庫。ディスタンス部門は扇型の頂点から、エアタイム部門は会場中央から投げる。紙飛行機大会もレッドブルの手にかかると華やかだ (撮影:大貫剛)

ロンゲスト・ディスタンス部門の優勝者は、和歌山大学4年生の芝穂乃輝さん。「小中学生の頃、チラシなどの紙さえあればメチャクチャたくさん紙飛行機を折っていた」そうだが、大学ではバスケットボール部に入部。部活で使用する体育館を紙飛行機の練習に使うことができ、和歌山大学の文化祭で行われたレッドブル・ペーパーウィングスの予選で優勝した。

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  • ディスタンス部門の競技。極限まで空気抵抗を減らした機体は、紙飛行機と言えど高速で、カメラで追うのは難しかった (撮影:大貫剛)

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  • 審判は、1人が紙飛行機の着地地点を確認して指し、2人が巻き尺で距離を測定。投げ方が規定通りかどうかを判定する審判が青旗を上げれば記録成立 (撮影:大貫剛)

芝さんが用意した紙飛行機は、一般的な折り方よりかなり細長く折ったもの。「飛行機を飛ばすというより、槍投げに近い」(芝さん)ということで、記録は34.95mだった。世界大会での優勝記録は50m台なので、出場までにさらに練習を重ね、世界トップ選手との差を詰めたいと話した。

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  • ディスタンス部門を制した和歌山大学の芝穂乃輝さん。競技順は11名中最後で、それまでの記録を破って優勝した (c)Suguru Saito / Red Bull Content Pool

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  • 芝さんの紙飛行機。翼のは幅は、筆者が折ったものの半分強だ (撮影:大貫剛)

ロンゲスト・エアタイム部門の優勝は社会人の鈴木慎一さんで、投げる前に「ぶっちぎりの記録で優勝したい」と語ったのだが、記録は2位と1.44秒差の8.25秒で、むしろ悔しさをにじませた。

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  • エアタイム部門は、ゆっくりと旋回しながら降りてくる微調整が肝心。紙飛行機を丁寧に観察して最後のチェックをする選手たち (撮影:大貫剛)

というのも、鈴木さんは2012年にも日本代表に選ばれているほどのベテランで、予選では12秒の記録を出していた。今回の会場となったセントレアの貨物倉庫は天井の梁が低く、それに当たらない高さに抑える必要があったが、やや抑えすぎたようだ。なお天井に当たっても記録は床に着くまでの時間を計測するが、バランスを崩してそのまま落ちてしまうため記録は期待できない。

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  • 長時間滑空するため、天井ギリギリへ高く投げ上げる選手たち (撮影:大貫剛)

飛行時間を長くするには「翼が大きいほど良い」とのことで、ディスタンス部門で優勝した芝さんの飛行機との違いは一目瞭然だ。2回目の出場となる世界大会で優勝すると、次の大会にも無条件で出場できるとのことで、「永世名人のようなものです」と世界チャンピオンへの意欲を語った。

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  • 優勝した鈴木慎一さん。高く上がった紙飛行機は、水平になって円を描くように、ゆっくりと8秒あまり飛行した (撮影:大貫剛)

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    鈴木さんの紙飛行機はできるだけ翼を広くとる折り方。翼の微調整の目印になるよう、線を引いている (撮影:大貫剛)

レッドブル・ペーパーウィングス世界大会は2006年から3~4年おきに開催され、今回で5回目。世界大会は5月16日~19日にオーストリアのザルツブルグで開催予定だ。今回優勝した2名に加え、アクロバット部門の優勝者が投票で選ばれ、3名がザルツブルグの決勝に挑む。

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    22名の選手から、優勝した2名の日本代表がザルツブルグ行きの招待状を勝ち取った (c)Suguru Saito / Red Bull Content Pool