日本のアクション業界関係者が一堂に会するイベント「JAPAN ACTION AWARDS 2019(ジャパンアクションアワード2019)」が6日、東京・四谷区民ホールにて開催された。

  • 「ジャパンアクションアワード2019」実行委員会委員長の辻井啓伺氏(中央)と、各部門受賞者

今年で7回目を迎える「ジャパンアクションアワード」とは、日本の映像界になくてはならない存在の"アクション""スタント"分野の一般的認知度の向上を目指して2013年に第1回が開催された日本アクション界における恒例のビッグイベントである。

対象作品は2018年に劇場公開、テレビ放映、ネット配信などが行われた映像作品全般となり、それらの中から「優秀作品賞」「アクション監督賞」「アクション男優賞」「アクション女優賞」「優秀スタントマン賞」が選ばれた。受賞作品、受賞者は以下。

優秀作品賞
優秀賞『今日から俺は!!』
優秀賞『銀魂2』
優秀賞『斬、』
最優秀賞『精霊の守り人 最終章』
優秀賞『散り椿』
アクション監督賞
優秀賞 園村健介『MANHUNT』
優秀賞 田渕景也『今日から俺は!!』『銀魂2』
最優秀賞 舟山弘一『精霊の守り人 最終章』
優秀賞 横山誠『牙狼<GARO>KAMINOKIBA』
優秀賞 吉田浩之『孤狼の血』『響―HIBIKI―』『ギャングース』『ニセコイ』
アクション男優賞
優秀賞 池松壮亮『斬、』
最優秀賞 岡田准一『散り椿』
優秀賞 小栗旬『銀魂2』
優秀賞 吉川晃司『精霊の守り人』『都庁爆破』
優秀賞 福士蒼汰『BLEACH』『曇天に笑う』
アクション女優賞
優秀賞 綾瀬はるか『精霊の守り人 最終章』
優秀賞 杉咲花『BLEACH』
最優秀賞 清野菜名『今日から俺は!!』
優秀賞 橋本環奈『今日から俺は!!』『銀魂2』
優秀賞 本田翼『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』
優秀スタントマン賞
優秀賞 荒川真『MANHUNT』
優秀賞 岩上弘数『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後ノ審判』
優秀賞 大島遥『精霊の守り人 最終章』
最優秀賞 岡本正仁『LIFE!スペシャル 忍べ!右左エ門 』
優秀賞 栗田政明『BLEACH』『いぬやしき』
優秀賞 高岩成二『仮面ライダービルド』
優秀賞 竹内康博『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』
優秀賞 HAYATE『銀魂2』
優秀賞 藤井祐伍『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後ノ審判』
優秀賞 矢島一憲『MANHUNT』
特別功労賞
宇仁貫三
日下秀昭
鈴木美潮

  • 優秀作品賞として『今日から俺は!!』『銀魂2』の2作品が選ばれた福田雄一監督

  • 優秀作品賞に選ばれた、池松荘亮の剣技が冴える『斬、』の塚本晋也監督

  • 最優秀作品賞の栄誉に輝いたNHKドラマ『精霊の守り人 最終章』の一色隆司監督

  • 優秀作品賞のプレゼンターとして登壇したのは、『闘え!ドラゴン』『Gメン'75』などで超絶空手アクションを披露し、倉田プロモーションを率いて多くの後進を輩出した伝説のアクションスター・倉田保昭氏

  • 『牙狼<GARO>』シリーズで特撮ファンにおなじみのアクション監督・横山誠氏は、劇場映画『牙狼<GARO>KAMINOKIBA』でアクション監督賞を受けた

  • 『今日から俺は!!』『銀魂2』でアクション監督賞を受けた田渕景也氏は、配信ドラマ『仮面ライダーアマゾンズ』(シーズン1、シーズン2)でのバイオレンスアクション演出が記憶に新しい

「アクション監督賞」のプレゼンターを務めた谷垣健治氏は、「ジャパンアクションアワード」実行委員会副会長を務めている。谷垣氏は「一般的には『アクション監督って何をするんですか?』と言われることがあり、まだまだ認知度が足りていない。どんな現場でも、時間のない中ですごく繊細な作業をギリギリでやっているが、我々がどんな苦労をしているか、現場のスタッフたちにも理解してもらえれば……」と、映像作品の大きな見せ場ともいえるアクションシーンが、アクション監督たちによっていかに緻密に作り上げられているかを語り、目の肥えたファンたちに向けて「アクション監督目当てで映画を観てほしい」と呼びかけた。

『精霊の守り人』シリーズで3年連続アクション監督賞を受けたアクション監督・舟山弘一氏だが、2018年11月19日に42歳という若さで惜しくもこの世を去った。アクション監修を務めた辻井氏が舟山氏の写真パネルを持ち、受賞の盾は舟山夫人が受け取った。辻井氏は「フナ(舟山氏の愛称)は『これ、僕にやらせてくれませんか』と言って、憑りつかれたように『精霊の守り人』のアクション演出に没頭していた。今思えば、作品にかける強い思いがあったのかな……」と、ときおり声をつまらせながら舟山氏を偲んだ。今回『精霊の守り人 最終章』で舟山氏は、最優秀アクション監督賞の栄誉に輝いた。

「アクション男優賞」のプレゼンターとして登壇したのは、第5回で最優秀アクション男優賞を受けた俳優の山口祥行。山口は「以前の俳優はアクションといったら難しいもの、できないものという印象が強かったが、最近の俳優はアクションができなくてはいけない時代になってきた。アクション監督の指導レベルも上がってきて、俳優にアクションやスタントを"好き"にさせる能力が高くなった」と、近年、テレビドラマや映画で活躍する若手人気俳優たちが果敢にハードなアクションに挑戦し、それらを見事にこなす状況にアクション業界の総合的なレベルアップを感じていると語った。

アクション男優賞の受賞者からは、池松荘亮、小栗旬、吉川晃司の3名が映像メッセージを贈っており、会場を盛り上げた。最優秀アクション男優賞は『散り椿』の主演・岡田准一が獲得している。

「アクション女優賞」のプレゼンターとして登壇したのは、『デッド寿司』で第1回アクション女優賞・最優秀賞を獲得した女優の武田梨奈。今回のアクション女優賞は、『精霊の守り人 最終章』の綾瀬はるか、『BLEACH』の杉咲花、『今日から俺は!!』の清野菜名、『銀魂2』『今日から俺は!!』の橋本環奈、『絶対零度~未然犯罪潜入捜査』の本田翼という今をときめく面々。綾瀬はるか、橋本環奈からは映像によるメッセージが贈られた。みなそれぞれ、男性にも負けないダイナミックなアクションで観る者を圧倒したが、そんな中で最優秀アクション女優賞には清野菜名が選ばれた。『今日から俺は!!』の福田監督が清野の代理として賞を受け取り、喜びをあらわにしていた。

途中、休憩をはさんでJAE(ジャパン・アクション・エンタープライズ)のメンバーによる演武が行なわれた。

「優秀スタントマン賞」には、『MANHUNT』の荒川真、『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後ノ審判』(アマゾンアルファ)の岩上弘数、『精霊の守り人 最終章』の大島遥、『LIFE!スペシャル 忍べ!右左エ門 』の岡本正仁、『BLEACH』『いぬやしき』の栗田政明、『仮面ライダービルド』の高岩成二、『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(ルパンブルー)の竹内康博、『銀魂2』のHAYATE、『仮面ライダーアマゾンズTHE MOVIE 最後ノ審判』(アマゾンオメガ&アクション監督)の藤井祐伍、『MANHUNT』の矢島一憲、以上10名が選ばれた。

栗田は『いぬやしき』で木梨憲武のスタントダブル(吹き替え)を担当した際、「上半身裸で戦っているので、サポーターを入れることができなくて痛かった」と苦労話を語った。

HAYATEは登壇直後に得意のブレイクダンスを披露し、MCを含めて会場全体の度肝を抜いた。スタント・アクションもブレイクダンスも少年時代から続けている年季の入った腕前であるという。

矢島一憲は、ジョン・ウー監督作品『MANHUNT』でチャン・ハンユーのスタントダブルを務めた。スクリーンにはアクションメンバーで作ったVコン(映像コンテ)の模様が映し出され「段ボールなどでダミーの壁を作ったりして、子どもの遊びみたいですけれど、ちゃんと血のりも飛び出していますし、アクション監督と我々が"見せたい"という要素を監督にぶつけた」と、スタント・アクションのプランを映像コンテとして緻密に作り上げることにより、監督とイメージを共有してシーンを採用してもらえると説明。ただし「たくさん作ったけれど、けっこう削られましたね」と、せっかくのアイデアもすべて活かされるとは限らないと苦笑した。

優秀スタントマン賞のプレゼンターは、第2回において『藁の楯』で最優秀賞を獲得した野呂真治が務めた。今回の最優秀スタントマン賞は、『LIFE!スペシャル 忍べ!右左エ門 』の岡本正仁の手に輝いた。岡本は映像メッセージにて、受賞の喜びを語っていた。

最後に、『鬼平犯科帳』『御家人斬九郎』『居酒屋兆治』『夜叉』など多くの作品で52年間も殺陣・疑闘を手がけた殺陣師・宇仁貫三氏(2019年1月10日物故)、『電子戦隊デンジマン』(1980年)のダイデンジンから『快盗戦隊ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年)まで、巨大ロボットの演技をこなした俳優・日下秀昭、そして読売新聞記者であり、特撮ヒーロー作品で活躍した俳優やスタントマンたちのトークイベント「340presents」を年に30回以上も開催し、アクション界の一般アピールに多大な貢献を果たした鈴木美潮氏それぞれに、「特別功労賞」が贈られた。

宇仁氏への賞は、宇仁氏に長年師事してきた円堂耕成氏が受け取った。

『重甲ビーファイター』(1995年)のブルービートや、『特捜戦隊デカレンジャー』(2004年)のドギー・クルーガー、『烈車戦隊トッキュウジャー』(2014年)のグリッタ嬢など、多くの作品で活躍している日下。巨大ロボット役こそ"勇退"となったが、「できることはやります。引退じゃありませんよ。まだまだがんばります」と、現役続行宣言を行って客席のファンを沸かせた。

巨大ロボットの思い出は?という問いに日下は「もう『デンジマン』のときの最初の3日間の辛さですね。3日も体がもちませんでした。ロボットの中に入ると、動けないし、外が見えないし、苦しいし……。すぐやめようと思っていたのですが、『次も頼む』と言われて、そのまま続けていきました」と、最初のロボット・ダイデンジンの時点からロボット演技は非常に困難で苦しいものだったことを明かした。続けて日下は「ダイデンジンの特撮監督は、ウルトラマンなどで有名な佐川和夫さんで、すごくどなられましたよ。『こうやるんだ!』とポーズをつけてもらって、どうにかそれを真似して演じていました」と、厳しい特撮監督の指導に泣かされたと、当時をふりかえっていた。

巨大ロボットのアクションが過酷すぎるため、日下は「ちゃんと芝居のできる役柄と並行してなら……」と思い、自身にとって2作目となる『太陽戦隊サンバルカン』(1981年)からは、サンバルカンロボと同時に機械帝国ブラックマグマのヘルサターン総統役を引き受け、"悪"の芝居を思いっきり行うことにしたという。ヘルサターン総統は、幹部のヘドリアン女王役・曽我町子氏とのユーモラスなかけあいや、機械帝国の支配者としての威厳に満ちたたたずまいなどの魅力で、人気キャラクターとなった。

  • ダイデンジンのファイティングポーズを再現

同じく「特別功労賞」の鈴木氏は、「特撮ヒーローのイベントも昨年で15周年を迎えました。もともとこういったイベントを始めようとしたきっかけは、大好きな特撮ヒーローと、それに関わる人たちのことを広く世に知らしめたいという思いから」と、幼少期から愛してやまない特撮ヒーローたちへの熱きリスペクトの精神が、年間30回以上のイベントを手がける原動力になっていると話した。そんな鈴木氏の著書『昭和特撮文化概論 ヒーローたちの戦いは報われたか』(集英社)がこのたび文庫化され、現在好評発売中である。さらには、次回作として「スーツアクター」にスポットを当てた書籍の取材・執筆を進めているという。鈴木氏の「特撮ヒーローを支える"作り手"たち」の業績を称える活動に今後も注目したいところだ。

最後に、実行委員長の辻井啓伺氏が登壇し「アクションってこんなに面白いんだ! ということを、もっと一般の方たちに広めたい。そんな思いでジャパンアクションアワードを企画したのが、7年前のことでした。まだまだ試行錯誤で、面白い催しを見せられるかどうか、いつも考えながらやっています。会場にお集まりのみなさんからのご協力なくして、スタントマンの将来はないと思っています! これからもスタントマンの地位向上のため、優れたアクション技術を多くの人々に広めるため頑張っていきたいと思います」と挨拶を行って、盛りだくさんのイベントをしめくくった。