フジテレビのドキュメンタリー枠『ザ・ノンフィクション』(毎週日曜14:00~ ※関東ローカル)で、3日に放送された「新・漂流家族」に大きな反響が集まっている。“ビッグマミィ”ことタレントの美奈子と結婚し、いきなり大家族の父親になった元プロレスラー・佐々木義人さんの奮闘・苦悩を追ったもので、波乱の展開の連続に、SNSでは「くぎ付けになった」「テレビ放送史に燦然と輝くような名作」といった声が上がった。

そこで、演出・撮影を行った東信幸氏(ゼロクリエイト)にインタビュー。2011年から美奈子一家を見守り、「家族みたいな感じ」という距離で接してきた東氏に、今回の密着で感じたこと、義人さんの印象、そして、あす10日に放送される「後編」の見どころなどを聞いた――。

  • 美奈子(左)と夫の佐々木義人さん

    美奈子(左)と夫の佐々木義人さん=『ザ・ノンフィクション 新・漂流家族 後編』より (C)フジテレビ

■再婚の知らせにビックリ

――まずは美奈子さんとの出会いから伺わせてください。

『痛快!ビッグダディ』で、“ビッグダディ”林下清志さんと結婚した美奈子さんが小豆島に移住してきたとき(2011年)に初めてお会いさせていただきました。大家族と大家族が合体して一緒に暮らしていくというドキュメンタリーを撮る中で、子供たちの名前を覚えたり、美奈子さんってどういう人なんだろうって探りながら、最初は林下さんの家族との違いうところで取材をさせていただいて、今に至る感じですね。

――『ビッグダディ』の放送が終了して約5年が経過しましたが、その後も交流は続いていたんですか?

そうですね。僕らは基本的に子供たちとも家族みたいな感じなんです。一緒にご飯に行ったりボウリングに行ったり、なにかあったら電話もかかってきますし、年が明けたら「明けましておめでとう」って言いながら「今どうなの?」みたいな話をして、親交させてもらっています。

――家族のような立場から、義人さんとの結婚を聞いたときはどんな気持ちでしたか?

ビックリしましたよ! 小豆島で離婚したとき、これだけの家族を抱えて次に再婚なんてできるのかなって心配だったんですけど、ご縁があったんでしょうね。新しい旦那さんがプロレスラーだと聞いて、小豆島でも林下さんがプロレスラーと交流があったので、そのつながりで出会ったのかなと思ったりもしました。

■とにかくピュアな義人さん

東信幸
1975年生まれ、愛知県出身。京都産業大学卒業後、テレビ制作会社に入社。その後、制作会社・ゼロクリエイトに入社し、『痛快!ビッグダディ』『イチから住~前略、移住しました~』(いずれもテレビ朝日)など、ドキュメンタリー番組を中心に手がける。

――今回の主人公は美奈子さんではなく、夫の義人さんにされましたが、その狙いはなんですか?

美奈子さんは、“ビッグダディの元嫁”という感覚で、今まではバラエティチックに扱われてきた部分があるじゃないですか。でも、今回は『ザ・ノンフィクション』という枠なので、苦労しながら頑張ってる方がフィーチャーされるべき番組にしたいと思ったんです。美奈子さんと結婚されて、幸せの一方、苦労とかいろんな深層心理の中で悩んでることもあるんじゃないかなと思い、旦那さんを主人公にしてみたらどうなんだろうと。一方で、美奈子さんもビッグダディから離れて5年がたって歳を重ねて、義人さんと出会って考え方も変わってきたのではないかと思い、義人さんを主人公にしたら、何か違う部分が見えてくるんじゃないかなと思ったんです。

――義人さんは密着のカメラにすぐ慣れましたか?

意外と早く慣れてくれましたね。義人さんはカメラの前でもカメラが回ってないときでも同じ感じで対応してもらえるので、僕らもスッと入ることができました。

――ワイシャツ1枚にパンツ一丁でウロウロしてるシーンもありました(笑)

あの辺が義人さんの感覚としてすごいなと思いました。もともとプロレスラーだったので、人に見られるのは慣れてる部分もあるのかもしれないですけどね。今回はドキュメンタリーというところで、初めて義人さんを見る人は「こんな人なんだ」と知って、ファンだった方も「あのプロレスラーの佐々木義人が今こういう暮らしをしてて、こういう性格の人だったんだ」と知ることができるシーンがたくさん撮れたかなと思います。

――私はもともと義人さんを知りませんでしたが、喜怒哀楽の感情が激しくて、熱血で、キャラクターとしても面白い人だなと思いました。

とにかくピュアなんですよ。純粋で思ったことを口にしたりとか、昭和のお父さん的で熱い男だなっていうのはすごく思いましたね。

  • 現在はバスの運転手として働く義人さん (C)フジテレビ

■子供たちの成長にも注目

――これまで美奈子さんは結婚生活が長続きせず、長男の星音(しおん)君も「どうせ1年か2年経ったらまた離婚するんだろう」と言っていましたが、東さんから見て、義人さんとは長続きしそうですか?

今、美奈子さんは、生き生きしてるんですよ。当時は、相手が10歳以上年上で言いくるめられたりした部分もあったようなんですけど、今は逆に義人さんを手に乗せて操作してるというか(笑)。そこがうまくマッチングしていて、美奈子さんにとってはすごくいい旦那さんだなぁ、お似合いのカップルだなぁと思いますね。

――本音と本音をぶつけ合って怒鳴り合ったと思ったら、次の日はすぐ仲直りしてますよね(笑)

そうなんですよ(笑)。あの繰り返しだから、怒鳴り合うことでストレスを発散してる部分もあると思いますね。たしかに激しい言い合いになるんですけど、次の日にはケロッとして「あぁ、もう仲直りしたよ」っていう感じで引きずらないので、あの夫婦はたぶん長続きするんじゃないかなって思います。

――前編で美奈子さんが「今が一番平和!」とおっしゃっていたのが印象的でした。

今までは暮らしも豊かではなく、清潔感もあまりない生活をしていたんです。でも、義人さんが掃除好きということで、それに美奈子さんや子供たちが反発する感じになってるんですけど、今は美奈子さん自身もきれい好きになって、それが以前の生活とは大きく違いますよね。子供たちもやっぱりきれいなところで生活して、気持ち良いと思いますし。

  • 『ザ・ノンフィクション 新・漂流家族 後編』(フジテレビ、2月10日14:00~ ※関東ローカル)
    “ビッグマミィ”こと美奈子と結婚し、10人の大家族の大黒柱となった佐々木義人さん。正義感の強い性格が裏目に出て、特に思春期を迎えた長男・長女への教育方針や、接し方などを巡って、美奈子とぶつかってばかりだ。そんな中、美奈子はマタニティーブルーの毎日。気遣って献身的に尽くす義人さんだったが、再び家出をしてしまう…。(C)フジテレビ

――美奈子さんの変化も注目ですが、5年経った子供たちの成長も見どころですよね。

特に長男の星音、長女の乃愛流(のえる)に関しては、変化が大きいですよね。星音は『ビッグダディ』のときはすごく内向的な子で、4つも5つも年上の林下さんの兄弟たちとうまくいかず、萎縮して“泣き虫の星音”というイメージだったんですけど、5年たって身長も伸びて「自由が欲しい」なんて、当時からは想像できないようなコメントが出てきて、あぁやっぱり彼なりに大人になったんだなって思いましたね。今、多感な時期に新しいお父さんが入ってくるというで、葛藤があるのは当然だと思いますが、後編では「家族と縁を切る」なんて衝撃的なことも言うので、ちょっと驚きました。義人さんは、乃愛流ともコミュニケーションで苦労してますし、そこはこれからも悩んで生きていかなければならないでしょうから、頑張ってほしいなと思います。