西武鉄道の新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」が2019年3月にデビュー。池袋線・西武秩父線の現行の特急車両10000系「ニューレッドアロー」を置き換え、特急「ちちぶ」「むさし」で運行開始する。

  • 西武鉄道の新型特急車両001系「Laview(ラビュー)」。2019年3月から池袋線・西武秩父線の特急列車で運行開始を予定している

「ラビュー」の導入後も、停車駅・特急料金ともに現行の特急列車と同様だという。「ニューレッドアロー」の登場から早いもので20年以上経つが、「ラビュー」の導入に向けて現在の池袋線・西武秩父線の利用状況や利便性・快適性、チケットの購入方法などに課題がないか気になった。そんな中、11月下旬に横瀬車両基地でイベントを取材する機会があり、現状と課題を探るべく、池袋線・西武秩父線の特急列車に乗車することにした。

ネット予約も池袋駅での発券も少し手間取る

池袋線・西武秩父線の特急列車はインターネット予約サービスを利用して特急券を事前購入することも可能。西武鉄道では「チケットレスサービス Smooz」と「インターネット予約サービス」の2種類があるようだ。

試しに「チケットレスサービス Smooz」を利用してみたところ、登録を済ませて座席を指定する際、デポジットを請求された。このサービスでは、あらかじめデポジットを払っていないと座席指定サービスを受けることができないようだった。おそらく西武線沿線に住み、西武鉄道の特急列車・有料座席指定列車を頻繁に利用する人たちに向けたサービスなのだろう。そんなことを考えつつ、もう一方の「インターネット予約サービス」を利用してみる。こちらは簡単に指定席を予約することができた。

乗車当日、池袋駅で特急券を発券する際も少し手間取った。IDとパスワードを数字で控えていないと、券売機から発券できないという。予約番号が必要かと思いきや、サービスのIDとパスワードというのは意外だった。予約番号は窓口で発券する際に必要とのこと。なんとか券売機で特急券を発券できたものの、筆者が購入した場所には特急券を発券する券売機が1台しかなく、列ができて後ろの人を待たせてしまわないか心配だった。

運賃は交通系ICカードで支払うことにし、改札機にタッチして通り抜ける。改札内では特急券を発券する券売機が複数あり、ここで発券すれば良かったのか……と悔やむばかり。西武線の特急列車の場合、改札内に入ってから「ちょうどいい時間に特急があるし、乗ろうか」という乗客のほうが多いのかもしれない。

池袋駅の特急専用ホームには売店がなく、改札内にあるコンビニで飲み物などを調達する。西武線のコンビニといえば、西武鉄道とファミリーマート(旧セゾングループ)が提携した「TOMONY」だ。もし特急列車の車内で少し気の利いたものを楽しみたいなら、乗車前に西武百貨店のデパ地下などで買っておくということになるのだろう。

下り「ちちぶ」飯能駅から座席は後ろ向きのまま

特急専用ホームに池袋駅9時30分発の特急「ちちぶ9号」が入線。現行の特急車両10000系「ニューレッドアロー」は1993(平成5)年にデビューし、新宿線の特急「小江戸」に導入された後、池袋線・西武秩父線の特急列車でも活躍するようになった。新型特急車両「ラビュー」の導入で活躍の場が減るのはもったいないと感じるのだが、新宿線では今後もしばらく現行車両が使用されるのだろうか。また、増発列車などで「ニューレッドアロー」が使用されることにも期待したい。

  • 池袋駅から特急「ちちぶ」に乗車し、西武秩父駅へ

「ちちぶ9号」の車内は秩父観光のための乗客でほぼ満員の様子。まだ朝だというのに、お酒を飲み始める人が多い。列車は定刻に池袋駅を発車。高架複々線となった練馬~石神井公園間では快適な走りを見せる。所沢駅、入間市駅に停車した後、10時10分に飯能駅に到着。特急「むさし」ならば、ここが終点である。

飯能駅はスイッチバック駅の構造となっており、ここから進行方向が変わる。おそらく多くの乗客がいすの向きを変えるのだろうと思っていたら、誰も変えない。飯能駅発車後も座席が後ろ向きのまま、車内でのひとときを過ごすことになる。

飯能~西武秩父間は勾配線区であり、スピードも上げられない様子。そんな中、進行方向と反対の向きに座っていると、少しばかり酔う。吾野駅から西武秩父線となり、車窓から渓流が見え、いっそう山岳路線の趣を増してきた。はたしてこの勾配と曲線の連続はいつまで続くのか。さらにはトンネルも増えていく。

全長4,811mの正丸トンネルを過ぎると秩父エリアに入る。西武秩父駅のひとつ手前、横瀬駅に10時43分に到着し、ここで筆者は下車。イベントの取材へと向かった。

上り「ちちぶ」西武秩父駅から座席が進行方向が反対に

イベント取材を終えた後、横瀬駅から西武秩父駅へ移動。上り「ちちぶ」に始発駅から乗ることにする。西武秩父駅は昨年3月にリニューアルされ、秩父の名物を楽しめるフードコート、秩父の名産品を購入できるお土産店、さらに入浴施設「西武秩父駅前温泉 祭の湯」もあり、約1時間間隔の特急列車を待つ間も秩父の魅力を味わえるようになっている。ただし、西武秩父駅も特急券の券売機が少ないように感じられた。

  • 帰りは西武秩父駅から特急「ちちぶ」に乗車

西武秩父駅から乗車した列車は、同駅12時25分発の特急「ちちぶ26号」。まだ正午すぎで秩父観光を終えるには早い時間帯ということもあってか、乗客は少ない。飯能駅で進行方向が変わることを前提としているようで、車内の座席は進行方向と反対の向きにセットされていた。

「ちちぶ26号」は定刻に西武秩父駅を発車し、横瀬駅に停車した後、正丸トンネルへ。トンネル内の信号所で列車交換が行われた。下り勾配の区間では抑速ブレーキを効かせ、山岳区間を下っていく。やはり、進行方向と反対の向きに座っての下り勾配は酔う。正直なところ、飯能駅までは進行方向と同じ向きに座席をセットしたほうが良いのではないかと感じた。

飯能駅で進行方向を変え、入間市駅・所沢駅に停車して池袋駅へ。所沢駅からは一般の列車の運行も多く、なかなかスピードを出せない。走りとしては快適であるものの、JR中央線の立川駅以東を走る特急列車と似たもどかしさを覚える。13時44分、池袋駅に到着した。

「ラビュー」には「快適な移動」を期待したい

特急「ちちぶ」では小田急ロマンスカーのような車内販売が行われていなかった。近年、特急列車の車内販売は縮小傾向にあり、駅の商業施設やコンビニなどでカバーすることも可能なので、仕方ないことではある。「ニューレッドアロー」の車内には自動販売機もあった。ただ、やはり車内販売があれば……ということは乗っていて考えた。

速達性については、もっとスピードを上げたいとしても、他の多数の列車もダイヤを変える必要があり、新型特急車両だけに期待することは困難だろう。運行頻度に関してはいまのままで問題ないと思う。多くの日で池袋駅から飯能駅まで30~60分間隔、西武秩父駅まで毎時1本程度の運転であり、このパターンを変える必要はないだろう。

問題は車両そのものというより、インターネット予約サービスのちょっとした使いにくさなど、ソフト面にあるように思う。チケットレスサービスを導入するならば、デポジットではなくクレジットカードで購入できるようにするなど気軽さも必要ではないだろうか。おそらく、普段は満員になることが少なく、駅の指定席券売機で当日買って乗るという人が多いのだろう。ただ、行楽シーズンになるとそうもいかない。繁忙期と閑散期の需要の差で利便性のあり方も変わってくる。このあたりをどうするかが課題ではないか。

  • 新型特急車両001系「ラビュー」は日立製作所笠戸事業所にて製造され、10月末に第1編成が出場。山陽本線・東海道本線などを経由して輸送された

  • 第1編成は各種試験を経て、ビジネス・観光型の特急列車として営業運転を開始する予定

新型特急車両「ラビュー」に期待したいことは「快適な移動」そのものである。座り心地の良いシートで秩父への旅を楽しめるようになるはず。大型窓から山岳区間の景観をより楽しめるようになることも確実だろう。それだけに、飯能~西武秩父間で座席の向きを変えにくく、進行方向と反対が当たり前のような雰囲気になっているのはどうにかならないものかと思う。利用者の自発的な行動も必要で、悩ましい問題ではあるのだが……。