『仮面ライダークウガ』(2000年)から始まる「平成仮面ライダーシリーズ」の20作目を記念した『仮面ライダージオウ』(2018年)では、平成仮面ライダーそれぞれの"時代"をめぐる仮面ライダージオウ/常磐ソウゴ(演:奥野壮)の物語が描かれている。

50年後の未来でソウゴが「最低最悪の魔王」=オーマジオウとして君臨するという運命を知っている仮面ライダーゲイツ/明光院ゲイツ(演:押田岳)は、まだ魔王に変貌する以前のソウゴを倒すべく、未来からタイムマジーンに乗ってやってきた。しかし、歴史改変を企てるタイムジャッカーが作り出した「アナザーライダー」を打ち破るためとはいえ、ゲイツは倒すべき相手であるはずのジオウと手を組んでしまうことが、しばしばある。果たしてソウゴは魔王になるという運命を自らの手で変え、本来の目標である「最高最善の王」になることができるだろうか。そしてゲイツとソウゴの関係は、今後どうなっていくのだろうか……。

平成仮面ライダーシリーズにおいて、仮面ライダージオウ、仮面ライダーゲイツのように性格の異なる仮面ライダー同士が共通の敵との戦いを通じて、少しずつお互いのことをわかりあったり、反対に激しく反発しあったりするケースは多い。彼ら仮面ライダーたちの本気のぶつかりあいが、熱きドラマを生み出していくのだ。

『平成仮面ライダー20作記念 仮面ライダー平成ジェネレーションズ FOREVER』の公開(12月22日)を記念し、平成仮面ライダーシリーズを振り返る企画の第7回として取り上げる『仮面ライダーカブト』(2006年)では、このような濃密な個性を秘めた複数の仮面ライダー同士が織り成すスリリングかつエキサイティングなキャラクター群像劇が大きな魅力となっている。

『仮面ライダーカブト』は、2006(平成18)年1月29日から2007(平成19)年1月21日まで、テレビ朝日系で全49話を放送した連続テレビドラマである。平成仮面ライダーシリーズの7作目であると同時に、1971(昭和46)年に放送された『仮面ライダー』から数えて35年という節目の年でもあるため、第1話冒頭には「仮面ライダー生誕35周年記念番組」というクレジットが掲げられている。

前作の『仮面ライダー響鬼』(2005年)は特撮ヒーロー作品の「完全新生」を目指して、意識的に従来の「仮面ライダー」的要素を"排除"し、ヒーローの外見や戦闘スタイルに斬新な要素を取り入れて視聴者アピールを図った。これに対して、『仮面ライダーカブト』ではふたたび「仮面ライダーの魅力とは何なのか」という部分を正面から見つめ直し、ド直球・王道の「仮面ライダー」像を築くべく、企画が進められた。

仮面ライダーカブトのデザインモチーフは、その名のとおりカブトムシ。かつてカブトムシをモチーフにしてデザインされた仮面ライダーには『仮面ライダーストロンガー』(1975年)や『仮面ライダー剣』(2004年)が存在しているが、カブトは両者のカブトムシ要素(大きくそびえたツノ、上半身をガードするプロテクター)を継承しつつ、いっそうの力強さとメカニカルな部分を強めてデザイン、造形が施された印象がある。

『仮面ライダーカブト』が放送されていた2006年初旬は、「仮面ライダー」と並び立つ東映の人気シリーズ「スーパー戦隊」の30作を記念した『轟轟戦隊ボウケンジャー』の他に、東宝の「超星神シリーズ」第3弾『超星艦隊セイザーX』、円谷プロの『ウルトラマンマックス』『ウルトラマンメビウス』および『生物彗星WoO』、松竹の『魔弾戦記リュウケンドー』など、子どもをメインターゲットにした実写特撮作品が数多く製作・放映されている「テレビ特撮」が活況を見せた時期であった。そんな中で、テレビ特撮のトップランナーとして長年突っ走ってきた「仮面ライダー」シリーズとしては、これまで以上に「圧倒的な強さ、カッコよさ」を感じさせてくれるヒーローを創造することにより、並み居るライバル作品を迎え撃つ気構えを見せたのだ。

『仮面ライダーカブト』の第1話は、放送時から7年前となる1999年の東京・渋谷に宇宙から巨大隕石が落下し、街が一瞬にして瓦礫の山になったところから幕を開ける。それから7年、隕石に乗ってやってきた地球外生物「ワーム」は、人間の姿と記憶をコピーして"擬態"となり、コピー元の人間を殺して入れ替わるという侵略活動を行い、すでにかなりの数のワームが人間社会に潜伏するようになっていた。これらワームの脅威から人類を救うべく秘密裡に組織された「ZECT」では、戦闘チーム・ゼクトルーパーを擁してワーム撃滅にあたらせているほか、驚異的な戦闘能力を持つ「マスクドライダーシステム」を開発していた。マスクドライダーの力を使うためには「ゼクター」と呼ばれる昆虫型メカに選ばれる「有資格者」にならないといけないが、カブトゼクターはZECTの加賀美新(演:佐藤祐基)ではなく、自らを「天の道を往き、総てを司る男」と称する不敵な青年・天道総司(演:水嶋ヒロ)の手に渡った。天道はカブトゼクターをベルトに装着して仮面ライダーカブトに変身し、ワームとの戦いに挑んでいく。

仮面ライダーカブトに変身する天道総司は、語学、スポーツ、料理、芸術などあらゆる分野で優れた才能を発揮する男。「俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する」などというセリフを平然と言ってのける態度の大きさが彼の特徴であり、時折他人を見下すようなそぶりを見せる一方で、弱い者をいたわる優しさをも持ち合わせている。祖母の教えを大事にしていて、事あるごとに「おばあちゃんが言っていた……」という前置きでさまざまな「名言・格言」を語り、周囲の空気を瞬時につかんでしまうことが多い。