Appleは、9月21日のiPhone XS/XS Maxの発売に続き、10月26日にiPhone XRを発売する。間隔を空けて新モデルを発売するのは、2017年のiPhone 8とiPhone Xにならった戦略だが、先にハイエンドモデルを出す点が昨年とは異なる。

  • すでに販売が始まっている6.5インチのiPhone XS Max(左)と、10月26日に登場する6.1インチのiPhone XR(右)。Liquid RetinaディスプレイのiPhone XRも縁まで攻めているが、有機ELのSuper Retinaディスプレイを備えるiPhone XS Maxと比較すると、縁から画面までの幅は大きい

iPhone Xは「次世代スマートフォンのコンセプト」として、iPhone 10周年に間に合わせる形で2017年に発売した。2018年は、そのコンセプトを新規発売のiPhone全モデルにて起用するというゴールがあり、昨年のiPhone Xのサイズを踏襲するiPhone XSと、その大型モデルとなるiPhone XS Maxを先に展開した。

あとから登場することになったiPhone XRは、販売台数の面でもっとも注目を集めるデバイスになるだろう。その最も大きな理由は、iPhone XSより250ドルも安い価格にある。

しかし、実際にiPhone XRを手に取ってみると、完成度や質感の面で非常に高い満足度が得られた。iPhone XS/XS Maxよりも、むしろこちらがiPhoneのスタンダードになるのではないか、と思わせるほどの存在だった。価格という制約のなかで、Appleが生み出したブレークスルーの大きさを体現する製品といえる。

加えて、低コスト化を免れてiPhone XRに盛り込まれた機能を見ることで、Appleが将来にわたってiPhoneによるスマートフォン体験をどのように舵取りしていくのかを見つけることができる。

高い満足感のLiquid Retinaディスプレイ

Appleは昨年、「Super Retinaディスプレイ」としてiPhone Xの有機ELディスプレイを紹介した。100万分の1という高いコントラスト比と発色の良さという有機ELディスプレイの特徴を生かしながら、自然な発色に味付けされたディスプレイは、iPhoneにとっても大きな転機となった。

しかし、iPhone XRではその高級な有機ELパネルではなく、iPhone 8まで採用されてきた液晶ディスプレイが「Liquid Retinaディスプレイ」として採用された。液晶ながら、縁まで敷き詰められたオールスクリーンデザインと、ていねいにカットされたノッチの存在により、iPhone XSと同様のデザインを実現している。

細かく見れば、ディスプレイの縁からボディの端までの長さは、iPhone XSよりも太くなっていることが分かる。その結果、特に上端はボディから離れて弧を描き、ノッチを大きく避けているように見えてしまう。並べて比べればその差は歴然であり、iPhone XSのほうがより端正で、iPhone XRはいささか野暮ったく見えるのは事実だ。

  • 有機ELと液晶で特に差が現れるのが、画面の上部とTrueDepthカメラを避けるノッチ部分。ノッチを合わせた縁から画面までの距離は、iPhone XS(左)よりもiPhone XR(右)のほうが大きいことが分かる。それでも、ガラスのカットは液晶ながらよく再現されている

しかし、そのちょっとした差が日々の活用にどれだけ大きな影響を与えるのか?と問われれば、ごくわずかであると結論づけられる。

それ以上に、iPhone 8などの4.7インチモデルからステップアップするユーザーにとっては、これまで通りの高色域ディスプレイ、大幅に拡大されたパネルサイズ、そして120Hzに高速化されたタッチセンサー、強化されたステレオ再生によって、体験が大きく向上することが期待できる。

  • フルHDに満たない解像度のiPhone XRの液晶ディスプレイだが、高色域(P3)をサポートし、犬の写真を拡大しても迫力ある画質が楽しめる

ディスプレイにまつわるデチューンとしては、画面を押し込んで操作する3D Touchが長押しに置き換えられた点が挙げられる。感触フィードバックは残されたものの、通知画面を押し込んで中身を確認できなくなったり、キーボード全体を使って押し込んで操作するカーソルモードが利用できなくなった。

その代わり、キーボードのスペースキーを長押しすることでカーソルモードに入り、あとは自由にキーボード全面を使って文字列の移動が可能になっている。

  • 3D Touchが省かれたため、文字入力時のカーソル移動はスペースキーを長押しして行う方式となった