JR西日本が和歌山線・桜井線(紀勢本線の一部も含む)の新型車両、直流近郊形電車227系1000番台の報道公開を実施した。同社が近年導入した電車のデザインや車内設備、安全対策などを継承しつつ、ワンマン運転に対応。2020年春にサービス開始予定の車載型IC改札機も搭載した車両となる。

  • 和歌山線・桜井線の新型車両227系1000番台。2019年春から順次投入される

報道公開では新型車両のお披露目に先立ち、JR西日本車両部の林太郎氏が概要説明を行った。227系1000番台について「国鉄時代から長年使われてきた105系・117系を置き換える車両。投入予定線区は和歌山線・桜井線と紀勢本線の一部となります」「大阪環状線で使用している323系、新快速などで使用される225系、広島地区を走行する227系で採用してきた安全対策をフル装備したような車両。和歌山線・桜井線でご利用いただくにあたり、新製車両として初めて車載型IC改札機の機能も設けました」と紹介した。

今回、報道関係者らに公開された編成は、1号車がクモハ226-1001(M’c)、2号車がクモハ227-1001(Mc)のSD01編成。川崎重工が製造を手がけ、車体はステンレス製で片側3ドア(両開き)、軽量ボルスタレス台車を採用している。最高速度は110km/h。SD01編成のパンタグラフは2号車の連結部側に1カ所のみだが、一部車両では霜害対策として、運転台側に第2パンタグラフが設置されるという。

  • 227系1000番台の外観は、和歌山線・桜井線沿線に共通する文化・歴史・自然の奥深さを表現した緑色を基調とするデザイン。種別・行先表示器はフルカラーLEDとなり、イラスト入りの種別表示も可能に

  • 車内はオールロングシート。ドア付近に入場用、運転台の背面と運賃箱に出場用の車載型IC改札機を設置している

227系1000番台の定員は1号車が130名、2号車が137名。車内はオールロングシート。林氏は車内設備に関して、「ラッシュタイム等のご利用状況を考慮し、ロングシートの車両となります。323系でも採用された袖仕切りや手すりを設け、とっさのときのつかまりやすさ、立ち上がりやすさを向上させました」と説明した。ドア間の座席は両端部に大型袖仕切り、中間部に小型袖仕切りを設けた10人掛け(3人+4人+3人)、2号車の連結部付近にある座席は4人掛けとなり、クッション性を考慮したSバネ構造を採用している。10人掛け座席では1人あたりの座席幅を470mmに広げた(車端部の座席は幅440mm)。

紀勢本線の運用にも対応、運転台に車内確認用のカメラも

多機能トイレと車いす・ベビーカースペースは1号車の連結部付近に1カ所ずつ。優先座席は1号車の連結部側と2号車の運転台側にそれぞれ6席分(10人掛け座席のうち3席)用意した。なお、323系では座席端部の大型袖仕切りが斜めに設置されたが、227系1000番台では従来の車両と同様、壁に対して垂直に設置されている。

和歌山線・桜井線でワンマン運転も行われることから、車内収受対応ワンマン機器(車載型IC改札機対応)を搭載。車載型IC改札機はすべてのドア付近に青色の入場(乗車)用、運転台の背面と運賃箱に黄色の出場(降車)用を設置した。袖仕切り付近には入場用の車載型IC改札機に加え、紀勢本線(きのくに線)でも運用予定のため、津波が予想される場合に備えた避難用はしごや非常灯などが装備されるという。

車両間の貫通扉は225系2次車や323系でも採用されたアシストレバー付き。車内照明はLED灯具からの直接光と、天井面からの間接光で客室内を照らす構成とした。車外の前照灯もLED化され、フルカラーLEDの種別・行先表示器により、イラストを取り入れた特別な種別表示を行うことも可能。片側3カ所ある乗降ドアのうち、中央部を除く2カ所のドア付近にワンマン運転時の乗り口・降り口を示す表示器が設置された。

運転台については「227系や323系でも使用している運転台計器盤を液晶画面化したものを搭載し、主幹制御器にはEB-Nマスコンという、より保安度を高めるタイプの装置を設けています。客室の状況が乗務員から確認できるように、客室状況確認カメラも搭載しました」と林氏。客室状況確認カメラは1両あたり2カ所(乗務員室側・連結部側)あり、録画機能はないものの、運転士は自車・他車ともに運転台から車内を確認できるという。

  • 運転台計器盤が液晶画面化され、EB-Nマスコンを搭載。運転士の車内確認用に客室状況確認カメラが設置されている

  • 車両公開に先立ち227系1000番台の概要説明。車内の吊り手はとっさのときにつかまりやすいオレンジ色調のタイプに。ドア上に設置された2カ国語対応の案内表示器(号車表示付き)で行先案内などを行う

和歌山線・桜井線の新型車両227系1000番台は2019年春から順次投入され、車両数は計56両(2両編成×28編成)。2020年春までに全車両の置換えを完了し、あわせて車載型IC改札機を使用した「ICOCA」サービスを開始する。また、和歌山線橋本~和歌山間で2023年春から導入される無線式ATCの車上装置も搭載される予定となっている。

なお、227系1000番台の投入線区が和歌山線・桜井線の他に「紀勢線の一部も含む」となっていることに関して、置換え対象の117系が紀勢本線(きのくに線)和歌山~紀伊田辺間の一部で運用されていることもあり、これを補足する可能性があるとのこと。ただし、新車導入後の各線区における具体的な運用やダイヤなど、詳細は現時点で未定とされた。

227系1000番台、直流近郊形電車の主要諸元など

  • 基本編成 : 2両編成
  • 最高速度 : 110km/h
  • 旅客定員 : (Mc)137人、(M’c)130人
  • おもな使用線区 : 和歌山線、桜井線(紀勢本線の一部も含む)
  • 車体構体 : SUS(ステンレス構体)
  • ドア枚数 : 片側3ドア(両開き)
  • 座席構成 : ロングシート(ドア間10席、車端部4席。両端部に大型袖仕切り、中間部に小型袖仕切りを設置)
  • 客室 : 室内灯(LED)、案内表示器(LED式、2カ国語表示・号車表示付き、各側出入口上部に計6個配置)
  • 旅客用乗降口 : ドアチャイム設置
  • 台車装置 : 軽量ボルスタレス台車
  • 車両制御装置 : 主回路(0.5M方式、フルSiC素子を採用)、補助電源並列運転
  • ブレーキ : 電気指令式空気ブレーキ(台車制御)
  • 保安設備 : ATS-SW・ATS-P(無線式ATC準備)、EB-N機能、TE装置
  • 運転台機器 : 計器盤の液晶画面化による集約、運転台計器画面の二重系化
  • デジタル伝送装置 : 省配線化、機器の機能化
  • 第2パンタグラフ : 一部車両のみ(霜害対策)
  • 衝突時の安全対策 : 前面衝撃吸収構造、側面対策衝突、大型袖仕切り など
  • 安全装置等 : 運転状況記録装置、映像音声記録装置、車両異常挙動検知システム、ドア誤扱い防止システム、戸挟み安全対策、客室状況確認カメラ、先頭車間転落防止ホロ、機器取扱禁止支援装置 など
  • 主要サービス設備 : 車内収受対応ワンマン機器(車載型IC改札機対応)、車いす・ベビーカースペース、自動案内放送(日英2カ国語対応)、アシストレバー付き貫通扉、情報表示装置 など

※JR西日本提供の資料をもとに作成。