ギットハブ・ジャパンは8月6日、都内でメディアラウンドテーブルを開催し、米国本社からセールス担当 バイスプレジデントのポール・セイント・ジョン氏が出席した。

GitHubはソフトウェア開発においてコードを共有・公開するためのサービスであり、コラボレーションプラットフォーム。GitHubを使うことで開発者同士のコミュニケーションが活発になり、高品質なソフトウェアを効率的に開発できる。

米GitHubは2008年に設立し、コーディングする際に開発者同士がオンラインで連携やコラボレーションができないか、というシンプルな考えのもとにスタートした。

ジョン氏は「GitHub登場以前は、コーディングすれば開発者同士で会うか、メールでやりとりしていたが、業務的に非効率的であり、大半の開発者が業務時間の半分をミーティングに費やし、ソフトウェア開発に時間を避けないということがあった」と、開発者の効率性向上の観点からGitHubが誕生した経緯を説明した。

  • 米国本社 セールス担当 バイスプレジデントのポール・セイント・ジョン氏

    米国本社 セールス担当 バイスプレジデントのポール・セイント・ジョン氏

GitHubにより、オンラインで連携することでソフトウェア開発を迅速化することができると同時に、複数人が共有することでコードの欠陥を減らすことが可能になったという。2012年に「GitHub Enterprise」を発表し、企業が自社サーバ上でGitHubを使えることができるようになり、グローバルのユーザー数が100万ユーザー、2013年に300万人に達した。そして、2015年に海外初の拠点としてギットハブ・ジャパンを設立し、2017年には企業向けクラウドサービスを開始し、ユーザー数は2800万人に拡大している。

Amazonの登場で危機を迎えたウォルマートも導入

近年、ブロックチェーンやAI、VR、自動運転車などの技術の登場により、ソフトウェアの重要性が高まっている。ソフトウェアはビジネスにおいて必須であるとともに、競合他社に勝つためにはイノベーションが必要となっており、イノベーションを手に入れるためにはオープンソースソフトウェアが重要視されているという。

一例として、ウォルマートはAmazonの登場で存在が危ぶまれたため、2015年にウォルマートラボをシリコンバレーに開設。Amazonと戦うためには、ウォルマート自身がソフトウェア開発をオンライン環境でエキスパートにならなければならなく、スピーディにイノベーションを起こすためGitHubを導入した。

2015年時点では200人の開発者だったが、2017年には6500人に拡大し、リテールジャイアントとしてソフトウェア開発の中心となった。同様にイノベーションを起こす必要に迫られている企業は多く、日本では特に自動車業界や金融、ヘルスケア、リテールなどもソフトウェアのイノベーションが中心になっているという。

日本市場についてジョン氏は「今後、日本においてもAIとIoTの各市場は拡大が見込まれていることから、日本企業でもGitHub Enterpriseの導入が増えており、日本市場にコミットしていく」と、述べていた。

  • 日本におけるGitHubの導入企業

    日本におけるGitHubの導入企業

ソフトウェア開発のデファクトスタンダード

続いて、ギットハブ・ジャパン ソリューションエンジニア 池田尚史氏が開発者にとって、どのようにGitHubが役立つのかを説明した。

同氏は「登録ユーザー数は2800万人、リポジトリは8500万、採用している組織・企業は180万、日本からの月間訪問数は5400万人となっている。個人での利用に加え、企業での利用も多く、ソフトウェア開発のデファクトスタンダードと言っても過言ではない」と胸を張る。

  • ギットハブ・ジャパン ソリューションエンジニア 池田尚史氏

    ギットハブ・ジャパン ソリューションエンジニア 池田尚史氏

昨今、ソフトウェアの開発手法は従来のウォーターフォールからアジャイル開発に移行しており、GitHubはアイデアからコード、レビュー、テスト、デプロイまで、すべての開発プロセスをサポートしていることが強みだ。

アイデアではドキュメンテーションとWikiを提供しているほか、プロジェクトボード機能を提供し、プロジェクトを管理することができる。コードに関しては、ソースコードを管理し、Atomなどソフトウェア開発に使われるエディタをサポートしている。

レビューは、ソースコードの差分は画面左側に赤、右側に緑で比較して表示し、変更点をメンバーで共有・コメントできることに加え、コードレビュー支援ツールをサポートし、ソースコードの内容を分析・解析することを可能としている。

テストでは、ロボットによるテストなどを提供し、ソースコードがテストを受けたか否かをチェックできるほか、コード、レビューと同様にWebサイトの構築やモバイルアプリなどテスト自動化ツールをサポート。デプロイに関しては、ソースコードがいつ、誰によりリリースされたかを知ることなどができるほか、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azureをはじめとしてクラウドなどをサポートしている。

これら、すべての開発プロセスをサポートしており、その優位性について池田氏は「ユーザーベースが大きく、コミュニティの支持、企業シェアが高い。また、GitHub Marketplaceや連携ツール、関連記事、書籍など巨大な得こしエコシステムを有している。さらに、膨大なデータを活用した機械学習アプローチによる脆弱性通知機能を備えている」と、強調する。

特に同氏が強調したのは脆弱性検知機能についてだ。現在のソフトウェア開発は、多様なツールやライブラリに必然的に依存するため、コードの中に含まれる脆弱性は否定できないという。その場合、人間が処理するのは労力を要するため、多くの企業がキャッチアップにコストをかけていることもあり、豊富なデータをもとに機械学習のアプローチにより、企業が持つ依存コードから脆弱性を発見し、通知している。

  • 膨大なデータを活用し、機械学習により脆弱性を検知するという

    膨大なデータを活用し、機械学習により脆弱性を検知するという

ジョン氏は「今後、日本のマーケットがイノベーションをベースに成長していくためには、オープンソースとコミュニティとしての開発、ビジネスが交差していくことが必須になるだろう。すなわち世界のイノベーションに対しオープンになり、ネットワークの一部になることが重要だ。GitHubの環境はユーザーをベースにしたコミュニティであり、これまでの開発手法や、コラボレーションの方法を変化させてきた。最も必要とされるイノベーションの加速化がいまだにコミュニティで実現されており、日本のソフトウェアの未来は明るい」と、述べていた。

今回のラウンドテーブルでは、“GitHub”自体が何者であるのかということを重点的に説明していた。6月に米マイクロソフトに買収されたが、事業の独立性は担保していく方針だ。今後、日本市場においてGitHub Enterpriseが浸透するのか否か、注目していきたいところだ。