「言いたいことが相手に伝わらない」など、課題を感じる社会人が多いプレゼンテーション。そこで、同じ悩みをもつ広告代理店の営業・Mさんを相手にプレゼンの誌上レッスンを開催した。

  • マイナビニュース会員1,000名(会社員・自営業)を対象に2018年6月29日~7月4日に実施したアンケートより

前編では、自身のプレゼン課題を認識し、後編では、その課題を克服するトレーニングに取り組んでいく。今日からでもすぐに使えるので要チェックだ。

低音ボイスを出す訓練

「Mさんの特長である低音ボイス。これをさらに説得力のあるダンディーな声にするための発声トレーニングを行います。頑張りましょう!」

  • 大手企業の経営者を中心にプレゼン指導を行っている永井さんが指導

「まずは、ヘソから9cm下のところにある丹田(たんでん)という場所をつねに張っている状態にして! 10秒経ったら息を吐いてください」

「こうですか、はー」

「いいですよ。いいですよ。理想をいえば太い筒をイメージして吐いてください。はい、もう一度。息を吸って、おへそに意識を集中して、肩やのどには力を入れず、手もぶらぶらしたまま。息を留めてください。口は開けっ放しで、そこから息を一気に吐ききってください」

はー

Mさんはこのトレーニングをカラダが覚えるまで、繰り返す。傍からみていると、本当に効果があるのか? と疑問がわいてくる。

「では、さらにおへそに意識を集中させるために、誰かげんこつで下腹部を押してあげてください」と、こちらの疑念を感じ取ったかのような一言。

虎は常に周囲の状況を把握している。そして、筆者が急きょ駆り出されることに。

ここかな。これぐらいかな。

「中途半端な押し方ではなく、腰を入れて押してください」と、コーチに叱られる。

「はい」と気合いを入れ直し、強く押す。おっ、堅い! 堅い!

中年男性が、相手の腹をコブシで押している状況はなかなか見ないだろう。

続いて、プレゼンの導入部分を練習する。

「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」

「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」

「みなさん、こんにちは、わたくし、Mでございます」

Mさんは、何度も何度も繰り返し行うが、ついつい早口になるようで、「もっとゆっくり。もっと」とコーチから都度指摘が入る。下腹部に力を入れながら話をする、なれない状態にあるので話すことに意識が集中できないのだろう。

この早口を改善するために、次に行われたのが「悪代官スペシャル」というトレーニング。時代劇でお約束、誰もが知るだろう「あの場面」の再現だ。

越後屋は饅頭がぎっしり詰まった折り箱を悪代官に差し出す。

「好物のおまんじゅうでございます」

そして、そのとき放たれる

「ふ・ふ・ふ・ふーん。越後屋、おぬしも悪よのうー」を練習。

この台詞をトレーニングに使うとは! 天才では!?

永井コーチが自ら実演。音大出身ということもあり、声量と力強さのレベルが違う。Mさんは悪代官になり切れるか?

呼吸が大変で、涙目になりながらも、「おぬしも、わるよのーう」と耐えて頑張る、Mさん。

しかし、「もっと、ゆっくり。もっと、感情を込めて」。虎の牙は容赦なく襲い掛かる。

「俺は悪代官、悪代官なんだ」と自己暗示をかけるMさん。彼を選んだのは正解だった。たぶん。