富士通は12日、グローバル調査などをもとに銀行業界の将来のデジタルサービスの潮流や方向性を纏めたレポート「Fujitsu Future Insights バンキング・サービスのデジタル革新」を公開した。

預金や融資に代表されるサービスを提供してきた銀行業界。新しいテクノロジーや新しいサービスが漏れ聞こえてくるものの、バンキングサービスはどのような方向性に向かっていくのか?「バンキング・サービスのデジタル革新」ではデジタル化されていくバンキングサービスの将来像を5つの型に纏めている。


・エンゲージメント・バンキング(生活者や事業者が日常的に使用するサービスに対して銀行サービス機能を付加)
・プラットフォーム・バンキング(金融サービスをフロントエンドで提供する企業に対して、銀行機能を柔軟かつ低コストで提供)
・テクノロジー・バンキング(AIをはじめとする最先端技術によって銀行の業務プロセスを大幅に変革)
・ソーシャル・バンキング(ブロックチェーンの活用により、シェアリングエコノミーといった個々人が直接的につながる新たな経済活動を支援)
・インクルーシブ・バンキング(経済的に恵まれておらず、金融サービスを利用する機会がない人々に対して金融サービスを提供)

ブロックチェーンやAIやAPIといったITテクノロジーが、金融サービスのなかでどのように活かされていくのか海外事例なども織り込んでレポートしてあるが、もっとも身近なエンゲージメント・バンキングでは、オーストリアの銀行が不動産情報会社と連携し、売り出し中の不動産をスマートフォンのカメラで撮影すると、その場で不動産価格を確認しローン担当者に連絡、購入に至るまでプロセスをスマホで完結させる仕組みを例示。スマートフォンやスマートスピーカーによって広がるユーザー接点が生活や事業に溶け込み、できるだけ多くの需要に応えられる融資の姿が見えてくる。そのときに欲しいと思う需要は、決して侮るべきではなくGoogleはマイクロモーメントという言葉で2015年に表現している。

レポートでは、これら分類から銀行のビジネスモデルが3方向へと分化していくことを推測している。

・従来型の銀行ビジネスを大きく変化させることなく、デジタル技術によって顧客経験価値や利便性を高め、より効率的なサービスを提供するビジネスモデル
・銀行ビジネスに必要な機能や業務サービスをプラットフォーム機能としてAPIで提供するバックエンドに特化したビジネスモデル
・バックエンドのプラットフォーム機能を他の銀行から調達し、デジタルチャネルや物理店舗などを駆使してお客様に密着したサービスを提供するフロントエンドに特化したビジネスモデル

今後もバンキング・サービスへの新規参入の増加は予測されるところだが、レポートでは自社の得意な領域に焦点を絞ったバンキングサービスを開発し、銀行機能はAPIでバックエンド機能に特化した銀行から調達するという柔軟性、デジタル革新のための信頼できるパートナーとの共創が欠かせないことを指摘している。