Appleが同社の上級管理職を紹介するWebページをアップデートし、John Giannandrea氏が正式に機会学習およびAI (人工知能)戦略チーフとしてエグゼクティブチームに加わった。今年4月にNew York Timesが、GoogleからGiannandrea氏をAppleが引き抜いたと報じていた。Googleで同氏は、シニアバイスプレジデントとして検索および機械学習チームを率いていた。Appleでは、AIおよび機械学習の戦略、Core MLやSiriの開発を統括する。

Giannandrea氏は、General Magicでシニアエンジニアを務めた後、スピーチ認識技術のTellme Networksや知識ベースのMetaweb Technologiesの設立に関わった。2010年にGoogleがMetawebを買収、報道によると同社では機械学習関連の研究チームを率い、音声認識、画像認識、ナレッジグラフ、ランクブレイン、自動運転カーなど様々プロジェクトを監督してきた。

Googleで機械学習関連のプロジェクトを推進してきたGiannandrea氏が、Appleで実力を発揮できるだろうか。機械学習では、学習に使うデータが多いほど学習効果が上がる。Appleはユーザーのプライバシー保護を最優先に、機械学習処理をデバイス内で行い、最小限のデータを暗号化してクラウドに送信している。それがGoogleやMicrosoft、Facebook、Amazonといったライバルに比べて、AI技術開発でAppleが後れを取っていると言われる所以の1つだ。しかし、昨年からユーザー情報を収集・解析することを危ぶむ声が高まり、プライバシー保護を重視した安全な機械学習の価値が認められ始めている。

近年のインタビューでGiannandrea氏はデータトレーニングの透明性が重要になると度々述べている。AIが人知を超えるのを危ぶむ声があるが、同氏が心配するのは人の先入観や偏見の影響だ。バイアスのかかったデータを学習したら結果も偏る。バイアスのかかったアルゴリズムがすでに多くの産業に浸透している一方で、それを特定・修正する努力が見られない。医療や法律など、これからクリティカルな分野に機械学習技術が広がるほどに、機会学習におけるバイアスが深刻な問題になると危ぶむ。

Appleは、人々の暮らしや社会をより良いものにするための製品やサービスの提供を第一義としている。機械学習も、それを実現するための技術の1つに過ぎないというのがAppleの捉え方だ。そんなAppleだからこそ、Giannandrea氏が思い描くクリティカルな分野での適切な機械学習活用を実現できるかもしれない。