Top500の発表では、毎回、主催者の1人であるErick Strohmaier氏がハイライトと分析を説明する。
高齢化が進むTop500リスト掲載スパコン
第51回Top500リスト(2018年6月版)の第1のハイライトは、何といっても米国のSummitとSierraが1位と3位となり、首位を中国から奪還したことである。しかし、これは、読者はご存じの事項なので、ここでは詳しくは説明しないが、動向の説明の都合で、トップ10のリストだけを掲げておく。
Strohmaier氏が指摘する最近の傾向は、リストに含まれる500台のスパコンの高齢化である。次のグラフは1995年からの25年あまりのデータが含まれているが、2010年ころまでは、500台のスパコンの平均月齢は7.6か月であった。その後、平均月齢は急増し、最近は17か月程度のところで一定になってきているように見える。
何故、こうなるのか分からないし、それが分かったから何の役に立つかと言われても困るが、このような傾向が分かるという点でも、Top500がスパコンの歴史に関する高品質のデータを溜めてきた大きな意義があると思う。
次の図は各回のリストにおいて、500システム合計の性能の半分になるランクをグラフにしたものである。2010年くらいまでは、上位の40~80システムの性能の合計が、500位までの全システムの合計の性能の半分になっていたが、それ以降、トップエンド機へのFlops値の集中が進んでいる傾向が見える。特に2013年は、トップ12システムで、リスト全体の半分のFlopsを占めるという事態になった。
最近では、この傾向はある程度戻ってきているように見えるが、この先、どうなっていくのか、このグラフからは傾向は読み取れない。
性能の伸びから見るExaFlopsスパコンの登場時期
次の図は、500システム全体の性能の合計(SUM)と、トップのシステムの性能(N=1)と最下位のシステムの性能(N=500)をプロットしたものである。トップの1台のシステムの性能を表すN=1の線は凹凸ができているが、2000年代までは、SUMとN=500の線はかなりきれいな直線であり、傾きが一定の指数関数となっていた。
その傾向は続くと思われていたのであるが、2011年ころになると、N=500の線の傾きが落ちてきたことが明らかとなった。振り返ってみると、N=500の線の変曲点は2008年6月である。
SUMの線は伸びを継続してきたのであるが、こちらも2014年ころには伸びの鈍化が明らかとなってきた。変曲点は2013年6月である。
ExaFlopsのスパコンは2020年までに登場すると予想されていたが、この性能向上の鈍化が明確になったことから、エクサスケールマシンの登場スケジュールは2年程度後退している。
なぜ、変曲点ができたのか、なぜ、N=500は2008年6月で、SUMは2013年6月なのかを、ISC 2018のパーティの場でStrohmaier氏と議論したのであるが、「デナードスケーリングの終焉とムーアの法則のスローダウンが影響しているのは確かだが、なぜ、SUMとN=500で変曲点がずれているのかは分からなかい」という話となった。N=500の場合は、プロセサのコストが効いているのではないかと思われるが、残念ながら、Top500にはそのようなデータは含まれていない。