楽天証券は6月21日、女性限定のマネーセミナーを開催。NISA(確定拠出型年金)やiDeCo(個人型確定拠出年金)などについて説明するとともに、資産運用や投資についての解説が行われた。働く20~50代までの女性約30人が参加したセミナーでは、特に初心者をターゲットとした解説で、資産運用のメリットと運用テクニックが紹介され、参加者は一様に真面目な顔で話に聞き入っていた。

楽天証券経済研究所兼アセットビジネス事業本部のファンドアナリストである篠田尚子氏は、資産を増やすことに対して「しっかり増やしたい」「ガッツリ儲けたい」「とにかく(資産を)減らしたくない」という3つの考え方のうち、3つ目は「うまくリスク管理すれば十分達成できる目標」であり、2つ目は上級者向けの考え方のため、最初は考えるべきではないとする。

  • 篠田尚子氏

そのため、まずは「しっかり増やしたい」という考え方にもとづいて運用することを推奨する。それも、金融商品を買ってただ放置するだけではなく、「2つの大きな要素が必要」と篠田氏は強調。それは長期投資を前提として、その中で「資産分散」と「時間分散」の組み合わせが特に重要とのことだった。

まず、分散すべき資産だが、資産形成にはピラミッド型の「土台」が必要だ。一番下には流動性の高い現金や預金があり、その上に投資製金融商品がある。さらに外国為替証拠金取引(FX)や不動産投資などの資産があるが、これは上級者向けなので、まずは株式投資や債券、投資信託といった金融商品から始めて、「より筋肉質な資産」(篠田氏)を作る必要があるという。

  • 資産形成のピラミッド

資産の運用では、「節税効果の大きい制度」で優先順位をつけて取り組む。もっとも優先度が高いのはiDeCoで、さらにNISA、つみたてNISAと続く。証券口座や株式投資の積み立ては、「余裕があれば行う」という考え方だ。

  • 節税効果の大きい制度で優先順位をつける

最優先のiDeCoは、国民年金や厚生年金の公的年金に対して私的年金という位置づけで、公的年金に上乗せする制度とされる。2001年から開始され、企業の確定給付型年金や確定拠出年金にさらに上乗せすることもできる。

  • iDeCoの仕組み

  • iDeCoの仕組み

iDeCoは毎月の掛け金を自分自身で運用して積み立て、原則60歳以降の受け取りとなる。ライフイベントに応じて掛け金を増減したり、受け取りを60歳から70歳の間で自由に設定できたり、好きな商品で運用できていつでも変えられるなどのメリットを篠田氏はアピールする。

節税メリットは、所得税と住民税で、原則全額が所得控除の対象となり、仮に掛け金2万円/月だと年間24万円が控除対象となり、72,000円の節税効果がある。資産運用で得られた利益は全額非課税で税金がかからず、一時金として受け取る場合も退職所得控除、年金として受け取る場合は公的年金控除という税制優遇もある。

  • 節税メリット

運用先としては元本確保型と元本変動型があり、例えば楽天証券では、元本確保型はみずほDC定期預金(1年)の定期預金、元本変動型は株式や債券など31本の投資信託が用意されている。これを組み合わせて運用するのがiDeCoだ。

次に優先度の高いNISAは、一定金額までの株式と株式投資信託の配当/譲渡所得が非課税になる制度。一般NISAは非課税期間が5年で、年120万円までなので最大600万円までの投資が可能。つみたてNISAは、毎月同じ金額の投資商品を購入する形で、投資上限が年40万円だが、非課税期間が20年と長く、最大800万円になる。篠田氏は、「年120万円の購入ができないならつみたてNISAの方がお得」だという。

  • 一般NISAとつみたてNISAの違い

こうした資産運用に欠かせない投資信託について篠田氏は「料理」だと例える。株式や債券は素材であり、ファンドマネージャーという「シェフ」が調理をしてリターンを還元する、という仕組みだ。ちなみに、この「素材」は日本で1万以上あり、個人が購入できるものだけでも6,000以上あるそうだ。これを一般人が選ぶのは大変なので、専門家に調理を任せる、というのが投資信託だ。

投資信託でも、リスクが高い商品はリターンも高く、債券はリスクとリターンが低く、株式は高い、という傾向があるので、資産タイプと投資対象地域を分散することでバランスを取るのがポイントだという。

  • 地域や資産タイプなどで分散する

さらに、「インデックス型」「アクティブ型」「バランス型」という3種類があり、日経225やダウ平均のようなインデックスに連動した運用を目指すインデックス型は、「全国どこでも安定した味を提供するチェーン店」のようなもので、コストも低いがリターンも低い。投資テーマにもとづいて銘柄を選定して運用するアクティブ型は、「シェフが腕を振るう、こだわりのビストロ」で、コストは高いがリターンも大きい。

バランス型は、株式、債券など複数の資産/地域に分散投資視するもので、固定配分型と可変配分型があり、これだけで料理が完結する「ワンプレートランチ」「シェフのおまかせコース」だとする。

この3種類を組み合わせることがポイントで、慎重派であれば国内株式のアクティブ型にバランス型を多めに組み合わせ、やや積極派であればバランス型は少なめにして、アクティブとインデックスを組み合わせた運用を行う。こうした資産分散でリスク調整を行うことを篠田氏は推奨する。

  • バランス型でポートフォリオのリスク調整を行う

ちなみに篠田氏の場合、前職で形成した資産があり、それを定期預金50%とバランス型50%で運用し、月額23,000円の掛け金で海外株式(インデックス型)を50%、国内株式(アクティブ型)を40%、国内リート(アクティブ型)を10%で運用しているそうだ。

  • 篠田氏の運用例

さらに、例えば日経平均の上下で買うタイミングを計っていると、「余計な投資家心理が働く」と篠田氏。そのため、自動的な積み立てを活用すべきだと強調する。毎月分散して購入する時間分散を行うことで、さらにリスクが抑えられるという。

「投信積み立てはとにかく種まきが必要」と篠田氏は言い、最低でも2年間の積み立てを行うことで、投資効果が現れると指摘する。相場にネガティブ影響が多かった2011年1月から2015年1月までの期間、毎月1万円の積み立てを行った場合の投資効果をシミュレートしたところ、開始22カ月目までは赤字だったが、23カ月目以降は黒字化に転じたという。2011年11月は日経平均が9,000円を切っていた時代で、投資家心理としてはさらに下がることが不安になるが、「めげないことが重要」(同)であり、無理のない金額で毎月積み立てる重要性を訴える。

  • 時間分散を行うことでリスクを抑える

  • 2年間の積み立てを行うことが重要

無理のない金額については、100円から積み立てができるため、まずは低額から始めて増額していくのがいいそうだ。これは、減額すると積み立て効果がうまく発揮されず、増額すると積み立て効果がうまく発揮されるからだという。

この無理のない金額については、美人投資代表でファイナンシャルプランナーの久富有里加氏が、楽天スーパーポイントを使った投資について紹介した。楽天スーパーポイントは、今まで商品購入や値引きなどにしか使えなかったが、昨今では投資信託も購入できるようになった。

  • 久富有里加氏

久富氏は、投資をしない理由として、「十分な知識がない」「損が不安」「敷居が高い」といった点が挙げられたというアンケートを示しつつ、ポイントを使って投資デビューする方法があることを紹介。初めての投資が不安という声に対して久富氏は、「初めてのことを始めるときに、すべての知識を貯めてからでないとできない、ということはない」と指摘して、最初は知識不足が不安でも、気軽に始められるポイント投資でデビューすることを勧める。

参加した女性たちの中には、口座を開設したばかりで知識のないという40代女性もいたが、当初の印象よりも安心できたという声もあり、気軽に始められて、リスク分散できるというiDeCoやNISAに興味を深めていたようだった。