同社<a href="https://blogs.adobe.com/documentcloudjapan/acrobat-25th-anniversary/" target="_blank">公式ブログ</a>より

同社公式ブログより

ARやVRをはじめとした先端の情報伝達には目を奪われるばかりだ。しかし今でもビジネスシーンにおける情報伝達は、文字や図をベースとした文書による伝達が主流である。メールによる打ち合わせ日時の伝達のような簡潔なものから、商材の魅力を伝える写真や図版、見出しを組み合わせた文書まで、伝えられる情報の幅が広い。ちょっとした引用で文章の根拠を示したり、より的を射た表現を選び強調したりするなど、修辞技法の組合せによって限りなく表現が広くなる。

文書のデジタル化で大きな役割を果たしてきたのがPDFフォーマット。"紙"で培われた表現をいかにデジタル化するかに苦心してきたAdobeは、文書の閲覧から編集・加工まで紙とデジタルの架け橋となってきたAdobe Acrobatが6月15日で誕生から25周年を迎えたことを記念、同社デジタルメディア事業部担当エグゼクティブバイスプレジデント兼ジェネラルマネージャーのBryan Lamkin氏がその誕生秘話をブログで公開している。

1990年の夏に共同創設者であるDr. John Warnock氏は公開したホワイトペーパー「The Camelot Project」のなかで"ドキュメントは、いかなるディスプレイでも閲覧でき、最新のプリンターであれば機器の種類を問わず印刷できるべきである。この問題を解決できれば、人々の働き方は根本から変わるだろう。"とデジタル化による働き方の変革を意図した課題解決を述べている。科学の世界での"思考実験"が大きな進歩に寄与するのと同様に、"課題"を探しこれを解決していくことで、ビジネスと社会貢献を前に進めている。

Dr. John Warnock氏は公開したホワイトペーパー「The Camelot Project」

Dr. John Warnock氏は公開したホワイトペーパー「The Camelot Project」同社公式ブログより

PDFにも深く関わるページ記述言語のPostScriptがAcrobat以前の1985年に開発されているが、始点、終点、コントロールポイントと座標軸で描画することでひとつひとつの文字を計算しアウトラインを描画するPostScriptグラフィックスは、PDF関連を含むAdobe製品に大きな革新をもたらしている。John Warnock氏はPostScriptの開発者でもある。同年にAppleのSteve Jobs氏が最新のレーザープリンター「LaserWriter」の発表会で打ち出して見せた米連邦税申告書「Form 1040NR」がJohn Warnock氏が手がけたものであることを明かし、AppleとともにDTP革命を先導していったことを振り返っている。ページサイズが異なるドキュメントの統一やインテリジェントズーム、クロスプラットフォームUIなどのコンセプトを考案し、カリフォルニア州マウンテンビューの小さな会議室で製品プロトタイプを検証、製品名の候補には、Carousel(メリーゴーランド)、Funambulist(綱渡り)などもあったが最終的にAcrobatへと至っている。

バージョンを重ねた最新のAcrobat DCではクラウドやモバイル、同社AIのAdobe Senseiなど先端テクノロジーとの連携が図られている。公式サイトには最近の新機能、アップデートを時系列でまとめているが6月には同社無料アプリAdobe Scanとの連携が図られている。常に携帯するスマートフォンにインストールしたAdobe Scanで会議室のホワイトボードや名刺やレポートなどの紙書類をスキャンし、境界線を検出、影の除去を行うなど自動で最適化しPDFへと変換。Acrobat ReaderやAcrobat Pro DCを使いそれぞれの機能へとシームレスに繋げるフローを構築できるようになる。場所を問わずにPDFデータ創り出し、それを簡単に編集しビジネス資産へと変えていける。

ブログでは、2010年John Warnock氏の米国哲学協会での講演「プリンティングとパブリッシングを変える3つのアイデア」の言葉を引用し、PDFやAcrobatの大枠での方向性を示唆している。「紙に印刷された言葉、画像、グラフィックスの連なる集合体という意味での、従来のドキュメントの定義は、日々変化しています。デジタル世界のドキュメントは、さまざまな種類のメディアを包含でき、双方向性を実現しつつ、ドキュメント外のあらゆる種類の資料への動的なリンクにも対応しています。こうした情報基盤の変化にいかに対応し、それをいかに未来の世代に残していくのかを、我々はまだ模索し続けています。」

ブラウザでの情報取得と同様な世界がより洗練されたPDFファイルの世界で実現できるようになるのかも知れない。あたかも紙の文書のなかでリアルタイムな映像やチャットでやりとりができるハリーポッターの魔法使いのように。