ワコムは4月24日、東京・秋葉原UDXにて「Wacom Creators'Symposium(ワコム・クリエイターズ・シンポジウム)」を開催し、VRやMRなどの環境における製品デザイン、コンテンツ制作を実現する試作機の展示やデモが行われたほか、業界をリードする企業やパーソンたちを招いた講演やパネルディスカッションが行われた。ここではスクウェア・エニックスの開発会社「Luminous Productions(ルミナスプロダクションズ)」の開発メンバーの講演の模様をお届けする。

  • 秋葉原UDXで行われた基調講演

講演には、ルミナスプロダクションズのチーフプログラマー・岩崎浩氏とシニアエンバイロンメントアーティスト・上野功士氏が登壇。上野氏は、PS VRに対応した釣りゲーム『MONSTER OF THE DEEP: FINAL FANTASY XV』のリリース前、多くの人にプレイしてもらうため、さまざまな場所で体験会を設け、老若男女に遊んでもらったところ、興味深い結果が得られたと切り出した。

ゲームに慣れた人は、PS Moveを持ってすぐに操作方法を理解してゲームを進めるが、実際に釣りをするパートでは操作に戸惑うケースが多く見られた一方、普段ゲームをプレイしていないが釣り好きの人は、ゲーム開始直後は操作に戸惑うものの、釣りパートでは慣れた竿さばきで遠くまでルアーを飛ばしてみせたというのだ。

上野氏は、VRは"その人の過去の体験"によって違いが出ることに驚き、「これがVRなんだ」とVRの可能性をあらためて感じたという。逆に、釣りをしたことがない人がゲームプレイ後に「釣りってこんなに楽しかったんだ」と興味をもつ例もあり、釣りの奥深さ・娯楽性の一部がVR体験でも味わえていることを強調した。

さらに、VRで重要なのが"現実の体験"であると上野氏は説明する。その分野の知識や熱量をもった人材がゲーム開発に携わることが、より本物に近い作品作りには必要であることが現場でも認識されており、これからは製作現場の3D/4D化が重要で、思いついたアイデアをすぐに反映できるバーチャル向け開発環境を育てることで、VRの未来をさらに加速できると力をこめた

VRに関するハードウェアは軽量・コンパクト・ワイヤレス化など日々進化し、VRという言葉自体は世間に浸透したが、実際にVRを体験している人はまだまだ少ないという上野氏。「我々ゲーム開発者は、複雑なことを簡単にかつ楽しみ、能動的に変えられると思っています。開発環境を整えていくことで、新たにやりたいことや、より柔軟な考え方が出てくると思いますので、今後も注目してください」とあいさつし、基調講演は幕を閉じた。

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