米携帯3位のT-Mobile USと、ソフトバンクグループ傘下で米携帯4位のSprintは4月29日 (現地時間)、合併することで正式合意したことを発表した。合併会社名は「T-Mobile」。本社をワシントン州ベルビューに置き、T-Mobile USのCEOのJohn Legere氏が合併会社のCEOに、T-Mobile USのCOOであるMike Sievert氏がCOO兼プレジデントに就任する。SprintのCEOであるMarcelo Claure氏は取締役に。ソフトバンクグループ代表の孫正義氏も取締役になる。合併には米規制当局からの承認が必要であり、2019年前半の手続き完了を目指す。現在米国の携帯市場は、AT&TとVerizonの2強に3位以下が大きく離された状態だが、統合が実現したら3強がしのぎを削る時代に突入する。

株式の交換比率はT-Mobile US 1株に対しSprint 9.75株。合併後はT-Mobile USの親会社Deutsche Telekomが株式の約42%、ソフトバンクが約27%を握る。

  • 「コンシューマのための5G」実現をアピール

    Sprint CEOのMarcelo Claure氏(左)とT-Mobile US CEOのJohn Legere氏、「コンシューマのための5G」を実現する統合であると強調

2013年に当時業界3位だったSprintをソフトバンクが買収。第三極を目指して当時4位のT-Mobile USの買収に乗り出した。しかし、米当局が統合に難色を示し、またT-Mobile USとの交渉も同社が「Uncarrier」戦略で契約者数を急速に伸ばし始めたことで難航。合併条件で合意に達せず、物別れに終わっていた。今回、合意に至った背景には「5G」への移行がある。ネットワークの整備には巨額の投資が必要であり、高速なモバイルサービスには米国で家庭用ブロードバンド市場を独占するケーブルTV会社も参入チャンスを狙っている。5G時代の競争を勝ち抜くためには規模の拡大が不可欠であり、その実現を優先してSprint側が譲歩したと見られる。

合併会社は、5Gネットワークおよび次世代の携帯事業に3年間で最大400億ドルを投資する。5Gへのシフトは、すぐにも米国において数多くの新たな雇用を生み出し、手頃な価格のサービスと質の高いワイヤレスネットワークの実現は長期にわたる大きな経済効果につながるとしている。そうした5G時代の未来を示しながら統合の効果を説くAllfor5g.comというサイトを開設した。ビデオメッセージの中でLegere氏は、「2つのチームが一緒になったら、どんな競争力を発揮するか想像できるだろうか。AT&TやVerizon、Comcastや他の競争相手は気をつけるべきだ」と語っている。

T-Mobile USが経営不振に陥っていた2011年に、AT&TがT-Mobileの買収に乗り出したことがあったが、合併が競争減退につながるとして米司法省が阻止に動き、合意は実現しなかった。米当局は統合による主要通信キャリアの減少に慎重だ。また通信事業の大型合併には国家安全保障という観点の議論も出てくるため、T-Mobile USとSprintの統合には規制当局からの厳しい審査が予想される。