千葉大学医学部附属病院は、ギラン・バレー症候群の患者に対して臨床試験を行い、 薬剤「エクリズマブ」の有効性を確認したと発表した。同臨床試験により、25年ぶりにギラン・バレー症候群の新規治療の可能性が示唆されたということだ。

  • 千葉大学病院(出所:千葉大学医学部附属病院ニュースリリース)

    千葉大学病院(出所:千葉大学医学部附属病院ニュースリリース)

同臨床試験は、千葉大学医学部附属病院の神経内科・桑原聡教授らの研究グループによるもので、その内容は、4月20日英国の国際医学雑誌「The Lancet Neurology」に掲載された。

ギラン・バレー症候群は、手足のしびれ・麻痺を急速に生じる末梢神経の病気で、先進国で最も多い急性四肢麻痺の原因となっている。回復を早めるために免疫グロブリン療法などが行われるが、約2割の患者は急性期を過ぎた後も重い麻痺や感覚の低下が残る可能性がある。また、約5%は死亡、約25%は一時的な人工呼吸器管理を必要とし、約20%は1年後に歩けなくなり、約40%は職業の変更が必要となるという。

今回の医師主導治験では、標準的に行われている免疫グロブリン療法に加えて、薬剤「エクリズマブ」を投与する効果を検討するための臨床試験が行われた。その結果、エクリズマブの投与により、治療開始から4週時点で自力歩行可能まで回復した患者は61%(従来治療:プラセボ群では45%)、24週時点で走行可能まで回復した患者は72%(プラセボ群では18%)となった。

なお、同症候群の治療については、1992年に免疫グロブリン療法の有効性がオランダから報告されて以来の進展となるということだ。桑原聡教授はこの成果に対し、以下の通りコメントしている。「今回の治験の成果は、これまで25年以上にわたり探し求められてきたギラン・バレー症候群の新規治療の可能性を示唆するものとして、世界中の専門家に注目されています。治療開始から6ヵ月の時点で、7割以上の患者さんが後遺症をほぼ残さずに回復されているという事実は、ギラン・バレー症候群の克服を予感させる結果です。今後、検証的な第III相試験に向けた取り組みをしていき、最終的には、臨床の現場で薬が実際に利用できるようになることを目指しています。」