日立ソリューションズはこのほど、パートナー企業であるAutomation AnywhereとRPA(Robotic Process Automation)に関するセミナーを開催した。セミナーでは、Automation Anywhereのソリューション、日立ソリューションズにおけるAutomation Anywhereの全社展開について紹介が行われた。

昨今、企業では業務の自動化を目的とした「RPA(Robotic Process Automation)」の導入が増えている。その一方で、「簡単にロボットを作成できない」「スケーラビリティが低い」などの課題がある。本稿では、「Automation Anywhere Enterprise」を例に、RPA導入の課題と解決策を整理してみたい。

目標はRPA導入ではなく、デジタルエンタープライズの確立

Automation Anywhere 共同設立者兼CRO(最高売上責任者) アンクル・コチャリ氏

初めに、Automation Anywhere共同設立者兼CRO(最高売上責任者)のアンクル・コチャリ氏が、Automation Anywhereの戦略とビジョンについて説明した。

Automation Anywhereは、Forresterが2017年2月に発表した調査結果によると、グローバルのRPA市場においてリーダーのトップクラスに位置付けられている。同社の顧客の企業数はグローバルで1000を超えるという。顧客企業には、Google、IBM、Microsoftなどが名を連ねており、コチャリ氏は「テクノロジーベンダーも、一般企業と抱える課題は同じ。バックオフィスの効率化に問題を抱えている」と語った。今年3月には、東京に日本支社を開設し、日本でのビジネスを本格化させた。

コチャリ氏は、「現在のワークフォースは、Do(実行)、Think(考える)、Analyze(分析)、Coffee(休憩)というフローから構成されている。このフローは、それぞれわれわれのソリューションで置き換えることで、デジタルワークフォースになる。」と述べた。

同社は、RPAプラットフォーム「Automation Anywhere Enterprise」、学習能力を持つボット「IQ Bot」、分析プラットフォーム「Bot Insight」、Botオンデマンド プラットフォーム「Bot Farm」、パートナーのボットが登録されている「Bot Store」を提供している。

  • Automation Anywhereが提供している製品群

「Do」に当たる人が実行している業務は、Automation Anywhere Enterpriseが代わりに行う。IQ Botは、コグニティブ(認知)技術によって、非構造化データ解析・分類した上で、意味または感情を理解し、必要なアクションをRPAに渡す。Bot Farmは、仮想化技術により、業務量に応じてボットの数をオンデマンドで調整することを可能にする。「Bot Store」はボットのエコシステムであり、コチャリ氏は「今後、ボット経済を活性化していきたい」と語っていた。

コチャリ氏は、「われわれのゴールはRPAの導入ではなく、デジタルエンタープライズを作ることだ。それには、デジタルオペレーション、デジタルプロセス、デジタルワーカーが必要になる。われわれは、2020年までに300万人のデジタルワーカーを抱える世界で最も大きな雇用主になる」と、同社の長期的展望を述べた。

ユーザー部門とIT部門を満足させるRPA

Automation Anywhere Japan セールスエンジニア 秋本尚吾氏

Automation Anywhere Enterpriseの最新版(V11)については、Automation Anywhere Japanのセールスエンジニアである秋本尚吾氏が説明を行った。

RPAのソフトウェアには個人向けの「デスクトップ型」と組織向けの「サーバ型」の2種類があり、同社は後者を提供している。秋本氏は、「デスクトップ型RPAを利用している方に理解してもらいたいことがある。コンピュータの世界では、エンドユーザーコンピューティングにより無駄や無理が表面化し、その結果、経営層から見てコンピュータの活用が進んでいないように思われてきた。デスクトップ型RPAでも同じことが起きる可能性がある」と、デスクトップ型の課題を指摘した。

続いて秋本氏は、ユーザーおよびIT部門の双方から見た、RPA導入における課題として、以下を挙げた。Automation Anywhere Enterpriseでは、これらの課題を解決できるという。

  • 簡単にロボットを作成できない
  • ROIが早く出ない
  • ロボットの管理が難しい
  • スケーラビリティが低い
  • セキュリティが不安
  • ライフサイクル管理ができない
  • ロボットの再利用ができない

例えば、Automation Anywhere Enterpriseでは、GUIを用いて、「3種類のレコーディングを選択」「52種類のコマンドからのドラッグ&ドロップ」「コマンドへのパラメータの指定」という3つのステップでロボットを作成することができる。また、最新版では、新機能「AISense」により、リモートデスクトップ環境を自動化することが可能になった。

ROIについては、リアルタイム分析機能とロールベースのアクセス制御機能により、自分や自部門のロボットだけのROIを分析することができる。同社製品については、1四半期でROIの効果を実感でき、半年のコスト削減率の平均は50%だという。

ロボットの管理については、ロールベースのアクセス制御機能により、ユーザーや部門に対し「どのロボットをどう操作できるか」を設定することができるため、「野良ロボット」が発生するリスクがゼロとしている。

また、Automation Anywhere Enterpriseは、物理環境、仮想環境、デスクトップ、データセンター、クラウドなどあらゆる環境で利用できるため、小規模でスタートして、スケールアウトが可能になっている。

セキュリティについては、これまで対応していた「シングルサインオン」「管理者が削除・編集不可の監査ログ」「データ暗号化」に加え、最新版で「NTLM認証/Kerberos認証」「2要素認証」が追加され、強化された。

さらに最新版では、大規模環境向けの機能として、依存関係をチェックし、ロボットに必要なファイルを環境間でエクスポート/インポートする機能が追加された。

Automation Anywhere Enterpriseでは、「Metabot」と呼ばれる再利用可能なライブラリを提供しているほか、Metabotのギャラリー「Bot Store」も利用できる。

  • 「Bot Store」利用のメリット

秋本氏は最後に、「Automation Anywhere Enterpriseは組織向けに設計されたRPAソフトウェアであり、ユーザー部門とIT部門のRPAの満足度を両立させる」と講演を締めくくった。

  • RPA展開の典型的なプロセス