新年度が始まり子どもが進級すると、そろそろ毎月のお小遣いを始めようか?と検討する家庭も増えるだろう。お小遣い制の具体的な方法や全国平均額、親として注意すべきことについて家庭教育アドバイザーの柳川由紀先生に聞いた。

  • 子どものお小遣いは"マネー教育"になる?

お小遣いはなぜ必要? いつから必要?

柳川先生によれば、お金と上手に付き合う教育をすることは、将来、子どもの自立に大きく役立ち、ひいては生きていく力を身に付けることになるという。「単に好きなものを買うことだけでなく、いつ何に使うか? といった身の丈にあったお金の使い方がお小遣いを通して学べます」と柳川先生は説明する。

お小遣い制度をスタートする時期は、「足し算、引き算がしっかりできるようになった小学校3年生くらいから、金額は定額制で始めるのがオススメです」と柳川先生。お小遣い日の間隔は、1週間に1回、2週間に1回、1カ月に1回などで子どものタイプや使い道、使う頻度などから考えて決めると良いという。例えば、一度に全部使ってしまいそうで不安だという子どもには1週間ごと、1カ月まとめて管理したいタイプの子どもには1カ月ごとに渡す、など親子でよく話し合って決めるのがポイントだそうだ。

必要な時にお金を与える方法やお駄賃制はNG?

一方で、お金が必要な時に使い道を聞いて必要なだけお金を与える方法は、「金銭感覚を養うトレーニングになりにくい」と柳川先生は指摘する。計画を立てて管理する必要がなく、欲しいものの優先順位を考え我慢することもないので、お金に関する判断力、忍耐力が育たない傾向があるという。また、お金が必要なことが急に増えた時、「この前たくさん渡したから、今回はもういいよね?」といっても、明確な根拠がないため、子どもが納得しにくいとのこと。

それでは、家庭でお手伝いをした際にお駄賃としてお金を与える方法はどうだろうか? 柳川先生は、「お手伝いは家族の一員としての役割なので、労働としての報酬を与えることは反対」だという。お金が欲しいためにその仕事をするようになったり、相手が喜ぶ顔を見たいから手助けをする奉仕の心が育たなかったりする場合があるそうだ。もし、お手伝いをしてくれて特に助かった時は、子どもが好きなお菓子などを準備し、感謝の気持ちをお金以外の形で表すのがオススメ。

気になるお小遣いの金額について質問すると、「家計の金融行動に関する世論調査」(金融広報中央委員会2017年)の参考資料を紹介してくれた。平均値には年収によってかなり幅があることがわかる。「全国平均が○円だから、これ位が適正、とは一概にいえません」と柳川先生は強調した。

居住地や世帯年収、通っている学校などのライフスタイルによって異なるため、あくまで参考程度にし、保護者会のように親が集まる場で周りに聞いて、高すぎず低すぎずの金額を各家庭で設定できると良いそうだ。ただ、必ずしも周囲と横並びの金額にする必要はなく、「うちのルールは○○だから」と子どもにきちんと説明したうえで低く設定しても大丈夫。子どもがいるコミュニティの中で、あらかじめ情報収集して金額を検討したい。

お小遣いの日は、お金の教育で一番大事な日

時には、レシートもない、記憶もないけれど、お金の計算が合わない時もあるだろう。大人でも多少は帳尻が合わないことはあるものだから、「次回は使ったことを忘れずに合うように頑張ろう」と励ますことがポイントだと柳川先生は話す。お小遣いの範囲内での少額の失敗経験が、将来高額なお金の失敗を防ぐという。お小遣い日をお金のことで子どもを叱る日にしない方が賢明なようだ。

お小遣いを渡す際に大事なことは、「お金の流れを必ず親子で確認しあう時間をつくること」だという。子どもがいつどのようなお金の使い方をしているのかを親はチェックしアドバイスをしてあげると良いそうだ。

現金でのやり取りの重要性

親がお金を軽々しく扱ったりせず、「きちんとお金を大事に管理する姿を見せましょう」と最後に柳川先生は言い添えた。これからは本格的な電子マネー時代となり、実際のお金を目にする機会も減っていく傾向にあるだろう。だからこそ、お金の重みを実感させ、お金がどうして大切なのか、子どもに理解させることが重要になってくる。交通機関のICカードも、親が予めチャージしておくのではなく、一緒にチャージをしてお金が入っていく様子を見せたりするのもオススメだそうだ。

お小遣いは単に欲しいものを買うためのお金でなく、将来お金で困らない大人になるための練習としても大いに活用できるようだ。

※画像はイメージ

柳川由紀先生

家庭教育アドバイザー(日本家庭教育学会認定)。静岡市学校教育相談員、静岡市食育推進委員などを務め、現在は「親力アップ静岡」を主宰。発行中のメルマガ 「子どもを伸ばす 親力アップの家庭教育」は、一昨年全国メルマガ大賞教育部門第3位を受賞。
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