3月1日から4日まで、パシフィコ横浜で行われたカメラ機器の展示会「CP+2018」のマウスコンピューターのブースでは、人気写真家によるRAW現像テクニックの解説やPC選びのセミナーが開かれました。ここでは、秦達夫氏による「RAW現像テクニックを活かした作品作りのヒント」を紹介します。

  • DAIVが展示してある横のステージではRAW現像に関するセミナーが行われ、多くの参加者で賑わった

  • 初心者にもわかりやすくRAW現像を解説する写真家の秦達夫氏

より高画素、より高機能化するデジタルカメラと肥大化するファイルサイズ

冒頭で秦氏は、デジタルカメラにおけるRAWファイルのサイズが肥大化していることに触れます。例えば、オリンパスの「OM-D E-M1 Mark II」で普通に撮影した場合で17.2MB。jpeg撮って出しと比べると3倍程度となる大きなサイズです。これが高画素化と高機能化によってさらに加速しているといいます。

高画素化の例として、富士フイルムの中判ミラーレスカメラ「GFX 50S」は、大型のセンサーを搭載し、有効5,140万画素と高解像を実現していますが、1つの写真で111MBものファイルサイズとなっています。

  • 屋久島に訪れてGFX 50Sで撮影した作品。ファイルサイズが111MBもある

一方の高機能化の例として、キヤノンの「EOS 5D Mark IV」は、有効3,040万画素のセンサーを搭載していますが、撮影した写真に対して「解像感補正」「ボケシフト」「ゴースト低減」という3種類の後処理を行える「デュアルピクセルRAW(DPRAW)」を使った場合、通常のRAWファイルよりも1.3~1.5倍のサイズ感になるとのことです。

さらにパナソニックの「LUMIX G9 PRO」は、「ハイレゾモード」という特殊な撮影モードを搭載。ボディ内手振れ補正の機構を使って、センサーをシフトさせながら1つの被写体に対して、8回の連続撮影を行うことで、通常撮影時の約2033万画素に比べて4倍の画素数を持つ約8000万画素相当の高解像画像を生成可能です。この場合のファイルサイズは1枚で125MBにも上ります。

  • GFX 50S、EOS 5D Mark IV、LUMIX G9 PRO、OM-D E-M1 Mark IIで撮影したサンプルをもとにRAWファイルの大きさとメリットを説明

写真1枚当たり100MBを超えるようなファイルサイズでは、ストレージ(メモリカード)にも負担がかかりますが、秦氏によると写真家にとって「情報量が多い」「データの解像度が高い」「階調の幅が広い」ことからも大きなメリットがあり、カメラの特性をフルに引き出してくれると語ってくれました。

RAW現像をライブで実演

実際のRAW現像について、市川ソフトラボラトリーのRAW現像ソフトである「SILKYPIX 8」を使ってデモが披露されました。秦氏は「現像には作法があり、写真家によってやり方もいろいろですが……」と前置きしつつ、「僕はまず"色の方向性"を決めます」と説明。

  • 市川ソフトラボラトリーの「SILKYPIX 8」でRAW現像を解説

  • 画面右側のツールを操作し、ホワイトバランスなどを調整して色の方向性を決める

「ピクチャースタイル」や「ピクチャーコントロール」など、カメラやメーカーによって呼び方は変わりますが、色の系統を決める機能を、SILKYPIX 8のカラーモードを使って決めるとのことです。さらに、テイストパラメータやホワイトバランスも調整して、自分のイメージする色に近づけます。

続いて、トーンカーブとハイライトコントローラを使って「階調を引き出します」とのことです。トーンカーブは明るい部分も暗い部分も補正できますが、使うのにコツが必要で、まずは真ん中に点を打って調整するとよいそうです。

  • トーンカーブは真ん中に点を設定して、明部と暗部を調整するのがポイント

  • ハイライトコントローラを調整して明部の階調をていねいに引き出す

最後はコントラストと明るさを調整します。風景写真は、ややコントラストが高い方が好印象なので、硬調や超硬調といったパラメータを選択します。ただし、あまりコントラストを上げすぎると自然な感じが失われてしまうので、その辺りは気を付けたい部分だといいます。

また、普通の液晶ディスプレイだとバランスのよいポイントを探し出すのが難しいので、慣れていないうちはしっかりと色を確認できる液晶ディスプレイを使うのが望ましいとのことです。

明るさ調整は、カメラでは露出補正にあたる部分で、明暗を調整します。秦氏は明るめが好みなので、明るく補正することが多いそうです。補正をしていると、ある一定の色だけ派手になってしまう場合がありますが、その際はファインカラーコントローラ機能で特定の色を同調させると自然に見えるそうです。

  • ファインカラーコントローラで周囲から浮き上がった色をなじむように補正する

RAW現像は高性能、そして高品質なPCで

RAW現像はデータサイズが大きいため、処理に負荷がかかり、高性能なPCが必要になります。DAIVシリーズは高いスペックと高品質の液晶パネルを搭載し、画像編集でもしっかりと作業できる点がオススメとのことです。

  • RAW現像はデータが大きい、ソフトが重い、といったことからハイスペックなPCが必要になることを説明

セミナー後、秦氏にもう少し詳しい話を聞くことができました。

ノートPCは一般的に非力というイメージがありますが

「写真は気持ちが反映されてしまうので気分が大事です。例えばカフェや落ち着く場所など、自分の気持ちがよくなる環境で作業するのがベストです」とのことで、まずはノートPCを進めているそうです。

また「一般的にノートPCは非力というイメージがありますが、DAIVシリーズでは高性能なCPUやグラフィックスを搭載しているので、快適に作業できます。さらに液晶の品質も高い点も重要です」と秦氏。実際に秦氏も17.3型4Kディスプレイを搭載した「DAIV-NG7500」シリーズを実際に使っているとのことです。

  • 自分の目的に合わせて豊富なラインナップから選べるDAIVシリーズ。秦氏はその中でもノートタイプをオススメしていた

また、気持ちを盛り上げるという面では「カメラや自動車、バイクなどと同じで、レスポンスよく自分の操作に応えてくれるようなレスポンスのよさもとても大事」(秦氏)で、その点、DAIVシリーズは高性能なので重たい作業のRAW現像でもストレスなく操作できるので、作業に没頭できると語ってくれました。