箱根登山鉄道は春分の日の3月21日、入生田車庫内で「懐かしのカラーリングがよみがえる ~2000形 復刻塗装 記念イベント~」を開催した。当日は雨の降るあいにくの天気だったが、多くのファンらが集まった。

  • 箱根登山鉄道2000形「サン・モリッツ号」1編成が運行開始当時の姿に

会場への最寄り駅は、小田急電鉄の特急ロマンスカーも乗り入れる比較的平坦な区間(小田原~箱根湯本間)にある入生田駅。小さな駅ゆえ、ロマンスカーで通過するだけの人にとっては「一旦停止する駅」くらいにしか思われていないかもしれない。

入生田駅には箱根登山鉄道の車庫があり、点検や整備が行われる。もともと小田急電鉄と箱根登山鉄道は軌間が異なるため、現在は入生田駅から箱根湯本駅まで三線軌条が引かれている。小田原~箱根湯本間は箱根登山鉄道の区間ながら小田急電鉄の車両による直通運転が行われ、箱根登山鉄道の電車による営業運転は行われない。しかし三線軌条の区間では、入出庫のために登山電車が走ることがある。

「サン・モリッツ号」復刻塗装はHiSEと同様の配色

今回のイベントのメインは、もちろんデビュー当時の姿に復刻した2000形「サン・モリッツ号」(2両編成)の初公開。「サン・モリッツ」とは、箱根登山鉄道と姉妹鉄道提携を結んだスイスのレーティッシュ鉄道の沿線にある観光地のことである。復刻塗装となった編成はこれまで、レーティッシュ鉄道の車両と同じ塗装デザイン、あるいは新型車両3000形「アレグラ号」と同じデザインになるなどしていた。

  • 「サン・モリッツ号」のヘッドマークを掲げ、「強羅」と行先が表示された2000形

  • 2000形の車内

  • 車内の案内表示器は液晶画面に

  • 復刻塗装車両は1989年川崎重工製

  • レーティッシュ鉄道との友好の証

  • 2両編成だが普段は通路を通ることはできない

  • 今回のイベントでは、特別に通路を渡ることができた

今回復刻したデザインは、かつての小田急ロマンスカー・10000形(HiSE)と同様の配色である。新型特急ロマンスカー・GSE(70000形)がデビューし、多くの人々の注目を集める中、すでに小田急電鉄から引退しているHiSEの塗色に戻したことは興味深い。

イベントでは「サン・モリッツ号」復刻塗装の2000形を公開するだけでなく、洗車機乗車体験や普段通り抜けられない連結器部分を渡る体験も行われた。筆者も参加してみた。車庫から洗車機に入る際、水が大量に車体に吹きつけられ、回転ブラシで車体が磨かれる。磨かれた車体からは水滴が滴り、車内からも窓のしずくが見える。

再び洗車機に入る際、こんどは運転台の後ろに立って様子を見た。回転ブラシが強く列車を巻き込むかのように動き、列車自体がさっぱりしたような印象を受けた。

  • 洗車機乗車体験も行われ、2000形が洗車機の中を通った

幌のない連結器部分は緊急時に利用するためのものであり、普段は使用できない。参加者はそこを通り、車両と車両の間を移動する。

2000形には「サン・モリッツ号」のヘッドマークが取り付けられた。青く大きなヘッドマークは、きれいな赤い車体の良いアクセントになっている。工場の外に出し、車庫内で撮影用に展示する場面もあり、雨の中、多くのファンが傘をさしつつ撮影を行った。

この日のイベントでは、その他にも100形車両の展示や車両屋根上・床下の見学、車両移動機(アント)による列車牽引の見学会などが行われた。見学会だけでなく、「2000形復刻塗装記念乗車券」や箱根登山鉄道オリジナルグッズなどの販売も行われた。

  • 会場の入生田車庫に100形を展示

  • 箱根登山鉄道敷設当時のレールも

  • 入生田車庫の内部の様子

  • あいにくの雨模様だったが参加者は多く、車両や車庫内の様子を写真に収めていた

空模様は悪く、青空の下で鮮やかな復刻塗装を撮影できなかったことは参加者にとって残念だったのではないかと思われるが、それでも箱根登山鉄道という個性豊かな鉄道を知るには良いイベントだったと感じた。なお、この日は悪天候の影響などにより、時間を短縮しての開催だったとのこと。