「サイレント・ベビー」という言葉を知っていますか? 表情が乏しく、言葉が出にくい赤ちゃんのことを指して使われているようです。テレビや新聞、インターネットなどで目にすることが多くなったこの言葉、マイナビニュースで子どもの病気の疑問に答えてくださっている小児科医の竹中美恵子先生に、見解を聞きました。

  • 「サイレント・ベビー」という言葉、小児科医はどう考える?(画像はイメージ)

Q.「サイレント・ベビー」とは、一体何ですか?

「サイレント・ベビー」は医学用語ではなく俗称なので、医療の世界で耳にすることはありません。私自身にとっては、正直に言ってあまりなじみがない言葉でした。

一般的には表情が乏しく、言葉が出にくい大人しい赤ちゃんのことを指すようです。生活の変化によって子育ての風習も変わり、インターネットなどの普及により広まった用語だと思います。

Q.「サイレント・ベビー」の特徴とされているような、無表情であまり泣かず笑わない赤ちゃんについては、どう思われますか?

医学的には知的な発達の遅れや自閉症スペクトラム障害がある可能性も否定はできないと思いますが、小さいうちは判断が難しいです。

「サイレント・ベビー」の要因として、泣いても相手にしてもらえないことが何度も続くと、赤ちゃんが諦めて泣かないようになるという説もあるようですが、赤ちゃんが空気を読んで泣かなくなるようなことは考えにくいと思います。

Q.「ママが授乳中にスマホやテレビばかり見ていると、サイレント・ベビーになる」などの情報がインターネット上には多くありますが、どのように思われますか?

日本小児科医会は、「スマホに子守をさせないで」というスローガンを掲げています。授乳中はテレビなどの使用を避け、赤ちゃんと目を合わせることの重要性を訴えているのです。

子どもへの影響が懸念されているという事実はあるので、授乳中のスマホやテレビはできるだけ控えた方がいいとは思います。ですが、そのせいで「サイレント・ベビー」になるかというと、そういった短絡的な因果関係を見出すのは難しいでしょう。授乳中にスマホやテレビを見て育った子どもがどのように成長するのかについては、まだはっきりと分かっていないからです。

Q.スマホやテレビを使うことが、すべて悪い影響を生むというわけではないということですか?

「スマホやテレビは子どもに悪影響を与える」という単純な話ではないと思います。むしろ、コンテンツの選び方によっては、子育てに有意義なものもあるでしょう。例えば教育番組など、内容を選んで活用する分には、選択肢の一つにしてもいいと私は考えています。重要なのは何を見せるか、何を親が見ているかです。

ただ、必ず注意してもらいたいのは時間を守ること。時間を守るのが難しければ、番組が終わるまでなど、家庭でのルールを決めましょう。そうすることで、子どもが約束を守ることを学んだり、集中力を高めたりすることができるでしょう。見せっぱなしにはせず、親がしっかりと管理するようにはしてください。

Q.これまで診察されてきて、いわゆる「サイレント・ベビー」と言われるような、表情が乏しく、言葉が出にくい赤ちゃん、もしくは子どもに出会ったことはありますか?

実際にそのような子たちを診察したことはありますが、家でほとんど面倒を見てもらえていないケースが多かったです。子どもがおびえていたり、親に抱っこされると嫌がっていたりして、背景事情が深刻な例ばかりでした。

普通にスマホやテレビを見るくらいでは、いわゆる「サイレント・ベビー」と言われているような状態にはなりにくいと考えます。1回泣いたのを放っておいたから、なってしまうというようなことはないでしょう。

Q.「サイレント・ベビー」にならないようにしなくてはと、育児に奮闘するママたちも多いと思いますが、診察中にはどのような言葉をかけていらっしゃいますか?

診察で訪れるお母さんたちには「抱え込みすぎないで」と伝えています。産後4~6カ月は一番産後うつになりやすいと言われています。そういうときは自分を追い込みやすく、なかには診察室に入るなり、泣き出してしまうお母さんもいるんです。

最近、「自閉症ではないか、発達障害ではないか」と過剰に心配になったり、不安になったりされるお母さんたちが増えているように思います。ちょっと子どもが泣かないから「サイレント・ベビーかもしれない」と心配しすぎるのではなく、"気にしすぎないで"と伝えたいです。そして少しでも不安に感じたら、健診のときに尋ねたり、かかりつけの医師に相談したりしてくださいね。

竹中美恵子先生

小児科医、小児慢性特定疾患指定医、難病指定医。
アナウンサーになりたいと将来の夢を描いていた矢先に、小児科医であった最愛の祖父を亡くし、医師を志す。2009年、金沢医科大学医学部医学科を卒業。広島市立広島市民病院小児科などで勤務した後、自らの子育て経験を生かし、「女医によるファミリークリニック」(広島市南区)を開業。産後の女医のみの、タイムシェアワーキングで運営する先進的な取り組みで注目を集める。
日本小児科学会、日本周産期新生児医学会、日本小児神経学会、日本小児リウマチ学会所属。日本周産期新生児医学会認定 新生児蘇生法専門コース認定取得
メディア出演多数。2014年日本助産師学会中国四国支部で特別講演の座長を務める。150人以上の女性医師(医科・歯科)が参加する「En女医会」に所属。ボランティア活動を通じて、女性として医師としての社会貢献を行っている。