「リテールテックJAPAN 2018」レポート

東京ビッグサイトでは3月6日から9日の間、流通・小売業界向けのソリューションが展示会「リテールテックJAPAN 2018」が開催された。同展では200社以上が、AIやIoTなどの技術を駆使したサービスを紹介。4日間合計で11万9928人が来場したという。

本稿では、多くの人でにぎわいを見せていた富士通のブースにフォーカスして、展示していたサービスを紹介する。

目は口ほどにものを言う! AIによる視線検知システム

富士通のブースはいくつかのテーマごとにエリアが分かれており、「幸せプロデュースのプロになる」というテーマでは、購買履歴や会員情報、買い回り動線、嗜好性、体型といったさまざまなデータによる顧客のカルテをもとに、購買体験をプロデュースするソリューションが展示されていた。

アパレル店舗をイメージした展示スペースでは、来場者の"視線"から関心の高いアイテムを導き出すというデモを実施。男女それぞれの衣類でコーディネートされたマネキンの間にカメラが設置されており、所定の位置に立つと、上に搭載された小さなカメラで顔を認証し、下の大きなカメラで視線を検出する。富士通研究所が開発した「視線の時系列データから関心や迷いを推定するAI技術」によって、来場者の関心が高いアイテムを推定するのだという。実際に10秒間洋服を眺めていると、見ていたアイテムの詳細情報をAIが提示してくれた。

  • 視線検知の展示ブース。マネキンの間にあるのがカメラ

    視線検知の展示ブース。マネキンの間にあるのがカメラだ

  • 視線検知の結果が表示される

    視線検知の結果が表示される

タブレットに送らる結果画面

タブレットに送られる結果画面

視線情報から推定されたデータは、マネキン横に投影されるとともに、店舗スタッフ用のタブレット端末にも送られる。しかも、関心の高かったアイテムだけでなく、迷っていたほかの商品も提示。接客のアドバイス情報も表示されるので、業務経験の少ないスタッフでも細やかな接客ができるのではないだろうか。

また、顔認証では性別の判断も行うので、男性が女性のアイテムを見ている場合は、プレゼント用アイテムの提案などもできるという。離れた場所から来店者の好みを把握できるので、店員に話しかけられることなく自由に商品を見て回りたいタイプの人でもショッピングを楽しめそうだ。

デモでは視線検知時間は10秒間だったが、青山商事で2018年4月6日から4月27日まで実施する実証実験では3秒ほどに設定する予定だという。

AIやIoTを活用したスマートで新しい購買体験

店員のタブレットには、「AIコーディネータ(仮称)」というシステムを搭載することも可能だ。同システムは、検出した視線情報をもとに、AIがオススメのコーディネートを紹介してくれるというもの。来場者はコーディネートを見ながら、「もう少しカジュアルなほうがいい」「ゆるふわ系にしたい」といった注文を付け加えることで、希望するテイストの洋服を探すことができる。

  • AIコーディネーターの画面。左上のサーチ部分を調整すると表示されるコーディネートも変化する

    AIコーディネーターの画面。左上のサーチ部分を調整すると表示されるコーディネートも変化する

購入するアイテムが決まれば、次はサイズの測定だ。同社の「IoTメジャー」を使えば、タブレット上のPFU社の帳票ソフト「BIP Smart」へ測定したサイズ情報を自動で送信することができる。手動による数値入力が不要なうえに、データを保存しておくことも可能なので、顧客情報として活用することもできるだろう。

  • IoTメジャーと帳票ソフト画面
  • IoTメジャーと帳票ソフト画面
  • IoTメジャーと帳票ソフト画面

外国人来店客への対応は中国語と英語に対応している「ハンズフリー多言語音声翻訳」を使うと便利。展示会は比較的騒がしかったが、「おはようございます」と話しかけると、きちんと音声を認識して「Good morning」と翻訳してくれた。サイズも小型で軽量なので、接客中でもあまり邪魔に感じなさそうだ。

  • ハンズフリー多言語音声翻訳の端末

    ハンズフリー多言語音声翻訳の端末

さらに百貨店などでは、この顧客カルテの属性情報を活用して、コンサートやアクティビティ、ディナーといったパーソナルなプランを一元的に提案することも可能だ。